Your Voice #final 「???」
「——私、「アイドル」になりたい。」
「ア、アイドル?」
「うん。今日の文化祭の合唱で分かったんだ。私、やっぱり自分の歌声を人に聴かせて「感動」して欲しいな、「笑顔になってほしい」なって、そう感じた。ちなみに実は私の将来の夢でもあったんだよ〜?」
「そ、そうなの!?」
小森は僕が驚くのを分かっていたかのように「ふふっ♪」と微笑み、さっきの言葉の続きを話す。
「この学校の文化祭、生徒以外でも参加できるって知ってる?」
「あ、ああ。」
そう、僕たちの高校は一般の人でも参加できるようになっている。
そして、小森は僕の返答に続けて衝撃的な言葉を口にする。
「実はさ、「アイドルのスカウトの人」が来てたんだ。」
「えっ…?」
僕は衝撃で驚き、言葉が漏れる。
だが、小森の言う衝撃的な言葉はこれだけでは終わらなかった。
「それでね、アイドル活動のために「転校」しなきゃいけなくなっちゃったんだ。」
なんで、神様はこんなにも意地悪なのだろう。なんで運命は、僕から大切な人を奪っていくのだろう。
考えても答えは出ない。そのはずなのに。
この込み上げてくる心の苦しみは…、何なのだろう。
「あ!ごめん、文化祭の後片付けしなきゃ!また改めて話すね!」
小森はそう言い、僕を中庭に残して教室へ向かって歩き出す。
僕の目に映る、小森の姿がどんどん小さくなっていく。
いつの間にか、僕の目からは涙が零れていた。
(今、「言わなきゃ」、もう2度と言えない気がする…。)
そして僕は、こう小森に向かって叫んだ。
「待ってくれ!小森!少しだけ話させてくれ!」
「…どうしたの?」
小森はそう言いながらもう一度僕のもとへやってくる。
どうしてなのかわからない。
〈君が僕のもとから離れていってしまう〉から?
〈君を僕だけのモノにしたい〉から?
いや違う。この「想いの正体」は、もっと、言葉に言い表せないくらいの想いだ。
だから、これだけは伝えたい。君に。
「君の声を、僕はずっと君の一番傍(特等席)で聴いていたい」
それは、好きという感情だけでは言い表せない想いへ、僕が引き出せる最大限の告白だった。
そして、続けて僕はこう言う。
「君の歌声を世界中のみんなに聴いてもらいたい。そのために勉強も頑張る。だからさ、もしいつか、君が立派なアイドルになって、僕も君に遜色ないくらいの人になれたら、君の「プロデューサー」になっても、いいかな。」
そう、君の彼氏じゃなくても、君の傍にいることはできる。
そして僕は君のことが好き、だけど…それ以上に。
〈君の声が「好き」だ。〉
僕は、君の声を…君の歌声をもっといろんな人に響かしたい、それが。
僕の本当の「想い」だ。
すると、小森は僕の言葉に対してこう言った。
「わかった、約束ね——」
——5年後。
仕事の帰りに、僕は本屋に寄る。
僕の名前は桜田颯人。22歳。
仕事は、とある人の「プロデュース」を手掛けている。
そう。それは、
「おっ、ここにも君の雑誌売ってるんだ——。」
——〈世界にその君の美しい声色を響かせろ!〜〜〜所属 「小森奏花」〉
これは運命が紡いだ、とある「二人」の物語だ。
#final 「君の一番の特等席」
[to be continued?]




