プロローグ 終わりから始まり
ダムッ、ダムッ。
体育館からだろうか、バスケのドリブル音が聞こえてくる。
「おい、凛。帰ろうぜ。
俺らは運動部とは無縁な人間だろ?」
「あぁ、そうだな」
俺たちは並んで校門を出て、それぞれの帰路へと向かい始めた。
「なぁ、凛。次の更新で新キャラ出るらしいぜ」
「ガチ? まじかよ。ちゃんとやんねーとな」
俺たちが最近ハマっているのは、
レインというバトルシューティングゲームだ。
リアルな動きと戦略性が売りだが、まだそこまで有名ではない。
それでも、俺たちの間では妙に盛り上がっていた。
「じゃ、俺こっちだから。また一緒にやろうな」
「あぁ。また明日な」
手を振り、友達が去っていくのを見送る。
唯一の友達であり、俺の良き理解者でもある。
……最近、この生活に少し飽きてきていた。
家ではゴロゴロしてゲームばかり。
学校でも、話題は結局ゲームのことだけ。
中学時代はそれなりに勉強して、有名高校にも入れた。
それなのに、気が緩んだ結果がこの自堕落な日常だ。
部活に入るのも、正直めんどくさい。
でも――
なにか、
俺の心を満たしてくれる出来事は起きないのだろうか。
そのときだった。
「……ん?」
自宅の近くに、人だかりができている。
記者のような人間が何人も集まっていた。
事件か?
嫌な予感が、背中を這い上がる。
「……ッ」
あそこは……俺の家だ。
やめてくれ。
頼むから、何も起こっていないでくれ。
「あの!! 何かあったんですか?」
声をかけた瞬間、
記者たちの視線が一斉に俺へ向けられた。
「あなたは、斎藤凛さんですか?」
「え? そうですけど……家族に何かあったんですか?」
玄関の扉は開いていた。
中を覗くと、家族全員がそこにいた。
……よかった。
全員、生きている。
だが、不思議なことに――
全員、泣いていた。
「……なんでだ?」
「斎藤凛。あなたに、殺人の容疑がかけられています」
「……は?」
何を言われたのか、理解が追いつかなかった。
殺人?
誰が?
誰を?
――俺が?
「そんな……やってない!! 俺は無実だ!!」
「それは警察署で聞く」
「待ってくれ! 俺が人殺しなわけ――」
母さん。父さん。
何か言ってくれ。
否定してくれ。
だが、誰も声を上げなかった。
「嫌だ……嫌だ、嫌だ……!」
俺は複数の腕に取り押さえられ、
抵抗する間もなくパトカーへ押し込まれる。
「やってない!! やめてください!!」
口を塞がれ、これ以上喋れないようにされる。
「言い訳は警察署で聞く。それまで黙ってろ」
なんで俺が――。
不意に、前方を見る。
反対車線から、
こちらに向かってくる一台の車。
……まずい。
そう思った瞬間。
轟音。
――斎藤凛、以下警察官二名、死亡。
斎藤凛の、
十七年にわたる人生は、そこで幕を閉じた。




