少し辛い料理が好きなようですね
陽の光が視界を照らす。ゆっくり瞼をあげると、微笑んだリリィがカーテンを開けていた。
「おはようございます。ゆっくり眠れたみたいですね」
「お、はよ、ご、ます。」
声がまだ上手く出せない。どれだけ私は声を出さない生活を送っていたのだろう。
リリィは気にするそぶりもなく、笑顔のまま
「朝食の準備ができていますので、お仕度いたしましょう。」
パジャマから部屋着用のワンピースへ着替え
リリィは鼻歌を歌いながら髪を後ろで1つの三つ編みにしてくれた。
ー綺麗な髪。陽に照らされてキラキラ光ってみえる。
リリィは心が優しい人なのだろう。
私も嬉しくなって微笑んだ。
リリィは少し驚いて、楽しそうにしてくれた!と喜んで鼻歌を歌い始めた。
朝食会場へリリィと手を繋いで歩いていると
ーえ?ええ?え?どういうこと?
手から伝わる戸惑った声が聞こえた。
見上げると、リリィは廊下に設置されている大きな花瓶を見ていた。
そして私達が歩いてきた方へ振りかえる。
私が足を止め首を傾げると、リリィが困惑したように
「お花が、咲いています。」
?
更に首を傾げていると前からフィリアの声がした。
「おはようございます。よく眠れましたか?」
目の前までくると優しく微笑まれ、屈んで目線を合わせてくれた。
こくりと頷くと満足そうにフィリアは立ち上がった。
「それで、リリィは何を驚いてー」
何を驚いているの?と聞こうとする前にフィリアは私達の来た廊下に視線を移し驚いていた。
リリィは興奮したように
「気づかれましたか?!花が咲いています!」
私だけが理解できずに首を傾げていると、リリィが屈んで
「お家のお花は1週間に1度変えているのですが、今日が変える1週間目なのです。
ですが、見てください。
私達が来た廊下の花瓶の花は、もう変えたかのようにキラキラ咲いています。」
確かに、振り返れば等間隔に設置された花瓶の花は咲いたばかりのように大きく花びらを広げている。
「1週間なので、もちろん枯れはしませんが、さすがに少し萎れているものです。」
今から歩く廊下の花を見ると確かに花の咲く具合が違った。
下を向いてしまっている花もある。
「もしかしたら、本当に。」
フィリアは私に視線を戻すと少し考え込むような仕草をした。
が、直ぐに切り替えて
「朝から素敵なことが起こりましたね。さて朝食をとりましょう。」
リリィは嬉しそうに笑うと私の手をひいた。
朝食会場では、昨日とは違う料理が運ばれているものの
またどれも見たことがない料理、食材ばかりで困惑した。
最初に出てきたコーンスープをまたひたすら飲んでいると、
フィリアは私に
「何か嫌いなものでもありましたか?」
優しく訪ねてくれた。が首を横に振るしかできない。
リリィは困った顔と不安そうな顔でこちらを見ている。
ベラはフィリアが食べるものが決まってるのか、淡々と取り分けていた。
するとフィリアがリリィに
「リリィ、一口サイズで全ての種類をお皿に取ってください。」
「え、あ、はい!」
困惑しているリリィは言われた通り一口サイズに切って全ての料理を私の前に運んだ。
すると、フィリアが
「では、一番右の青い魚介の料理の説明をします。これはー」
そうしてフィリアは順番に、どこから取れていて、
どんな味のものなのか、辛いのかしょっぱいのか、
細かく説明してくれ、最後に必ず
「では一口かじってみてください。少しでも美味しくないと感じたら吐き出してくださいね。」
と促される。
えい!と食べてみると、どれもとても美味しかった。
美味しい!というのが表情に出ているのか、フィリアもリリィも嬉しそうな顔をする。
どれも何だか食べたことある味がする。
見た目で判断せず食べてみてよかった。
全て一口ずつ食べ終わると、リリィは
「おかわりの料理はありますか?」
と聞いてくれ、その中でも美味しかったものを私は指さした。
「少し辛い料理が好きなようですね。」
フィリアが微笑みながらそう教えてくれた。
美味しい。昨日からお腹ペコペコだったのが、満たされた朝食だった。




