わ、わたしは、だれ?
食事場所に連れられて、部屋の真ん中には長方形のテーブルにシャンデリア
絨毯の模様は落ち着いたシックな色合い、ここは本当にお城の中だな。
キョロキョロとあたりを見渡していると、リリィに椅子へ促された。
「どうぞ」
にこりと笑うリリィにお辞儀をして、椅子に座ると
数々の料理が運ばれてきた。が
ーどれも見たことない?!何料理なの?
エビなのか?貝なのか?そもそも魚介なのか?
と疑うエビのような尻尾が3つ生えた鯛のような、でも緑色の魚。
リンゴか?これはフルーツなのか?
フルーツ盛り合わせのように綺麗な色の丸い球体が飾られているが、
色が緑や黄や紫とカラフルすぎて味の想像がつかない。
目の前に出されたスープから嗅いだことのあるコーンスープの匂いがした。
私は手を合わせて目を閉じ
ーいただきます
と心の中で唱えて、スープを口に運んだ。
「何を召し上がりますか?」
中央に並べられた料理をリリィが取ってくれるらしい。
なるほど、ここでは自分の食べたい物をメイドに取ってもらうのが常識なのか。
だが、私は味の想像がつかなくて、首を横に振った。
リリィはびっくりして、ひたすらスープを飲む私を不安そうに見ていた。
コーンスープはコーンスープだ!知っている味で良かった。
スープが無くなりそうなタイミングでリリィが
「スープおかわりされますか?」
と微笑んでくれた。
正直お腹ペコペコだ。こくりと頷くと、
飲み終わったタイミングで直ぐに新しいコーンスープをくれた。
結局コーンスープを4杯も平らげて、お腹ちゃぷちゃぷだ。
また手を合わせ
ーごちそうさまでした。
目を開けてリリィを見ると、少し驚いていたが笑顔に戻り
「フィリア様がお呼びですのでご案内します。」
と手を引いてくれた。
ースープしか飲まないなんて。好き嫌いが多いのかな?でも、体には悪いよね。
明日は今日にない食事を作って、食べられる食事を探さなくちゃ
ごめんなさい。リリィさん。
明日は食べられるかな。と不安を抱えつつ、フィリアの部屋へ通された。
「失礼します。」
リリィの声に
「どうぞ」
とフィリアの声がかえってきた。
部屋を開けるとフィリアとティアの他に知らない眼鏡のきりっとした男性がいた。
私は離れようとするリリィの手を強く握った。
その様子にリリィも他の3人も驚いた様子をみせていたが
フィリアは直ぐに微笑んで
「リリィ、一緒にいてくれないか。」
「はい。もちろんです。」
ー不安だよね。
優しいリリィの声が頭に響く。
ソファに座るよう促されたが、動かないでいると
リリィが笑顔で
「よいしょ」
と私を膝の上に乗せて後ろから抱きかかえてくれた。
目の前に座っていた眼鏡の男性が
「こんばんは、僕はエドワード、フィリア団長の部下で友人だ。エドと呼んでくれ。」
その横にいたティアも笑顔を向けてくれた
「俺も紹介まだだったな、俺も団長の部下で友人のアレティア、皆からはティアて呼ばれてる」
こくりと頷くと一人掛けソファに座っていたフィリアは私の斜め前まで来ると
膝をついて目線を合わせてくれた。
何度見ても綺麗な藍色の瞳。
「私の友人2人は信用できます。何か困りごとがあれば頼ってください。
今日は夜遅いので、お部屋を用意しました。そちらでお休みください。」
こくりと頷く
どうしよう。こんなに良くしてもらっているのに、私は何も話せていない。
少し怖いのだ。
訳も分からない世界で、私は赤子の時の記憶だけではない、昨日までの記憶が無い。
そして、皆の言葉が分かるということは、
きっと私も思った事を言葉にすれば、伝わる言語ということだ。
でも、パンが言っていた。
珍しい髪と瞳の色。奴隷買収場から逃げてきたのか、赤い瞳なんて見たことも聞いたこともない。
どこかの呪いの子なのか、貴族様は珍しいものを奴隷にするのがブームだって、この間聞いたと。
髪を結ばれている間ずっとパンは言っていた。
この城は明らかに本で見る貴族のようなお城だ。
団長てことは貴族様に逃げられた私を探せと命じられていたら。
どうしよう。
ぎゅっとリリィが私の手を握った。
ー怖がらなくて大丈夫。この方は芯が強く、正しい人。必ずこの子を助けてくれる。
そうだ、馬のペリも伝えてくれた。この人は大丈夫。信用できる。
私は思わず手をフィリアに伸ばした。
フィリアはじっと私の手を待った。
頬に触れそうになった時。フィリアからピタリと手に添えてくれた。
ー怖い目に合ってきたのでしょう。必ず。私がお守りします。
聞こえてきたのは温かな言葉だけだった。
「わ、わかーいの」
何日ぶりにだしたのか、声が思うように出なかった。
もう一度声を出す。が、かすれる。
フィリアは頬に当てていた手に自分の手を重ねた。
「ゆっくり、ゆっくり。聞いています。」
「わ、わから、ない、の。」
気付いたら頬に涙が伝っていた。
助けて。分からないの。私は誰で、ここはどこなの。
「きおくが、ない、の、なに、も、おぼえて、ない」
フィリアは私の涙を優しく拭ってくれた。
「わ、わたしは、だれ?」




