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フィシオロゴス国


「抱き上げてもかまいませんか?」


フィリアは私の手を握ると優しく問いかけてくる。


ーこくり


頷くと、軽々しく私は腕の中に納まった。片腕に私を乗せ腰に手を添えている。

端整な顔がグッと近い。


本当に綺麗な顔に瞳。

頬けていると、川の音が聞こえてきた。

木々の中を歩くフィリアは、遠くに見える同じ服を着た集団に声をかけた


「ティア!」


名前を呼ばれた黒髪の男性が足早にきた。

かけている間に私の存在に驚きを一瞬みせたが直ぐに真顔に戻る。


「はい。」


「すまないが、先に皆を帰してくれないか。私は少し遅らせて帰る」


一瞬私を横目に捉え状況を把握したように


「承知しました。」


そう答えると、また足早にかけて戻り、木の下や川近くで腰を掛けていた人々に向かって声をかけ

数秒もすると皆馬に乗り去っていった。


「川で少し汚れを落としましょう」


そうフィリアは声をかけてくれ、川の近くの大きな岩に自分のハンカチを敷き私を座らせた。

鞄の中から巾着を出し、清潔そうな布に川の水を湿らせて、私の顔や首、腕、足を優しく拭いてくれた。

傷になっているところが沁みて顔を歪ませると


「すみません。ここ痛みますか?」


と再度傷のところを指す、こくりと頷くと巾着の中から緑のクリームを取り出し傷に塗られた。


「これは化膿止めと消毒効果のあるクリームです。家に着くまでの応急手当ですので、少し我慢してください。」


塗られたところが少しヒリヒリしたけど、こくりと頷いてされるがままお願いした。

拭き終わると、私は自分が裸足だったことに今さら気が付いた。

足裏もひどく傷があったのか、全体的にクリームを塗られ、その間ヒリヒリ、ズキズキと痛みが走った。


ーこの足枷はなに?


足を拭いてくれているときに自分の右足首に石か鉄のような枷がついていた、途中で鎖が切れている。

私は、どこかに拘束されていたの?

どこに?なぜ?

もし、その拘束されていたところが、フィリアの国の人だったら、それはまずいのでは。


「応急手当は終わりました。馬で今から帰りますので、抱き上げてもいいですか?」


その言葉に私は硬直した。

いいのか?でも、こんなに優しくしてくれて、

皆を先に帰したのも集団に私が怯えると思ったからでは?

もし逃げた集団が先ほどの集団だったら先に帰す理由はないよね。


じっと見つめる私にフィリアは首を傾げて困りながら微笑む


「大丈夫です。危害は加えません。絶対に。」


フィリアは私の足元に視線をずらす。

私の足がぶらぶらしていて、地面から木々の根が少し出てきていた。

それはまるで、先ほど私を守ってくれた木の根のように、警戒している私の心を現しているようだった。


ー信じてみよう。1人では結局この森では野垂れ死んでしまう。


こくりと頷くと木の根は地面に帰り、フィリアは私を優しく抱き上げた。

片腕に私を抱きながら馬に飛び乗る素早さはビックリしたし常人ではない筋力なのだと感じた。

フィリアは自分の前に私を座らせると、上着を脱ぎ私を包み込んだ


ー温かい。


フィリアは片手で私を支えながら馬を走らせた。


先ほどまで陽が出ていたのに、青い空は茜色に変わり始めていた。

木々の景色から少しずつ補正された道になっていく。土から石、レンガの道になっていくころには、

同じようにレンガで作られた家々が見え始めて、街に着いたのだと思った。


ー記憶が無い。本当に見覚えすらない、もちろん前世で絵本や小説の中でなら見たことがあるような街。

馬車や馬に乗って移動する人、服装。どれも見覚えがない。


城のような大きな建物に着く。いや、これは城だ。何階あるのだろう。

それにしては、小さな馬1頭分しかない門をくぐると、その先には先ほどの黒髪のティアが立っていた。


「おかえりなさい」


ティアがフィリアに声をかけると少し笑って


「こちらから入ると見越したか」


ティアも笑って頷く。

馬を止め、私を抱き上げるとサッと降りる。

馬に向かって額を撫でるフィリアは


「夜道にありがとう」


と優しく声をかけていた。

その様子に馬を見たとき目が合った気がして、私もそっと馬に手を伸ばした。

すると馬の方から頬を手に寄せてくれた。


ーー大丈夫よ。この人は信用できる人。決して悪いことはしない。信じて。


ーえ?


馬に触れていると頭に流れ込んでくる、優しくも凛々しい声が響いた。


ーー貴方は私の声が聞こえるのね、私も貴方の声が聞こえるは


ーえ、じゃは今話しているのは馬の貴方?


ーーそうよ。私はペリよ。きっと貴方は神様に愛されたのね。大丈夫。怖がらないで。


「ペリから触らせるなんて珍しいな」


ティアは感心したように声をかける。

フィリアも驚いている様子で、「ああ」と返答していた。


ーありがとう。乗せてくれて。


お礼を伝えると、ブルルと声を出した。


「部屋に用意はしてあるぜ」


そう伝えるとティアはペリの手綱を取ってその場を後にした。


「今日は裏口から入ります。家に人が少し居ますが、皆良い人なので安心してください」


そう抱きかかえられたまま微笑まれ、こくりと頷いた。

ピリが教えてくれた、この人は大丈夫を信じてみよう。

でも、なぜ声が聞こえたの?動物と私話せるの?この世界の人たちは動物と会話ができるの?


運ばれながらも、頭の整理が追い付かなかった。





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