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平凡だった私が生まれ変わったら森の神様に好かれ龍人に愛される物語  作者: 茜雫桂香


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19/23

経緯

 部屋に戻ると、ソファに座り何枚かの書類に視線を落としていたエドの姿もあった。私の姿に眼鏡の奥の瞳が驚きで見開き彼は手招きをする。


「今から俺とティアで魔力を分けるから受け取れ」


「…いや、眠れば回復するから」


 腕を組んだエドが大きなため息をもらし、グイと強く肩をティアに掴まれ引かれる。


「駄目だ!!受け取れ!お前、魔力暴走しただろ!さっきも闇魔法の浄化に結構な量の魔力使って!」


 事実、ニアの居場所が分かり、乗り込んだ際、怒りに我を失いかけ暴走したのは認めざるおえない。


「…すまない」


 私をフォローし気遣ってくれる友に感謝し甘んじて叱咤も受け入れようと静かにする。


「はぁ、そうだぞ、それにニアを探す為に日々勤務と並行して魔力捜査で消費していたのに加え、お前あまり眠れていなかっただろう。元々危なかったんだからな」


 エドは私に掌を向けながら呆れたように言う。


「アイリも相当驚いてたしな、お前の血相な顔と魔力の消費量に」


 ティアも私に掌を向ける。その声は少し怒っているようだ。今思い返せば、周りが見えず声を荒げて強引に治療をお願いしていたこと、そしてアイリは困惑している表情を向けながらも何も言わず協力してくれたことを思い返す。


「…ありがとう」


 私の返事を聞いて、冷静になった事を確認した二人は詠唱し光が私を包み込む。今思えば呼吸するのが辛かったのか、深く息を吸い大きく吐けて全身にしっかり酸素が巡る感覚になる。体が疲れていたんだと実感させられた。


「さて、ここからは後始末と整理だな」


 エドは眼鏡を持ち上げると、黒い本を持ってきた。今までのニアの捜査情報と、今回のパルフィについてのまとめだ。



 ー二十五日前、夜ニアの気配が屋敷から消えた感覚に目が覚めた。

 微かに香るニアの気配を辿ると厨房にたどり着いた。そこにはニアが使っていたマグカップが転がっており、ホットミルクにはちみつ…そして微かな薬品の香がした。

 急いで屋敷に住み込みの使用人を起こしニアの捜索を開始した。

 その時、パンの姿がないことに気づき屋敷を出た。

 夜風に乗って微かに香るニアの香りを辿ってペリに乗り捜索したが途中で香りは消えてしまった。

 並行してティアとエドに知らせを送り、捜索したが見つからず。一度屋敷に戻り、策を考えた。

 ふとエドが国境を跨いだのではないかと考え、そこで昨夜から今まで出国した者全ての行き先を確認しようと案が固まった。

 しかし…行動が拡大すぎるが故に陛下に報告は必須となり、私だけ陛下の元へ向かいニアの事を報告した。

 一刻も争う事態だと察してくださり、すんなりと捜索は承諾されたが、それと並行してニアと出会った森に魔獣が暴走したと報告を受け対処にあたる。日々勤務をこなしながら、国内捜索を行いながらも、出国した者の行き先を確認していた。

 だが、範囲が大きいすぎること、出国者などどこの国へ行ったかも分からなければ数か所ある国境門を虱潰ししなければならず、非効率的に時間だけを消費しているように感じていた。

 そんな時、ニアがいなくなったショックで有休を使うと休んでいたリリィが、たくさんのペオーニアを抱えて帰ってきた。


「ニア様はオーフィス国にいます!!!」


 確信した発言に事情を聞くと、実はニアを探しまわっていたとのこと。

 すると、道の途中で温室で育てているわけでもないのに、この時期に咲くはずのないペオーニアが、まして栄養も少ない道端に咲いているのを不審がって辿ったとのこと。

 すると出国の門に辿り着き、夜から明け方にかけて荷台を通したか尋ねたが、当たり前だが教えてはくれなかった。

 門番に食い下がっていると、別の門番が対応していた通行人が許諾書を見せ門を開けてもらう場面に遭遇した。

 門が開いた瞬間覗き込むと、不自然に咲いているペオーニアが先に続いていた。目が良いリリィだからこそ確認できた事実。

 ペオーニアは長い道のりを等間隔に咲いており、そして緑に乏しいはずのオーフィス国ではペオーニアは滅多に見かけることなど出来ないと知っいる為、確信したとのこと。

 だが、陛下直属の騎士団がそう簡単に隣国には渡れない。渡れたとして、長期滞在は許されないだろう。特に友好関係がよくないオーフィス国には…何かいい案がないかと頭を捻っている間に、パンを捕らえた。


「…申し訳ございません。このような形で裏切ってしまい」


 私の部屋にて縄で拘束された状態でパンは床に頭をつけ謝罪をしたが、私の知っているパンと違った気配を感じていた。


「パン…魔力は持っていないですよね?」


「…はい」


「なぜ貴方からは闇魔法の気配がするのでしょう」


「…それは」


 すると視線を心臓のある胸元に送った為、縄を解いた。パンは躊躇なく着ていたシャツのボタンを途中まで外し、下着から微かに見えた闇の魔法の印を見せる。


「…なるほど、口にすれば心臓を握りつぶされる闇魔法ですか」


 それはつまりオーフィス国で間違いないと断言している。私の視線にパンは頷き、中庭に一緒に来てほしいと願った。


「最後のわがままを申してもよろしいでしょうか」


「あぁ」


 胸に掌を当て深く息を吐く。意を決したように話し出す。


「このパン、幼少期からずっとガラディオス家に仕えられたこと誇りに思います。

 そして…あの夜も呪い子だと吹きかけられ心を支配されるのを許してしまいました。

 元々、フィリア様に何か不吉な事を呼ぶのではないかと…苦手意識をもっていた、その隙をつかれてしまいました。私の全て脆い心のせいでございます。あんなに…美味しそうにミルクを飲んでくれたのに…」


 ぽろぽろ涙を伝わせながら話すパンに耳を傾ける。言い終わると、にこりと微笑み


「パンは逃げたと使用人にはお伝えください。後処理は面倒をおかけします。ガラディオス家の未来が幸多からんことを祈ります。誘拐犯はー」


「まて、パン!!」


 口を塞ごうと手を伸ばした時には遅かった。


「パルフィこうしゃ…」


 目の前でパンは息絶えた。私の幼少期から傍に仕えてくれていたパンは、きっと今回わざと姿を現したに違いない、身体能力に優れたパンがこうも易々と捕まることが可笑しいのだ。

 伸ばした手に力が入り拳をつくる。


(絶対に、許さない)


 そこからは、隣国に入国する手筈を整えることと、パルフィの素性調査を並行して行った。

 そこで分かった事は、パルフィは生まれもった呪い子だという事。父が昔オーフィス陛下から顰蹙を買い。生まれた瞬間に呪いをかけられたとのこと。太陽の光を浴びると溶けてしまう呪いだったという。

 そうして父は息子の呪いを解いてくれる術を探していたとこと。


「なんでニアに辿り着いたんだ?」


 ティアは説明をエドから受けながら疑問を口にする。エドは続けて


「パルフィの父はニュムペー族は生きていると信じていたそうだ」


「…この裏商館潰しますか」


「お~怖、でもそうだな、ここに奴隷としていたのがニアだ」


 資料を読みながら思わず本を持っている手に力が入る。

 そして買われた。歌を歌うとどんな病でも治せるニュムペー族ではないかと確証もないのに、決めつけ…

 フィリアは初めて会った時のニアの状態を思い出す。力を込めすぎて爪が白くなる。


「…陛下に少し休暇申請を出そうと思う」


「そうだな、場所が分かれば滞在承諾はいらない」


 こうして、陛下へ休暇の申請と、オーフィス国へは珍しい闇魔法書があると聞きつけ購入に行くことを理由に出国承諾書を発行してもらった。ー


「まぁ今回はオーフィス陛下も恨んでいた侯爵を潰したんだから、こっちが御礼を言われても恨まれる筋合いないもんな」


ソファの背凭れに身を預け頭に腕を回すティアは呆れたように言い放つ。向かいのソファに腰掛けていたエドも頷きながらも前屈みで膝に腕を置き先程から自身が作成した報告書を見つめる。


「あぁ、報告書にはきちんと誘拐されていたことも記入してある。まぁ入国の理由は闇魔法書を購入に赴いた所、偶々行方不明だった自身の身内を見つけたという体にしているが、あちらも馬鹿ではない。理解し反論してこないだろう」


私は昔から出会う人に恵まれていると痛感することが、多いと自覚している。今回の件でも同じように動き回っていくれていた友人に、心配して労わってくれる使用人。気付けば二人共目の下にクマをつくっている。


「本当にありがとう」


私が膝に両手を置き、深く上半身を折ると、二人は大きく目を見開き少しの静寂の後、大きな笑い声が部屋に響いた。


「だははは、今に始まったことじゃないだろう」


「あぁ、なんだ今更」


エドは困惑したような、少し照れているのか眼鏡を直して書類に視線を戻す。ティアは腹を抱えながら大笑いし右目に溜まった涙を拭う。


「いや、本当に今回は長い期間無理をさせたと自覚している」


私の真剣な眼差しにティアは口角を上げたまま、目を細め


「そんなのお前に比べればどうってことない」


「お前の日頃の行いのお陰でこれだけ上手く物事が動いたんだ。俺達は少し力を貸したに過ぎん」


エドは視線はそのままで言い放ち、その言葉に同意するように小刻みに頷くティア。

私はじんわり心が温かくなるのを噛み締め、また今後についての話を二人と共に固めた。



▽▼▽


新しく用意されたニアの部屋はベッドはそのまま同じものを、花の刺繍をニアが気に入っているのをフィリアは知っていた。また、本の好きなニアの為に壁の一面を本棚にして、陽の光がたくさん部屋に入る大きな窓際には花瓶がいくつも並び、色とりどりの花が活けられていた。


(きっとこのお部屋をニア様は気に入ってくださるはず…どうか目覚めてください)


リリィは窓から入る風に運ばれて香る甘い花の香に心を落ち着かせながら、眠っているニアの手を優しく包み願った。




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