ぺオーニア
私は3日間も眠っていたらしい。
目が覚めた日は1日中、リリィとフィリアが近くにいて、動かしてくれなかった。
ベッドから出ようとすると笑顔のフィリアに手をとられ、抱きかかえられて戻された。
次の日、エドとティアが来て、フィリアの部屋で
起こった出来事を話していた。
私は相変わらずリリィの膝に抱えられながら話を聞いていた。
「つまり、今10歳か、栄養失調で細すぎてもっと幼くみえてたわ」
ティアは驚いて私を見る。
私は10歳なのか。そして16歳になると死ぬ。
神に愛されているから?
だめだ、全然ピンとこない。
私は自分の夢の話をした。
「あ、あと、すこし、って」
ゆっくり話し出し皆真剣に聞いてくれた。
「大きな樹木といえば、やはりブランウィン国にあるトデンドロンが浮かびますね。」
「確かに、あの国の象徴の木だもんな」
エドが言うとティアは頷き共感した。
フィリアは本棚から絵のかかれている1冊の本を取り出し
テーブルの真ん中にページを開いて置いた。
「ブランウィン国の樹木はこのような枝分かれしている」
私は書かれている絵を見た、が、これではないとも、これだとも
はっきり言えなかった。なにせ視界がぼやけていて
「わ、からな、い」
首を横にふると
フィリアは
「確かにぼんやりとしていた視界だと、絵に描いている樹木は尚更分かりずらいですよね」
と優しく微笑みかけてくれた。
「行ってみますか?」
フィリアの声に全員の視線が集まった。
少し戸惑ったような表情のフィリアは続けて
「今度の遠征訓練をブランウィン国で行えるよう、掛け合えば良いのです。」
その言葉にエドは大きく頷いた。
「なるほど。その手があった。護衛もつけるし、訓練もできて一石二鳥だな。」
「なら、アイリに手伝ってもらおう」
ティアは前のめりに言う。
「遠征ということは、私はついて行けないのですね」
リリィは膝の上に乗せてくれていた私をぎゅっと抱きしめて寂しそうに嘆いた。
「リリィはお家を任せましたよ」
フィリアに言われ、顔をあげて
「承知しました」
と力強く返事をした。
「てかさ、名前ほしくね?」
ティアが私を見て聞いてきた。
そうだ、私は自分の名前も知らない、リリィもフィリアも私を呼ぶときは肩を優しく叩いたり
目の前で屈んでくれたりと態度で呼んでくれるので、不便していなかった。
「ほしい」
私は自然とフィリアに視線を送ると、優しい藍色の瞳が細くなる。
「ニア…はどうでしょうか」
フィリアがぽつりと呟いた。大きな掌がそっと伸び、指先が優しく私の目尻を撫でる。
「綺麗な赤い瞳はペオーニアのような美しく咲いているようです。そこからとってニアなんて安直すぎますかね?」
優しい声に私は首を横に何度もふり
「に、あ。すき」
気に入った事を伝えた。するとエドが部屋に飾られていた花瓶の生けてある花を一輪抜くと、私の前に差し出し、私に教える様に、また納得した声で
「これがペオーニアだ。うん、確かに瞳と同じ赤く美しい花だ」
目の前の花は前世にも見たことがある、芍薬だ。この世界ではピオーニアという名前らしい。
リリィは小さく掌を合わせて音を出し嬉しそうに
「素敵です!ニア様!お似合いです」
ティアも腕を組み大きくうなずく。
そうして私の新しい名前が決まった。




