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樹木


ぼんやりとした視界の中で、

鳥の鳴き声がする。目の前に大きな樹木が一本立ちしている。

周りはあの目が覚めた時の花で溢れている。


大きな樹木の枝には蕾がたくさんついていた。


「もうすぐね」


透き通った綺麗な声が聞こえる。


「もう、す、ぐ?」


私はぼんやりとした視界の中で樹木に向かって話しかけた。


「ええ、あと少し。蕾が咲いたらー」


「わっ」


強い風が吹く、花びらが風に乗って視界を鮮やかに塞ぐ。

樹木が見えない、声の主が見えない。





はっと視界がクリアになった。

視界には何度か見た寝室の天井だった。


「気が付きましたか」


大きな手が私の手を包み込んでいた。


ー良かった。目が覚めた。よかった。


安堵の感情と申し訳ないと謝罪の言葉が頭に響いた。

フィリアの声はなんだか落ち着く。


そうだ、私がかってに手を放してしまったんだ。


「ご、ごめん、なさい」


擦れた声で伝えると、フィリアは何度も首を横に振り

私の上半身を大きな腕で包み込んでくれた。


「怖い思いをさせてしまってすみません。」


そう呟くフィリアに私は小さくて短い腕を背中にめいいっぱい伸ばして

抱きしめ返した。


「あり、がとう」


コンコンとノックが聞こえ

リリィがタオルと大きなお皿を持って入ってきた。


「リ、リィ」


私が呼ぶと持っていたタオルとお皿を床に落としてしまい、

お皿からは水がこぼれ落ちた。

そんなことお構いなしに、リリィは、ぼろぼろ涙を流しながら

駆け寄ってきた。


「よ、よかったあああああああ」


フィリアがどくと、今度はリリィに強く抱きしめられた。

とてもほっとする。


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