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8.第二夫人

 イリスはアルミラージを寝室へと連れ帰ってきた。


「ふむ……。まずはベッドかしら?」


 アルミラージの生態について、イリスはほとんど知識を持っていない。

 そもそも魔獣の知識を持った人間がこの国にいるかも怪しいが。


 魔獣とはそのくらい、謎めいた存在なのだ。


 とりあえず柔らかなタオルを並べ、アルミラージをそっと置いてみる。


「……ふきゅー」


 これは悪くない選択だったようだ。

 アルミラージはだらーんと脱力して眠り始めた。


 ごろんとひっくり返り、お腹を見せながら。

 あまりに無警戒である。


「いいってことかしら?」


 わからぬ。ほとんどウサギのはずだが、ウサギはこんな寝方をするのだろうか。


(……専門家の意見が欲しいわね)


 イリスは頷き、どうしたものかと思案する。


「誰かに聞かないと――」


 しかし、聞く相手が問題だ。

 ここは大公家の敷地内。どうすれば良いのだろうか。


 下手な人間を呼んでも弾かれるだろうし、大公に知られるのはもっとマズい。


「ううーん……」


 悩んだまま時間だけが過ぎる。

 レイリアに用意してもらったランチを食べても良い解決策が思い付かない。


「……うーん」


 食後のコーヒーを飲んでいると、レイリアが声をかけてくる。


「お嬢様、少しよろしいでしょうか?」

「あっ、なにかしら?」


 イリスが淑女らしい顔に戻す。

 

「実は……今しがた、大公閣下の第二夫人ルミエ様の使者からこのようなものが」


 レイリアは眉を寄せながら、綺麗な封筒を差し出してきた。


(ルミエ様……確か、事実上の正室よね)


 レインドット大公の第一夫人はクリフォードを産んだアシャである。

 しかしアシャは心を病んでおり、夢と現実の狭間に身を置いていた。


 それゆえ、大公の妻として必要なことはすべて第二夫人のルミエが代行している。


 イリスも面識はあるが、当然親しい仲ではない。


(何の用件かしら)


 封筒には金字と銀の柄が描かれてた。イリスはペーパーナイフを借りて、すぐに開封してみる。


 開けると、かすかに爽やかなミントの香りが漂う。きちんと貴族の礼式に沿っていた。


 封筒の中に入っていた手紙を広げる。

 これも高級紙で非常に丁寧。手紙に書かれた事項は単純明快であった。


『お茶会の誘い』


 本日、夕方近く。

 場所は当然だけど大公家の敷地内で。


「これは……」


 意図が読めない。

 まさか、イリスが大公家の第二夫人からお茶会に誘われるとは思わなかった。


 イリスはルミエのことを知らない。とりあえずレイリアに聞いてみる。


「これはよくあることなの?」

「いいえ、ルミエ様はとても、その――気難しい御方(おかた)で。閣下の他の夫人とお茶会をすることはめったにありません」

「……なるほど」

「申し訳ございません、私も意図が読めず……」


 頭を下げるレイリアにイリスは首を横に振る。


「気にしないで。そうよね、ルミエ様はクリフォードとも……そこそこの折り合いだったし」


 イリスは巧妙にオブラートへ包んだ。

 つまり、折り合いは悪かったのであるが。


 クリフォードは大公やアシャ以外の夫人の話題を避けていた。

 それは彼からしたら、やむを得ないことだ。


 レイリアが心配そうな顔を見せる。


「昨日の今日で、お茶会とは――お断りしても、問題はないかと。そもそも他の夫人と交流すべきとも仰せつかっておりません」

「まぁ、普通ならそうよね」


 今までのイリスならビビってお茶会には参加しなかっただろう。

 明らかに不穏だからだ。


 しかし、今のイリスには目標がある。

 広い視野と知識がある。


(向こうにも目的があるはず)


 普段、他の夫人を招かないルミネがイリスを招いた。

 その理由はわからないが、意図があるはずだ。


(大丈夫よ。取って食べられるわけじゃないんだし)


 それよりも今は動かなくては。実にならなくても、前に進むため。


「……お招きありがとうございます、間違いなくお伺いいたしますと伝えて」

「よ、よろしいのですか?」


 イリスはレイリアに微笑んだ。


「ええ、懐に入れてくれるなら向かうまでよ」

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