表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虐げられた公爵令嬢、女嫌い騎士様の愛妻に据えられる~大公の妾にさせられたけれど、前世を思い出したので平気です~  作者: りょうと かえ
1-4 運命の冬

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/56

55.別れ

「――!! お待ちを!」


 そこでイリスは大声を上げた。

 ここしかないというタイミングで。


「いきなり王宮で戦うなど。まずは話し合いをすべきでは!?」

「ふん、愚かだな。エランめに話し合う気があれば、俺のところに来る。王宮を押さえに行ったということは――向こうにも話し合う気がないということだ」

「……うぅ」


 それは否定できない。

 エラン殿下は確実に状況を動かしに来ている。


「まぁ、しかし王宮内で爆弾、爆薬の類は使うわけにもいかぬ。陛下の身も気掛かりだ」

「じゃ、じゃあ――!」

「クリフォード、お前が前線で指揮しろ。いいか、わかっているな? 殿下といえども今は反逆者。余計なことは考えず、確実に殿下の軍を追い詰めろ」

「……御意」


 クリフォードが大公から離れ、前に進もうとして……すぐに大公へ振り返る。


「少しだけイリスと話して良いでしょうか」


 大公が顎を向け、好きにしろと示した。


 馬に乗るクリフォードが私のすぐ近くで足を止める。


 そのまま馬から降りたクリフォードはイリスに顔を寄せる。

 白い息がかかりそうなくらい、すぐ近くだ。


 イリスにだけ聞こえる声で、鋭くクリフォードが詰め寄る。


「何を考えているんだ」


 静かに、だがクリフォードは怒っているようであった。


「なぜ俺のところに?」

「……逃げたくなかったの」

「なんだって……?」


 私の答えにクリフォードが眉を寄せた。


 本当にクリフォードは見たこともないほど怒り、イリスを心配していた。


「いいか、隙を見て離れろ」

「……きゅ」


 ミラが鞄の中から同意の鳴き声を上げる。


 もちろんイリスも大公と心中するつもりはない。

 どこかでは逃げるつもりだ。


 しかし、そのタイミングは心に決めていた。


 大公はイリスとクリフォードを注視しているが、声が聞こえる距離ではない。


 だから、イリスはクリフォードに確信を込めて言った。


「死ぬつもりなんでしょ?」

「……」


 一瞬、クリフォードの瞳が揺らいだ。


 それはイリスでさえも見逃しかねないほどであったが――ここまで顔が近ければ、わかる。


 やはりクリフォードは大公と刺し違えるつもりだ。


「そんなことはない」

「嘘」


 その時、大公が太った身体を揺らしてイリスたちへ叫んだ。


「いつまで話をしている……!?」


 はっとしてイリスはクリフォードの袖を掴んだ。


 とにかくクリフォードの行動を止めなければという一心しかなかった。


「約束して。死なないって」

「……わかった。約束する」


 クリフォードは迷いながらも、答えた。

 そしてほんの少しだけ――クリフォードはイリスの雪のついた頬に唇を近寄らせる。


「えっ……?」


 甘い、酔いそうな香り。

 指先まで凍てつく冬の日を溶かすような……。


 春の日差しよりも強烈で。

 身体の中の熱が……太陽に同調して燃えるようだった。


(……クリフォード)


 ずっとこうしていたい。


 そこまで感じて、イリスはこれがクリフォードの香りの魔法だと気が付いた。


 わずかな間だけ、彼の魔法に包まれて。

 そしてクリフォードの唇がイリスの頬に触れる。


 彼の覚悟と熱が、イリスへと移った。


 最後にクリフォードは……イリスの耳元で懇願した。


「俺を、信じて」

【お願い】

お読みいただき、ありがとうございます!!


「面白かった!」「続きが気になる!」と思ってくれた方は、

『ブックマーク』やポイントの☆☆☆☆☆を★★★★★に変えて応援していただければ、とても嬉しく思います!


皆様のブックマークと評価はモチベーションと今後の更新の励みになります!!!

何卒、よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新刊書籍『断罪される公爵令嬢』が10/2発売されます!! ↓の画像から販売サイトに飛べますので、どうぞよろしくお願いいたしますー!! 58iv2vkhij0rhnwximpe5udh3jpr_44a_iw_rs_7z78.jpg

婚約破棄から始まる物語『籠の鳥の公爵令嬢、婚約破棄をする。人嫌い皇帝に拾われて愛される(モフは大好きなようです)』 こちらからお読みいただけます!

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ