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虐げられた公爵令嬢、女嫌い騎士様の愛妻に据えられる~大公の妾にさせられたけれど、前世を思い出したので平気です~  作者: りょうと かえ
1-4 運命の冬

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50.クーデター⑤

 同じ頃、王宮は驚天動地の大騒ぎになっていた。


 大雪で連絡網、交通網が弱まる中でのクーデター。

 様々な報告が飛び交う中で……門閥貴族は震え上がり、ローンダイト王にすがっていた。


 王や大公とともに甘い汁を吸っていた彼らは、広間に伏して王に拝謁している。


 ある者は全身から汗を流しながら、ある者は過呼吸寸前になりながら。


 広間にて平然としているのは、ひとりだけ――ローンダイト王のみであった。


 伏した貴族のひとりが、震えながらローンダイト王に呼びかける。


「陛下、何卒――反逆者どもを制裁するようご指示を。あやつらはすぐにでも王宮に殺到してくるでしょう!」


 それに対してローンダイト王は、南から取り寄せたオレンジをかじっていた。


「そうか」


 そしてワイングラスを傾け、酔いに任せるローンダイト王に、貴族が叫ぶ。


「陛下! なにゆえ命令も下さずに落ち着いておられるので?! まだ王宮警備隊と地方の軍がおります!」

「ここから一戦交えて反逆者を討てと?」

「王弟殿下の号令がある以上、我々門閥貴族だけでは兵は動きません! 陛下に率いてもらわねばっ!」


 それは豚の命乞いに似た叫びだった。


 貴族らのあまりの形相に、ローンダイト王は思わず笑みを浮かべた。


「な、なにが面白いのです!?」

「俺は元々、王になんぞなりたくなかった。真面目に学ぶのも、誰かのために働くのも――心底嫌だった」


 ローンダイト王はワインの瓶を持って立ち上がり、貴族らを見やった。


「長子ということで玉座に座って、どかされるまで楽しもう――そう思ったが、意外と早い幕引きだったな」


 広間から出ようとするローンダイト王に貴族が戸惑う。


「陛下はど、どうなされるおつもりなので……」

「まだ飲み足りぬ」


 王の言葉に貴族らが唖然とする。


「国のことは貴様らに任す。エランに討って出るなり、投降するなり好きにしろ」

「そんな……っ!」


 貴族のひとりが立ち上がり、ローンダイト王へと吠えた。

 それは陛下を奮い立たせる切り札――のはずだった。


「大公閣下は兵を集め、抗戦なされるとのこと! それをも見捨てられるのですか!?」


 ほう、とローンダイト王は眉を吊り上げた。


「あいつは戦うつもりか。意外と骨がある」

「そうです! 陛下もどうか、大公閣下とともに――」

「ふむ、良き余興だ」

「……は?」

「この王宮内で一番高いのは……ハヤブサの塔か。俺はそこから眺めさせてもらう」


 そう言ってローンダイト王は王宮の奥へと消えた。


 残された貴族と官僚はパニック状態に陥り、散り散りになっていった。


 いくらかの者は抵抗を試み、王宮へ立て籠もろうとする。


 そして残りの者はエランのクーデター勢力への投降を始めた。


 いずれにしても王の命令のないままでは組織的に動けない。


 クーデターの趨勢は決まろうとしていた。



 一方、クリフォードは王都の川沿いにある大公の指揮所に近づいていた。


 兵の姿は見えないが、人のまとう匂いが濃くなっている。


(どうやら本当のようだな)


 王宮がどうなっているか気になるが、それよりもクリフォードの胸にあるのは――贖罪の意思であった。


 父だけは、大公だけは。


 自分の手で決着をつけなければならない。他の誰にも、エランにも委ねたくはなかった。


 川沿いの倉庫街の一角に、不自然なほど巨大な倉庫が見える。


 もっとも平時なら、どこかの大商人が建てた倉庫だとしか思われないだろうが。


(……周囲で人の気配がする倉庫が4つか)


 巨大な倉庫を取り囲むように、それよりも小さな倉庫が3つ。


 恐らく、それぞれの倉庫に数百人がいる。総勢は1000人を超える程度だろうか。


 急いでかき集めてきたにしては、中々の兵力だった。


(やはり父は引き下がらないか)


 良識ある多くの人間がエラン殿下の元に集っているというのに。


 まだなおも、欲に塗れている。


「……行くか」


 ここから先は父との勝負だ。

 クリフォードは息を呑み、中央の巨大な倉庫へと向かう。


 決着の時は迫っていた。

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