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虐げられた公爵令嬢、女嫌い騎士様の愛妻に据えられる~大公の妾にさせられたけれど、前世を思い出したので平気です~  作者: りょうと かえ
1-4 運命の冬

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45.壁を越えて

「ふー、ここまでは順調だね」


 雪はさらに大粒に、激しく降っている。


 普段なら見通しの良い敷地内も、今日ばかりはいくらも視界がない。


 壁から逃げ出すには絶好の日だ。


「ふきゅ」


 ミラは持ってきたキャベツの葉をぽりぽりしながら、左右を警戒している。


 ウサギの嗅覚は人間の10倍以上だとか。

 視界が限られた今、ミラの嗅覚は頼りになる。


「ふっきゅ……!」

「……よし」


 ミラが頷くと同時に、イリスはいくつもの種を取り出した。


 丈夫な(つる)を持つサルナシ、それに補助のアサガオやブドウなど。


 サルナシはマイナーだが食べられる実をつけ、吊り橋に使われるほど丈夫な蔓を生やす。


 色々と試したが、これが多分ベストだ。


 屈んだイリスが集中を重ね、魔法を発動させる。


(お願いっ……!)


 サルナシの種から急速に芽が出て、蔓が伸びていく。

 

 壁の高さは4メートルほど。


 サルナシは最大30メートルまで育つので、余裕を持って壁を飛び越える。


 さらにそこへ他の蔓も育てて、絡ませる……複数の蔓で補強するわけだ。


 室内実験では上手く行った。ここでも同じようにやるだけ。


 ものの数分で丈夫な蔓のロープが出来上がる。

 それを自分の腰に絡ませて――これで容易には落ちない。


 手袋をしたイリスはしっかりと蔓を掴み、葉を足場に登っていく。


 と、同時に蔓も伸ばしていく。

 植物エレベーターとでも言えるのだろうか。


「よっ、ほっ……」

「きゅー、きゅー」


 ミラの可愛い応援を聞きながら、イリスは壁を登る。


 雪が顔に打ちつけ、断続的に銃声が響く中を。


 壁の上にはトゲなどはない。

 そのまま雪の積もった壁の上から、周囲を見渡す。


(まぁ、ろくに見えないわね)


 壁の下、敷地の外側に目を向ける。

 

 大雪の日だからか、人通りはない。

 今がチャンス。


 蔓をさらに下へと下へと伸ばす。

 ぎゅっぎゅっとタフさを確認してから、降りる。


 好きな方向に伸ばせる、というのがここまで便利だとは。


 焦らず、しかし可能な限り早く。

 降りていく数分が無限にも感じられる中、イリスは雪の上に着地した。


「きゅっ……!」

「……やった」


 ここはもう敷地の外だ。

 本当は叫び出したいほどだけれど、自重する。


 まだここは大公の勢力圏なのだから。

 あの男の手からは出たが、まだ伸ばせば連れ戻される範囲にイリスはいる。


 そのままイリスは素早く通りの角から、角へと小走りに移動する。


(……足跡をどこかで消さないと)


 雪が降り続ければイリスの足跡は消えるのだが、今だとばっちり足跡が残ってしまっている。


 どこか雪が片付けられたところまで行ければ、追跡を困難にさせられるだろう。


 それに――この不穏な発砲音と現状も把握しなくては。


 イリスは一旦、大通りに向けて移動することにした。


 徐々に人が多くなる。顔を不用意に晒さないように……幸い、雪のせいで顔を晒していない人が結構いる。


(……とりあえず情報を)


 ざわざわと人の群れは騒ぎながら右往左往している。


 発砲音は今も続いているが、びくつく人はいても逃げる人はいない。


 パニックにはなっていないようだ。


 そこで手を振りながら新聞を配る人間に出くわす。


「号外! 号外だよー!」

「ちょうどいいかも……」


 道行く人が寄ってきては号外新聞を受け取っていく。


 イリスもそっと近寄って号外新聞を受け取る。

 ペラ紙1枚しかなかったが、今のイリスには十分だ。


 そこには予想通りというべきか。


『クーデター発生! 王弟エラン殿下、蜂起する!!』


 という見出しであった。

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