表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虐げられた公爵令嬢、女嫌い騎士様の愛妻に据えられる~大公の妾にさせられたけれど、前世を思い出したので平気です~  作者: りょうと かえ
1-4 運命の冬

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/56

44.不穏なる大雪の日

 それから何日もしないうちに、空が雲に覆われ、気温がぐっと下がった。


 新聞は政府への批判を隠さず、国民の不満が溜まっていることを示している。


 そしてついに大雪の日がやってきた。


 大粒の雪が朝から降って、敷地内を白く染め上げてくる。


「きゅうん」


 ミラがもっきゅっとイリスを見やる。


 この数日間でイリスの準備も出来ていた。

 お金を持って、白の防寒具を着込む。


 帽子も白で、イリスの黒髪を隠してしまえば迷彩にもなる。


「……この雪が積もったら行こう」

「きゅい!」


 ミラはふもふもとやる気だった。


「……お嬢様」


 レイリアはすべてを知っている。その上でイリスに協力してくれていた。

 防寒具や鞄などはレイリアの手配だ。


「ごめんね、レイリア」

「いいえ――このような状況に置かれれば、誰でもそうしたくなるかと思います」


 レイリアの目には涙が浮かんでいる。

 この数か月、本当にレイリアの世話になった。


 イリスはレイリアの身体を抱きしめた。


「むしろお嬢様が力強く、この敷地から離れようとするのを私は嬉しく思います」

「ありがとう……っ」


 その時、窓の外から大砲の轟音が聞こえた。

 雪の静けさを切り裂き、窓がわずかに揺れる。


「きゅい!?」

「これは……!?」


 レイリアとミラが驚く中、イリスは唇を噛んだ。


(……やっぱり)


 イリスがレイリアから離れ、冷たく凍りかけた窓を開け放つ。

 冷気と雪が入り込む中、遠くから銃声が何発も響いてきた。


 銃声は明確に遠く、多分……鳴ったのは王都ではあるが、敷地内ではない。


 敷地内の警備が慌てて移動するのが見える。


「行かれるのですね?」

「うん、行かなくちゃ」


 イリスははっきり言った。

 恐らく、この音のどこかにクリフォードがいる。


 ローンダイト王国から逃げるにしても、彼と一度会ってからにしたかった。


(ワガママなのかもしれないけれど)


 でも、これまでイリスは流されるままに不本意な人生を歩んできた。


 色々な場面で我を通せば、この屋敷に送られることもなかったのだろうか?


(それはわからない。でも――)


 せめて、クリフォードと最後に会いたい。これだけは守りたかった。


 イリスはミラを肩からかけた鞄に運んだ。


「きゅうん……!」


 ミラの瞳も決意に満ちている。行かなくては、と。

 わかってくれている。


 イリスは屋敷を飛び出し、慎重に敷地内を進んだ。

 もう慣れ親しんだ敷地も雪が降ると全然違って見える。


「よし……」


 降り積もる雪が音と姿を隠してくれる。

 大砲の音はもうしないが、鉄砲の音は断続的に聞こえてきた。


 さらに人の喧騒も……それはそうだろう、発砲音がしているのだから。


 でもイリスの心は妙に冷静だった。

 この音の中心にクリフォードがいるという確信があったからだ。


 雪に埋もれた道を警戒しながらイリスが進むと、鞄の中からミラが小さく鳴いた。


「きゅっ……!」

「――!」


 足を止めて茂みに隠れる。


「おい、早く動け!」

「はぁはぁ、雪の中で走るなんて……!」


 警備の人間がふたり。


 通常ならこの時間、遭遇しないルートのはず。発砲音で警備の動きが変わっているようだった。


「ミラ、お願い……!」

「きゅいっ」


 ミラが鞄から飛び出して、つつつーと茂みから出る。


 びくっと警備が驚くが、ミラを見てすぐに警戒を解く。


「……なんだ、ウサギか」

「早く行こうぜ。本屋敷に行かないと、安心できねぇ」


 警備は顔を見合わせ、すぐに大公の本屋敷への方向へ向けて走り出す。

 

 本屋敷はこの敷地内で一番大きな大公そのものの屋敷だ。

 

 緊急事態なのでそこに集まるのは理解できる。


 警備が見えなくなってから、ミラがイリスの元に戻ってくる。


 その顔はドヤっとしていた。


「ありがとう、ミラ」

「きゅーっ」


 イリスが手を伸ばし、ミラの雪を払う。それからまたミラを鞄にセットして……イリスは進み始めた。


 各警備の現在位置から、本屋敷までの最短距離を外して進むようにすると、誰とも遭遇せずに壁際まで到着する。


 大公の籠から出るまで、あと一歩だ。

【お願い】

お読みいただき、ありがとうございます!!


「面白かった!」「続きが気になる!」と思ってくれた方は、

『ブックマーク』やポイントの☆☆☆☆☆を★★★★★に変えて応援していただければ、とても嬉しく思います!


皆様のブックマークと評価はモチベーションと今後の更新の励みになります!!!

何卒、よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新刊書籍『断罪される公爵令嬢』が10/2発売されます!! ↓の画像から販売サイトに飛べますので、どうぞよろしくお願いいたしますー!! 58iv2vkhij0rhnwximpe5udh3jpr_44a_iw_rs_7z78.jpg

婚約破棄から始まる物語『籠の鳥の公爵令嬢、婚約破棄をする。人嫌い皇帝に拾われて愛される(モフは大好きなようです)』 こちらからお読みいただけます!

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ