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虐げられた公爵令嬢、女嫌い騎士様の愛妻に据えられる~大公の妾にさせられたけれど、前世を思い出したので平気です~  作者: りょうと かえ
1-4 運命の冬

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42.警告

 ルミエのメイドが人を連れて部屋に戻ってくる。


 ターバンに髪を隠し、口髭を生やした細身の男性……ゆったりとしたローブは南の諸国を彷彿とさせる。


 年齢は20歳前後。

 イリスにとっては会ったことのない男性……のはずだった。


 しかし見覚えのある瞳。

 そしてどことなく懐かしい雰囲気を漂わせている。


(……?)


 この男性には会ったことがあるはず。


 イリスがそっと集中すると、目の前の男性から魔力が感じられる。


 同時にはっとイリスは気が付いた。


 それを察したルミエがお互いのメイドに呼びかける。


「しばらく3人にしてくれるかしら?」


 この部屋は広くないので、メイドは2人なのだが(イリスとルミエでお互いにひとりずつ)


 イリスもレイリアに頷き、3人だけにしてもらう。

 

 メイドがいなくなって、イリスが身を乗り出す。


「まさか……?」

「……やはりわかるみたいだね」


 目の前の男性がターバンを取ると、そこには久し振りに会う幼馴染の――王弟エランがいた。


 エランはゆったりとした仕草で椅子へと腰掛けた。


「かなり自信あったんだけどな。魔力への感度が鋭い君には通じないか」

「……!」


 大きな声を出しそうになり、慌てて口をつぐむ。


 ミラはエランを見て首を傾げながら、ポリポリとクルミを食べていた。


「見事なものよ。私でさえわからなかったのに……やっぱり魔力持ちは違うのね」


 ルミエは落ち着いて紅茶を飲んでいる。


 状況の理解に頭が追い付かない。

 ここにいるということは、ルミエがエランを招いたということだ。


 イリスに会わせるため。


 エランと会うのは久し振りで、色々と話したいことはあるのだが。


「……どうして、ここに?」

「少し話をしたくてね。静かな環境で」


 エランが軽く手振りを交えながら話す。


 狭い室内のはずではあるが、どことなく華やかになる。

 人を安心させる才能という意味で、エランの右に出る者はいない。


「まず俺がここに来たのは……警告をするためだ」

「…………」


 柔らかな顔のまま、エランははっきりと告げた。


(もしかして……)


 姿を見せないクリフォード、そして今のタイミングで訪れたエラン。


「最近、南の国が物騒なのは聞いていると思う。用心してほしい」


 エランの言葉を聞きながら、これは嘘だとイリスは直感した。


 そんなことなら手紙で事足りる。


 もっと違う意味がある――エランは常に計画を立てて動く人間だった。


 騒がしい新聞記事。

 思い詰めたクリフォード。

 

 色々なことが頭の中を駆け巡る。


「クリフォードは……最近、彼と会えていません」

「……彼はとても忙しいんだ」


 それは静かだけれど、内側に哀しさが込められていた。


 嫌な予感がぞわりとイリスの背筋を這う。


「彼は……彼と話したいです」

「それは無理だ」

「どうして?」


 イリスの問いかけにエランは首を振る。


「彼がそう望んでいない。俺も……止められない」

「どういう意味かしら?」


 傍観者に徹していたルミエが初めて口を開いた。


「殿下とあの子は北でも今も、一緒に行動しているのではなくて」

「そう、だけど今の彼は――自分を見失っているかもしれない」

「それって……!」


 イリスが思わず立ち上がる。


 何を。

 クリフォードは何をしようとしているのか。


「俺が言えるのはここまでだ。いいかい、よく用心してくれ」


 ターバンをつけ直したエランが席を立つ。


 早すぎる。

 だけど、彼がいられる時間も短いとはわかっていた。


「……私は」


 どうすればいいのか。

 エランは何を伝えようとしてくれているのか。


「今年の雪はまだまだ降りそうだ。雪が積もる日には、気を付けて」


 イリスがごくりと息を呑む。

 それは何気ない言葉のようでいて。


 雪が積もる日。

 どうして、わざわざ。


「……殿下も忙しいのね?」

「ええ、しばらくの間は。今日、この場を設けて頂き、ルミエ殿には本当に感謝いたします」


 それだけ言って、エランは変装を整えて帰っていった。


 これ以上、話せることはないと。

 有無を言わさずに。


 その背を見送りながら、イリスは呆然として椅子に座った。


 本当に嫌な。

 嫌な予感と予想が頭から離れないのだ。

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