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虐げられた公爵令嬢、女嫌い騎士様の愛妻に据えられる~大公の妾にさせられたけれど、前世を思い出したので平気です~  作者: りょうと かえ
1-4 運命の冬

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36.思惑

 クリフォードは心に刃と反逆の心を隠しつつ、王宮勤めを続けていた。


 クリフォードには覚悟ができている。

 横暴なる君主、好色な父……腐敗したすべてを断ち切らなければならない。


(……まさか、偽りの顔を作るのがこうまで役立つとは)


 父に道具のように扱われて生きてきた人生。

 しかし皮肉にもそれを耐え抜いたおかげでクリフォードは嘘が上手くなった。


 クリフォードが心を隠せば、ほとんどの人間が真実を見抜けない。

 例えイリスであっても……すべてを見抜くことはできないのだ。


 クリフォードはエランと距離を保ちつつ、隙を見ては国内を奔走した。


 誰が味方になるのか、敵になるのか。

 繊細な政治力学を要するのだが、クリフォードはそうした面でも――父譲りの技術を持っている。


 今日、面会したのは王都で名を馳せる商人たちであった。


「クリフォード様にこのような会合を設けていただけるとは、感謝の申し上げようもございません」


 商人たちの長、立派な顎髭(あごひげ)と帽子を被った初老の男が頭を下げる。


 続いて、王都の名だたる商人も同様にクリフォードへ敬意を表して頭を下げた。


「そんな、私などはまだまだ……。精進中の身です。どうぞ顔を上げてください」

「おお、なんとありがたきお言葉……」


 クリフォードは朗らかに応対しながら、商人たちの反応を注意深く探る。


 彼らは王都のみならず王国全体の経済を握る重要人物。


 中にはもちろんローンダイト王と繋がって利益を貪る者もいる。


(だが、今の国家は商人なしに動くものではないからな)


 鉄道、大砲、銃器、電信。

 金の力は恐ろしく国家を強くした。


 まだ飛行機は量産化の途上だが、実現すればまた世界が変わる。


「北の諸国との不穏なる日々も終わりを告げた。これで北との交易もスムーズに行くだろう。今回は遠慮なく、貴殿らの意見をうかがいたい」


 クリフォードはなるべく温和に見えるよう、全員を見渡して言った。


「時代の動きは早い。気になることがあれば、何でも言ってほしい」


 商人たちが顔を見合わせる。


 彼らにとってクリフォードは……恐怖の対象でもある。


 なにせあの大公の嫡子、さらには国防の英雄、王国一の騎士だ。


 迂闊なことを言うまいとしているのが、クリフォードからは手に取るようにわかった。


「それでは少し宜しいでしょうか?」

 

 座の全員が声を上げた人物に注目する。

 強めの赤みを帯びた金髪の女性――ティリルであった。


「北との境界争いも一段落し、喜ばしいことに商売の機会は増えております。このような傾向は今後も継続すると……?」

「ええ、ローンダイト王国は平和を愛する国。当面は今のような状況が続くでしょう」


 ティリルとクリフォードは申し合わせたわけではない。


 しかし、お互いに何も知らないわけではない……イリスという見えない線があるのを、ふたりだけが承知していた。


 ティリルを口火に小心そうな商人がおずおずと手を挙げる。


「では軍の状況も……?」

「研究開発は進めますが、予算は削減傾向かと」


 ここまではもう決まったことだ。

 

(あのローンダイト王の遊興費に消えるのだがな)


 軍縮は構わない。

 しかし、あの馬鹿騒ぎに付け替えられるのはどうなのか。


「……では、財政は今のままと」

「そのようになるでしょうね」


 クリフォードが座を見渡すと、何人かがわずかに不安そうな様子を見せていた。


 さらに別の人間が発言をする。


「公開されている王国の財務表の数字からすると軍縮はある種、必然かと……しかし、その……」


 言い淀む商人の額からは汗が浮き出ていた。


 ローンダイト王は自分に歯向かわない限り、平民に興味がない。


 ゆえにめったなことで商人が罰せられたことはないのだが、それでも勇気がいるのだろう。


「その、全体の予算規模は変更はなく……?」

「そうですね、その点は変更なく……むしろ増額されるかと」


 クリフォードがさらりと口にした言葉に、いよいよ何人かの商人の顔に危機感が浮かぶ。


 それらの中には顎髭の商人の長も含まれていた。


(やはり今の国家運営に不安があるようだな)

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