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虐げられた公爵令嬢、女嫌い騎士様の愛妻に据えられる~大公の妾にさせられたけれど、前世を思い出したので平気です~  作者: りょうと かえ
1-4 運命の冬

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34.上手くいかず

 それからイリスはルミエやティリルにバニラを供給していく仕事を始めた。


 まぁ、時間のある時にバニラビーンズを作って、定期的に引き渡すだけなのだが。


 ありがたいのは、都度お金をすぐにくれること。

 なのでそのお金をイリスもすぐ使うことができた。


「きゅうん〜」

「気持ちいい?」

「きゅー」


 ミラがぬるま湯を張った木製のタライで気持ち良さそうにしている。


 底は浅く、縁にはタオルを置いて。

 なのでミラはだらーんとタオルに顎を乗せてリラックスしていた。


「さぁ、石鹸で洗っていきますよ〜」

「きゅぅ〜」


 人肌よりもぬるい温水でミラが気の抜けた鳴き声を返してくる。


 ミラは水浴びも石鹸も嫌がらない……むしろ大好きだった。


 もこもこと手触りの良い泡をミラの背中からまぶしていく。


 ふわふわがさらなるふわふわに……!


 イリスは上機嫌にミラを。泡立てていく。

 

「ふんふんふーん♪」

「きゅきゅうきゅー♪」


 このタライもタオルも石鹸もバニラで得た金貨で買ったものだ。


 要はイリスとミラの仕事によるもので、嬉しさも一入である。

 

(買ってきてくれたのはレイリアだけど……)


 しっかりとミラの耳の根元や四肢の付け根まで……。


 白く泡だらけになったミラへ、別のタライからそーっと温水をかける。


「きゅー♪」


 泡を洗い流し、タオルでふきふき。

 一連の作業中でもミラはとてもいい子だった。


 拭き終わったミラをイリスが抱きかかえて、顔を寄せる。


「うーん、ふかふかのツヤツヤね」

「きゅー……!」


 こんな感じでイリスはミラと戯れつつ、バニラの取引を進めていく。


 一度の取引で得られる金貨は数十枚。つまり日本円で数百万分にもなる。


(数回の取引で手元にあるのが金貨60枚……)


 日本円にして600万円ほど。

 かなりの金額だが、エスケープするにはまだ物足りない。


(……にしてもあの初日以降、本当に大公は一度も来ないわね)


 来なくていいのだが。


 もし連続で来られたら、こんなに冷静ではいられなかったかも。

 頭がおかしくなっていたかもしれない。


「お嬢様、紅茶の用意が整ってございます」

「ありがとう、すぐ行くわ」


 今、時刻は15時を少し回ったところ。

 秋の気配は遠のいて、もう冬と言ってもいい。


 イリスはミラを抱きながら広間のテーブルに向かった。


 ミラをテーブルの上に乗せて、ティーセットを見やる。


 ふたつのカップに入れられた、よく似た紅茶。

 どちらもやや濃いめの茶葉のはずだ。


 イリスはまず右のカップを手に取り、飲む。

 うん、美味しい。やや酸味があり、口の中にはっきりと味が残る。


 で、少し時間を空けてから左側のカップを手に取って飲む……。

 

「いかがでしょうか?」

「……ううーん」


 左側の紅茶は色こそ右と同じようなものだが、渋みがずっと強い。

 味も残るというかへばりつく……そんなイメージだ。


 端的に言うと美味しくない。


「左が私の魔法で作った茶葉?」

「正解でございます」


 レイリアに言われ、イリスは肩を落とす。


 バニラの成功から気を良くして、他のも上手くできないかと思ってはいるのだが……。


「どうして上手くいかないんだろう?」

「バニラだけが特別なのか、それとも熟成度合いの問題なのでしょうか」


 バニラの場合、使われるのは確かに風味付けがほとんどだ。


 バニラがなければ成立しない、という料理は存在しない(バニラアイスでさえ、他のフレーバーでアイスはできる)


 しかし紅茶などはそれ単体が飲み物である。

 その差なのかもしれない。


「きゅうん」

「……こっちの紅茶がいいって?」


 ミラが左側のカップにふんふんと鼻を近付ける。


 イリスは左側のカップからスプーンで紅茶をすくい、ミラの口元へ持っていった。


「はい、どうぞ」


 ミラが舌をぺろっと出しながら紅茶を飲む。ウサギの舌、可愛い。


「きゅー」


 が、やや顔をしかめるミラ。

 やっぱりそんなにこの紅茶は美味しくは……ないようだった。

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― 新着の感想 ―
ウサたんは、居るだけで可愛いのです! そして可愛いのは間違いなく正義です!! んで、ミラたんや。 どの辺が駄目なのかの解説ヨロ。 なるべくこれ以上に可愛くヨロ。
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