表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虐げられた公爵令嬢、女嫌い騎士様の愛妻に据えられる~大公の妾にさせられたけれど、前世を思い出したので平気です~  作者: りょうと かえ
1-3 平穏な日々を、ウサギと一緒に

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/56

31.プリンとお礼

 自分の魔法で生まれたバニラ。

 それを惜しげもなく、最高の技術で使ってもらったプリン。


 漆黒のカラメルソースと一緒に、イリスは口へと入れる。


 まず感じたのは焦げ付いた砂糖の甘さ。カラメルソースだ。


 そこから卵と牛乳、プリン本体の味わいが重層的にやってくる。


 それらを優しく包むのがバニラの芳醇さだ。


「んんっ……」


 目を閉じて天井に顔を向ける。


 卵も牛乳も砂糖も、どれも間違いなく味の濃い一級品。

 ともすればバラバラになりそうなくらいだけれど、そこはクリフォード。


「……美味しい」


 浸っていたい。

 バニラでまとまってくれた、固めのプリン。

 

 前世でも今の人生でも。

 こんなに美味しいプリンは食べたことがないレベルだ。


 しばらくじんわりプリンを味わっていると、グラタンを食べ切ったミラがイリスの服の裾を前脚で掴んだ。


「きゅっ!」

「あっ、ミラも食べたいよね?」


 こくこくと頷くミラ。


 ミラはグラタンがかなりお気入りだったので、たっぷり時間をかけていた。


 その間にイリスはプリンへと移行したわけだけど、ミラも追いついてきたのだ。


 プリンはきっちり大きめのが3個あるので問題ない。


 ミラ用の小さめスプーンでさくっとすくい取り、ミラにも食べてもらう。


 スプーンを顔先に寄せると、ミラが顔をぎゅっと引き締めた。


「……きゅ」

「なんて?」

「『気合いれて食べます』みたいな……」


 ミラの言っていることがなんとなくイリスにはわかる。


 今の顔はそんな顔だ。

 正確には『結構本当に満足しつつあるけれど、しかしこのクリフォードの料理はめっちゃ美味しいので期待して食べます』くらいだけど。


 長すぎるのでイリスは要約した。


「ふきゅー!」


 ミラもプリンは気に入ってくれたようで、ぶるぶると天井を見ながら震えている。


「……きゅ」

「あはは、イリスと同じ反応だね」

「?!」


 いや、さすがにここまででは……と思ったが、否定できない。


 そんな可能性も大いにある。


「きゅっ!」

「およ?」


 プリンを堪能したミラが、とことことクリフォード用のデザートスプーンへと這っていく。


 そしてきゅむっと。


 両前脚でスプーンを器用に掴むと、クリフォードのプリンをすくい取った。


 そしてクリフォードへとプリンの乗ったスプーンを掲げる。


 ……ちょっとぷるぷる震えているが。


 それでもミラの意図ははっきりしている。

 お礼に食べさせてあげる算段らしい。


「ありがとう、ミラ。頂くよ」


 クリフォードはミラのお礼ににっこり笑い、背を屈める。


 というのもクリフォードは身長が190センチ近い。

 ミラの差し出したスプーンでは到底届いていないのだ。


 ミラへの感謝を示すように、クリフォードはじっくりミラを見つめながら……プリンを食べる。


「んっ、ふふっ……これも美味しくできた」

「きゅい!」

 

 微笑ましい光景にイリスもほっこりする。


 しかし、ミラの『お礼』はそこで終わらなかった。


「きゅーい!」

「え? 私?」

「きゅ、きゅー!」


 ミラがスプーンを持って、とととーっとイリスの元にくる。


 そしてミラはスプーンを持ちながら一緒にはむっとイリスの服を前脚で掴んで――。


 目的のわからない行動にクリフォードは小首を傾げる。


「ミラは何をしようとしてるんだい?」

「……えーと」


 わかってしまった。

 イリスはミラの行動の意図を察した。


 ミラはイリスもクリフォードに食べさせるよう言っているのだ。


(ミラが食べさせるのと、私が食べさせるのでは……結構な違いがあるんじゃない!?)


 そんなイリスの考えとは裏腹に、ミラは決意を秘めていた。


「きゅっ」


 一緒にお礼をしませう、と。


 そこには抗えない説得力があった。

 まぁ、簡単に言ってしまうと。イリスもほぼ食べていただけなので……。


 バニラへの貢献度も、イリスとミラはほぼ同じようなものであった。

【お願い】

お読みいただき、ありがとうございます!!


「面白かった!」「続きが気になる!」と思ってくれた方は、

『ブックマーク』やポイントの☆☆☆☆☆を★★★★★に変えて応援していただければ、とても嬉しく思います!


皆様のブックマークと評価はモチベーションと今後の更新の励みになります!!!

何卒、よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新刊書籍『断罪される公爵令嬢』が10/2発売されます!! ↓の画像から販売サイトに飛べますので、どうぞよろしくお願いいたしますー!! 58iv2vkhij0rhnwximpe5udh3jpr_44a_iw_rs_7z78.jpg

婚約破棄から始まる物語『籠の鳥の公爵令嬢、婚約破棄をする。人嫌い皇帝に拾われて愛される(モフは大好きなようです)』 こちらからお読みいただけます!

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
ミラさん、クリフォードへの一番のご褒美はコレだ!とお気付きなのですね。流石です!!イリスさんが全くお気付きでは無いのは残念ですが、気付いたら絶賛拒否しそうですから現時点ではコレでイイのだ?!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ