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虐げられた公爵令嬢、女嫌い騎士様の愛妻に据えられる~大公の妾にさせられたけれど、前世を思い出したので平気です~  作者: りょうと かえ
1-3 平穏な日々を、ウサギと一緒に

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29.クリフォードの料理を

 プリン!


 それは古典でありながら、この世界でも現代日本でもデザートとして確固たる地位を獲得しているデザートの中のデザート!


「もちろん、お願いするわっ!」

「うん、じゃあちょっと待っててね」


 クリフォードはバニラビーンズを受け取り、キッチンへと向かう。


 ミラを抱えながら、イリスもキッチンへ。


 クリフォードはまな板の上にバニラビーンズを載せると、鞘から開いて種を取り出し始めた。


 一切の迷いがない手つきだ。


「結構、バニラビーンズは使ったことある?」

「うーん、数回かな……」


 言葉は自信なさげであるが、手つきはそうではない。

 慣れている……!


 種を取り出したクリフォードは、それを牛乳の中に入れてよく混ぜ合わせる。


 もちろん鞘も浸して……。


 で、卵液が出来上がったら鞘を取り出して牛乳、砂糖と混ぜ合わせる。


 そこから先は普通のプリン作りと同じようだった。


 カラメルソースは上質な砂糖から作り、型の中へ。

 そこへバニラビーンズ入りの卵液を流し入れる。


 あとはグラタンとは別のオーブンに入れて加熱。


 この屋敷のキッチンはかなり大きい。なのでオーブンもひとつじゃないのがいいところだ。


 本当によどみなく、手慣れたやり方だった。


 手が空いてからクリフォードがイリスに尋ねる。


「ところでバニラビーンズは、君の魔法で?」

「うん、出来るかなって思って……」


 ルミエとティリルのことを伏せたのは、そこまで心配をかけたくないからであった。


 言えば、クリフォードはきっと気を揉んでしまう。


 今、王都で多忙な彼にそこまで――本当にそこまでは気を回して欲しくなかった。


「香り高いバニラビーンズはどこでも需要がある。イリスの魔法ならではだね」


 クリフォードはそれ以上、何も言わない。


 なぜ今、こんなことをするのか。

 放っておいてくれるのがありがたい。


 それからグラタンとプリンが焼き上がり、それ以外のサイドメニューも出来上がったようだった。


 テーブルの上に置かれたのは、ほくほくのグラタン。


 見た目からすると、使われているイモはジャガイモだろうか。


 他にアンチョビと小エビのサラダ。

 野菜は多くなく、小エビがたくさん入っている。


 で、どーんと輝くバニラプリン。


「きゅーう」


 ミラがふんふんとプリンに顔を寄せる。


「それは最後だからね……!」

「……きゅ!」


 ミラは頷いてプリンから離れてくれた。


「ちゃんと自制できるんだね」

「……実はさっき、バニラビーンズを食べたから」


 なので多分であるが、ミラの中でバニラの優先度が下がったのだろう。


 サラダがより分けられ、手を合わせて食事を始める。


「ありがたく頂きます……!」

「どうぞ、ぜひ」


 アンチョビと小エビのサラダをフォークでよそい、口に運ぶ。


 濃いめの海の味にシャキシャキのリーフレタス。

 酸味と塩気と野菜の味わいが絶妙なハーモニーを醸し出している。


 小エビは湯通しされ、アンチョビとよく絡まって……疲れた頭と身体がさっぱりしていく。


「きゅー!」


 もしゃもしゃもしゃ。

 ミラももちろん、サラダをいっぱい食べる。


 魔力がなくてもミラは食べる……クリフォードの料理は特に容赦なく食べる。


 サラダでクリアになったところで、いよいよグラタンにスプーンを伸ばす。


 ほくほくで、食欲をそそりまくるチーズの香り。

 ベーコンと玉ねぎを刻んだのも入っているっぽい。

 

「夜はもうちょっと寒いもんね」

 

 イリスはドキドキしながらグラタンをすくい取る。


 とろーりとしたチーズ。

 まだ熱い。だけど、熱々のグラタンを食べることこそ幸せのはず。


 思わずよだれが出そうになるのを、イリスは我慢して口へと運ぶのだった。

【お願い】

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