29.クリフォードの料理を
プリン!
それは古典でありながら、この世界でも現代日本でもデザートとして確固たる地位を獲得しているデザートの中のデザート!
「もちろん、お願いするわっ!」
「うん、じゃあちょっと待っててね」
クリフォードはバニラビーンズを受け取り、キッチンへと向かう。
ミラを抱えながら、イリスもキッチンへ。
クリフォードはまな板の上にバニラビーンズを載せると、鞘から開いて種を取り出し始めた。
一切の迷いがない手つきだ。
「結構、バニラビーンズは使ったことある?」
「うーん、数回かな……」
言葉は自信なさげであるが、手つきはそうではない。
慣れている……!
種を取り出したクリフォードは、それを牛乳の中に入れてよく混ぜ合わせる。
もちろん鞘も浸して……。
で、卵液が出来上がったら鞘を取り出して牛乳、砂糖と混ぜ合わせる。
そこから先は普通のプリン作りと同じようだった。
カラメルソースは上質な砂糖から作り、型の中へ。
そこへバニラビーンズ入りの卵液を流し入れる。
あとはグラタンとは別のオーブンに入れて加熱。
この屋敷のキッチンはかなり大きい。なのでオーブンもひとつじゃないのがいいところだ。
本当によどみなく、手慣れたやり方だった。
手が空いてからクリフォードがイリスに尋ねる。
「ところでバニラビーンズは、君の魔法で?」
「うん、出来るかなって思って……」
ルミエとティリルのことを伏せたのは、そこまで心配をかけたくないからであった。
言えば、クリフォードはきっと気を揉んでしまう。
今、王都で多忙な彼にそこまで――本当にそこまでは気を回して欲しくなかった。
「香り高いバニラビーンズはどこでも需要がある。イリスの魔法ならではだね」
クリフォードはそれ以上、何も言わない。
なぜ今、こんなことをするのか。
放っておいてくれるのがありがたい。
それからグラタンとプリンが焼き上がり、それ以外のサイドメニューも出来上がったようだった。
テーブルの上に置かれたのは、ほくほくのグラタン。
見た目からすると、使われているイモはジャガイモだろうか。
他にアンチョビと小エビのサラダ。
野菜は多くなく、小エビがたくさん入っている。
で、どーんと輝くバニラプリン。
「きゅーう」
ミラがふんふんとプリンに顔を寄せる。
「それは最後だからね……!」
「……きゅ!」
ミラは頷いてプリンから離れてくれた。
「ちゃんと自制できるんだね」
「……実はさっき、バニラビーンズを食べたから」
なので多分であるが、ミラの中でバニラの優先度が下がったのだろう。
サラダがより分けられ、手を合わせて食事を始める。
「ありがたく頂きます……!」
「どうぞ、ぜひ」
アンチョビと小エビのサラダをフォークでよそい、口に運ぶ。
濃いめの海の味にシャキシャキのリーフレタス。
酸味と塩気と野菜の味わいが絶妙なハーモニーを醸し出している。
小エビは湯通しされ、アンチョビとよく絡まって……疲れた頭と身体がさっぱりしていく。
「きゅー!」
もしゃもしゃもしゃ。
ミラももちろん、サラダをいっぱい食べる。
魔力がなくてもミラは食べる……クリフォードの料理は特に容赦なく食べる。
サラダでクリアになったところで、いよいよグラタンにスプーンを伸ばす。
ほくほくで、食欲をそそりまくるチーズの香り。
ベーコンと玉ねぎを刻んだのも入っているっぽい。
「夜はもうちょっと寒いもんね」
イリスはドキドキしながらグラタンをすくい取る。
とろーりとしたチーズ。
まだ熱い。だけど、熱々のグラタンを食べることこそ幸せのはず。
思わずよだれが出そうになるのを、イリスは我慢して口へと運ぶのだった。
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