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虐げられた公爵令嬢、女嫌い騎士様の愛妻に据えられる~大公の妾にさせられたけれど、前世を思い出したので平気です~  作者: りょうと かえ
1-3 平穏な日々を、ウサギと一緒に

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26.ビーンズへ

 白い花から匂いはしない。

 ここから実がなって、それを熟成・加工することで初めてバニラビーンズになる。


(よし、よし……っ!)


 本で調べたバニラは何十メートルにもなるという。

 だけど、そこまでは必要ない。


 とりあえずテーブルに乗って、実がなれば……。


 花の咲いたバニラへ、イリスはさらに魔力を注ぎ込む。


 不思議だけれど、ミラの魔力があるおかげか進めやすい。


「きゅー……!」


 決意を秘めたミラの眼差しが心強い。

 彼女の魔力がガイドになっているように思う。


 初めて手にする植物だが、問題ない。徐々に花が実へと変わっていく。


「す、すごい! ちゃんと鞘状に!」

「バニラはええと、虫が受粉させないといけないんだっけ?」


 ルミエに問われたティリルが首をぶんぶんと縦に振って頷く。


「そうです! しかも花は半日でしぼんでしまって……人の手で受粉させるのも極めて難しいとか」


 その辺りのことまでイリスは知らなかった。

 花が半日でしぼむなら、確かに受粉のハードルは高い。


 しかし、イリスの花の魔法はそういう条件を無視する。

 季節も虫も関係ない。これは大きな強みだ。


(……もっと)


 バニラのさやいんげんに似た鞘が出来上がってくるが、イリスは魔法を止めなかった。


 ティリルが身を乗り出す。

 てっきり鞘状の実が出来たところでイリスが打ち止めにすると思っていたのだ。


「……あれ? まだ続けますので?」

「きゅー!」


 ミラはイリスの意図を汲み取り、ふんふんと頷く。


 そう、一応の段階としては鞘状の実がなれば終了ではある。


 でもこれではまだ売り物にはならない。

 バニラの実は採取され、熟成を何か月もさせないといけないからだ。


 その期間はなんと半年間に及ぶ。

 だからこそ、バニラは現代地球でも高価な植物なのである。


 ほんのひとつの束が数万円で取引されることもある、まさに魔法の香料――それがバニラだ。


「熟成まであなたの魔法で……?」


 ルミエが興味深そうに眼鏡をくいっと上げる。


「……はい。試してみる価値はあるかと」


 この魔法は植物を意図通りに変化させる要素も含むのではないか――というのが、イリスの考えだった。


 でなければ好きな方向に蔓を伸ばしたり、サイズを縮めたりはできないはずだ。


 だからもしかして、バニラの熟成もある程度はできるのでは……と思った。


(イメージはバニラビーンズ……)


 ぎゅっと黒ずんだバニラを握る。

 

 昼間は天日干し、夜は密閉して保温……それを何週間も繰り返す。


 乾かし、湿らせる。

 これの繰り返しをイメージしていく……。

 

「きゅー!」

「おわっー! ま、まさかっ!」


 するとバニラの実が徐々に黒くなり、香り高くなっていく。


 実はからから、細く黒く……だが、強烈な芳香が漂い始める。


「熟成まで……? そ、そこまでできるなんて!」

「これは……本当に驚きね」


 ティリルはひっくり返りそうになって、ルミエも目をパチクリさせている。


「……きゅ、きゅい!」


 ミラの慌てた声でイリスがはっとする。


 そうだ、全部を完全に熟成させると次の分に困ってしまう。

 ミラがいたとしても、完全に使い切ってしまう必要はない。


「ふぅ……っ」


 イリスは魔法を止めて、バニラビーンズをテーブルに置いた。


 黒ずんだバニラビーンズから青々とした蔓が生え、その先にまた黒いバニラビーンズが出来上がっている。


 まさに魔法としか言いようがない。


 部屋に満ちたバニラの香りが、成功の証しだ。


「やったね!」

「きゅーい!」 


 イリスがミラの顔先に手を伸ばすと、ふにーっとミラも前脚でハイタッチしてくれる。


 どこからどう見ても、上手くやってのけたのだ。

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