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虐げられた公爵令嬢、女嫌い騎士様の愛妻に据えられる~大公の妾にさせられたけれど、前世を思い出したので平気です~  作者: りょうと かえ
1-3 平穏な日々を、ウサギと一緒に

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23.王弟と騎士

 きらびやかな照明、派手な楽団の奏でる音楽、令嬢の視線を抜けてやってきたのは閑静なテラスだった。


 クリフォードは集中を傾けて、周囲を探る。


 樹木と自然の良い香り。

 クリフォードとエラン以外に人の匂いはしない。


「他の人はいません、殿下」

「ありがとう。君の力はやっぱり便利だね」


 やや薄汚れ、傾きかけた椅子のホコリを払い、エランが座る。


「君が来て、令嬢が色めき立っていたのが離れていてもわかったよ」

「あんなのは……殿下、何も知らないだけです」


 憮然として答えながら、クリフォードがエランの対面に座る。


「国の大事も、本当の苦労も……」

「まぁ、そうだろうけれど。彼らのような人々の支持も無視できない。我々がやろうとしていることからすると……ね」


 エランの目つきが鋭くなり、クリフォードをじっと見つめる。


「有力貴族への根回しは進んでいる。やはり兄への反感はかなり大きいようだ」

「でしょうね」


 ローンダイト国王は日中から酒浸り。さらに、そばにいるのがアデス公爵とレインドット大公だ。


 これで支持を繋ぎ止めるなど、不可能だろう。


「とはいえ、王都は近衛軍とレインドット大公の軍がしっかりと守っている。実力行使は容易ではない」


 ローンダイトは国防費を削り、遊興費に回している。


 陛下は国を良くしたいという気持ちも、自分を良く見せたいという気持ちもないようだ。


 近衛軍まで削るのは警戒心のなさか、厭世的なのか。


 しかしレインドット大公は別で、享楽的ながらも油断はしていない。


(……まぁ、真実を見抜く眼力は衰えているが)


「では、陛下の宴席に招かれるメンバーが最終的な壁ということですか」

「そうなるだろうね。反感を買っている連中だ……」


 クリフォードは静かにその話を聞いていた。


 そして、その中に自分も含まれていると感じる。

 例え功績があっても。あの大公の息子というのは軽くない。


「私のことは伏せているので?」

「……まだ、ね。君は切り札だ。どこに大公のスパイがいるか」


 エランは慎重に事を運びたいようだ。


 確かにそのほうがいいだろう。

 いざクーデターを起こすとしても、日和見する貴族が相当出る。


 それがわかっていても、クリフォードは……身を乗り出した。


「私はなるべく早く進めて頂きたく思います」

「……クリフォード」

「お知らせした通り、父はもう殿下に疑念を持っている。先手を打たれたら……っ」


 イリスを解き放ち、自由にする。

 それが今のクリフォードのすべてだ。


 そのために自分がどうなっても構わない。ただ、イリスだけは自由になって欲しかった。


「らしくないね。焦っているのか」

「焦りもする……! 彼女を……」


 凄みを帯びたクリフォードが拳を握り、冷静になろうとする。


 彼女への罪を贖うには。

 死に場所が必要だ。


 そこでエランがテーブルの上にあるクリフォードの手を取った。


「……わかっている」


 エランもクリフォードとは子どもの頃からの付き合いだ。


 アシャのことも知っている――王都の郊外にある、あの家を紹介したのはエランだからだ。


 アシャ、イリス。


 クリフォードは常に抑制を求められてきた。そうしなければならなかった。


「君の言う通りだ。大公がすでに動いているのはこちらには不利。できる限り、急ごう――この国を救うため」

「すまん、エラン」


 クリフォードが顔を伏せる。

 エランの冷静さがクリフォードの気持ちを落ち着かせた。


「気にするな。無理もない……」


 そこでクリフォードはエランの手が震えていることに気が付いた。


「俺も心の中では煮えたぎっている。計画を早めよう。そのための機会もありそうだ――」

「機会?」

「イリスだ。……彼女も動いているらしい」

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― 新着の感想 ―
「女性嫌いと噂される美形騎士」が、 「外務大臣を任されるほど優秀で見目麗しい王弟殿下(幼なじみ)」と、 「ひとけのないテラスでふたりきり。切ない表情で手を握って話していた」とか、 あまりに腐女子が喜び…
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