21.これからとアルミラージ
ファーストコンタクトは大成功だったようだ。
ルミエもティリルもイリスの魔法の可能性を認識し、動いてくれることになった。
まずはバニラを増やすための種。
これをティリルが入手することになった。
その仲介はルミエが引き続き行うのだが――。
「お金だとかは要らないわ。私は……まぁ、良質なバニラをあとでもらえればいいから」
「そういうわけには……」
さすがにそこまでタダで働いてもらうのはどうかと思う。
今だってかなり動いてもらっているのに。
「……いいのよ。あなたに利益があって、楽しめているのなら」
「ルミエ様……」
彼女はどこまで見通しているのか。
あるいは、もう全部わかっているのかもしれない。
「だから気にしないで」
イリスは静かに頷く。
彼女の恩に報いようと思いつつ。
で、細かな話し合いを終えて――生み出した植物をどうするかという段になった。
「この植物はどうしましょう?」
ティリルが迷うそばで、イリスが鞄をテーブルの上に置く。
「それなら、この子にお任せを!」
「ん……? この子とは?」
首を傾げるティリル。
そこに待ち切れなかったようで、ミラが鞄をよじ登ってくる。
「もきゅ!」
「うわっ!? 魔獣ですか……!」
「もっきゅー」
そのままミラは鞄からテーブルへと華麗に着地する。
「……きゅ!」
頭を上げて、褒めてアピール。
もちろんイリスはミラの頭を優しく撫でる。
「いい子、いい子……」
「きゅー!」
ミラはそのまま目の前にある花や草を、もっしゃもっしゃと食べ始めた。
「……食べてますね」
「私の魔法でできた植物が大好物なんです」
「うーむ、魔獣なら確かに……」
ミラはせっせと食べている。
それはもう、一心不乱に。
季節など関係なく。好き嫌いもない。
「もきゅー♪」
とにかく幸せそうにミラは食べている。
見ているイリスまで幸せな気分になる食べっぷりだ。
「よしよし……」
「とても大人しい子ですね」
ティリルはほんの少し、背を引いていた。
魔獣に対する警戒感があるのかもしれない。
「そういえばティリル様は、魔獣に対して何かご存じですか? 私も本に載っていることしか知らなくて……」
「私も知っている、というほどではないのですが……」
ティリルの眼差しにミラがもきゅっと首を傾げる。
ちなみに草を食べるのは止めていない。
「魔獣は吉兆あるいは変革の象徴だとか。貴族の中でも評価はかなり別れていますね」
「……ティリル様は?」
「私は……ルミエの故郷で慣れていますから。のしかかれたり、タックルされたり……」
おおう、なるほど。
それなりにハードなお付き合いをしていたようだ。
「きゅい」
ミラも『ご飯がなければ、はむはむしてるかもです』と言っている。
「ティリルは好かれすぎるのよね」
「羨ましいような……」
イリスの率直な感想にティリルが唇をへにょっと歪める。
「その子くらいのサイズならいいのですが。私よりも大きなサイズの魔獣にぐいぐい来られると……」
「あー……それはそうですね」
考えていなかったが、馬サイズとかになると怖いかも。
ペガサスとかユニコーンとか。
今のイリスだと、なすすべもなく押し潰されそうだ。
「もきゅ」
「アルミラージで特別なこととかは……」
「まぁ、そうですね…………アルミラージでよく知られているのは食いしん坊だということですね」
「…………」
怪訝な顔になるイリス。
「魔力を含んでしまった畑などに忍び込み、まぁまぁなやんちゃを」
「そ、そうですか……」
要は食害を引き起こすと。
「きゅい」
ミラは草を食べている。
しかも『食べるのが仕事ですから』という顔をしていた。
……まぁ、いいか。
賢くて可愛いしね……。
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