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虐げられた公爵令嬢、女嫌い騎士様の愛妻に据えられる~大公の妾にさせられたけれど、前世を思い出したので平気です~  作者: りょうと かえ
1-3 平穏な日々を、ウサギと一緒に

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20.バニラとアイスクリーム

 テーブルに咲き乱れる、種々の花。


「季節も無視できるのですね、しかもこんなに……っ!」


 ティリルが震える手を差し出して、イリスの活気づかせた花や葉、茎に触れる。


 ルミエもこれほどとは思っていなかったようだ。


「前のときは、ほんの挨拶程度だったのね」

「ま、まぁ……いきなりテーブルを緑だらけにするわけにも」

「あまり疲れていないようだし」


 ルミエから指摘され、イリスが頷く。それにティリルがはっとする。


「そうです! お身体は……大丈夫なので?」


 机の上を植物だらけにしても多少の疲労感を感じ始めた――ぐらいだ。


 50メートルを一回、走ったくらいか。まだまだイケる。


「問題ありません。どうやらあまり、この魔法は魔力を使わないようで」

「ううーむ……確かに、息も乱れてませんし」


 イリスの全身をティリルが上下に見渡す。


「そうね、ティリルが魔法を使うと一回でかなり消耗して息が乱れるのに」

「……それが普通です」


 幼少期、神官に見てもらった時も、そのように言われた。


 神官はローンダイト王国で魔法関連を司る人間だ。


 国内の魔力持ちを把握して登録し、一応の魔法訓練を施す。


(私の場合は必要なしってことですぐに帰ったけれど……)


 魔法を重視しないローンダイトの性質上、それ以上神官からは何もなかった。


 まぁ、大抵の魔法は使い道が極めて限定されている。

 

(クリフォードも、魔法が連続で使用できるのは自分とイリスくらいだって言ってたっけ……)


「しかも実体をこんなに出現させる魔法で、これは異例です。アデス公爵はなぜ、これほどの魔力持ちを……」

「アデス公爵だからじゃない?」


 ルミエの言葉にはアデス公爵への棘があった。


「ルミエ、それは……」

「構いません。私も父のことは嫌いですから」

 

 重要なことなので、イリスははっきりと言明した。


 この辺りをうやむやにしては今後に差し支える。


「父には育ててもらった恩がありますが、人間的・政治的には評価していません。今の父が良識ある人からどのように見られているのかも、わかっているつもりです」


 これも大切なことだ。

 

 今の自分はもう、アデス公爵家からは切り離された存在である。


 実際、レインドット大公家の妾になったのだから。

 第何夫人だかになるのか、そこまでは知らないにしても。


 もうあの公爵家とは関係ない。

 関係ないように生きていきたい。


 それが今のイリスだ。


 ティリルがしっとりと憂いある口調で、今までで一番静かに言った。


「……わかりました。その若さでのご苦労、お察します」

「あっ、いえ……すみません、生意気を言ってしまって」


 ティリルがふるふると首を触る。


「イリス様の魔法について、懸念はございません。イリス様の魔法があれば、大きな可能性の扉が開かれると思います」

「それじゃあ……っ!」

「ええ、バニラを早急に入手して……大儲けいたしましょう!」


 ティリルがぐっと拳を握るので、イリスもノリ良く拳を掲げた。


「はいっ!」

「良かったわ、話がまとまったみたいで」

「これもルミエ様のおかげです!」

「私は紹介しただけだから。にしても、バニラ……」


 そこでルミエは紅茶のカップを置いて、遠くを見る。


「あれはチョコレート用でしょう? 貴重で高価だけれど、そんなに需要があるのかしら?」

「バニラはアイスクリームに使うのでは?」


 イリスがきょとんとして答えた。


 実はバニラは最初、ココアやチョコレートに添加されるのが始まりだったのだ。


 アイスクリームのフレーバー、デザートに使われるようになったのはもっと先の話である。


 そしてローンダイト王国でも同じで、バニラをアイスクリームに使う発想はまだなかった。


 ティリルが腕を組んで、じっと考える。


「アイスクリーム……!?」


 そこでようやくイリスはボタンの掛け違いを認識する。


(まさか……!? バニラをアイスクリームに使う習慣がない!?)


 バニラ自体がローンダイト王国で普及していないので、気にしなかったが。


「アデス公爵家ではそのように使っているのですね? ふむ、大変面白い発想です……」

「あの香りをカカオ製品じゃなくて、乳製品に……なるほど……」


 ティリルが商人の目になり、ルミエも食通の目になった。


「……南の食通では、バニラは大変珍重されていると聞きます」

「厳重な会員制のところよね? 私も小耳には挟んだけれど」

「ですです。アイスクリーム、確かに……」


 ふたりはすでに色々とバニラについて、考え始めていた。


 よしよしとイリスは思う。


 自分にできることはたかが知れている。ふたりも乗ってくれたほうが、きっと上手くいく……!

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― 新着の感想 ―
そうです、土地をバニラで満たすのです! ミントも良いですぞ!
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