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夢をつなぐ糸

作者: 藤乃花

様々な絆でつながる糸を管理する『糸番人』……そんな役割を持つ人たちが、世界じゅうに沢山いる。


糸口結いとぐちゆいは糸番人の由緒正しい血を引く存在。


そして同じ糸番人の仲間として活動する春野真守はるのまもるは血こそ引いていないが、絆を結ぶ事に強く憧れ糸番人になる鍛錬を続けている。


ゆい真守まもるは通う学校は違うものの同じ十三歳という事で

休日には共に出掛ける事が多く、糸番人としての協力をする事も時折ある。 


「糸の色は虹色……つまり、糸の先にはあの人の魂が分裂した相手がいるという事になるわね」


女性の指に結ばれている虹色の糸を見て、ゆいから真守まもるへ説明が下された。


「魂が分裂したって事は……生まれ変わる前に中身が分かれたって事だな。

そんな事もあるのか……」


糸の種類について勉強中の真守まもるには、新たな発見があって毎日が刺激的である。


女性の指から伸びている虹色、同一魂どういつたましいの糸が少しだが弛んでいるのだ。


「あの緩んでる糸を結び直さないと、魂が離れてしまう。

離れた魂は前世の記憶を完全に忘れるから、もう二度と融合しなくなる……!」


「急いで糸の結び目を強化しないと、今後の生まれ変わりが出来なくなるぞ!」


事態は一刻を争う。


速急に糸の修繕にかかりたいが、空間の途中で見えなくなっている。


「結びたいけど、糸が途切れてる」


糸が見えないなんて大問題。


「こういう時は……」


「糸眼鏡を使えば解決するな」


糸番人に必要な道具、『糸眼鏡』、糸の先が見えるようになる眼鏡だ。


一見市販されている眼鏡に見えるそれをかけた二人は、糸の先を垣間見る。


「「……見えた!」」


女性とつながる糸の先は、現実ではない夢の世界へとつながっていた。


どうりで先が見えないわけだ。


ベンチに腰掛け読書に夢中の女性の側へ歩み寄り、ゆい真守まもるは、夢の空間に手を伸ばし糸を手繰り寄せた。


「ここよ、ここ」


夢の奥からする声は、どうやら女性の魂の片割れと思われる。


「夢にいるこの人の魂の半分……どんな人かしら?」


「声からして、向こうも女性っぽい気がする」


虹色の糸をようやく結び直したゆい真守まもるは、夢の空間から向こうの世界を覗き込んだ。


そこにいたのは……。


「糸を結び直してくれてありがとう」


「「!」」


「ビックリしたでしょ?

ワタシ、魂の片割れ……梨央リオと夢でつながってる夢の主、バクよ」


バク⁉」


「あの、悪夢を食べるって云われてる空想の生き物の……バクか⁉」


驚きを隠せないゆい真守まもるを前にしてバクはイタズラっぽく説明する。


「ワタシね、前世じゃバクの姫だったのよね。

当時は姫として夢の王国を守りたい気持ちと人間になりたい気持ちとがあって、神様にお願いしたら魂を分けて同時に生きる事を許されたの」


生まれ変わりの経緯を話すバクと女性の雰囲気はなんとなく似ている。


魂が同じだと、分裂しても心は似ているものらしい。


「なるほど、同時に両方に生まれ変わって今の生き方を楽しんでるのか」


「そういう転生の仕方もあるのね。

勉強になるわ」


バクはクスリと笑って二人にこう語る。


「ワタシも良い経験になったわ。

糸を結ぶ役目を持つ人がいるなんて、夢にも思わなかったわよ」


バクの言葉に糸番人のゆい真守まもるも笑みをこぼす。


「「バクだけに、夢にもなんて」」


「糸番人も魅力的な役割だわ……。

来世では魂を三体にしようかしら」


バクのお茶目な提案を耳にして、二人とも弾んだ気持ちで応えてくれた。


「こっちは大歓迎だよ‼」


「糸番人は、いつでもどこでも仲間を募集してるわよ!」



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