壮年編
「思えば随分長く一緒にいるよなぁ、俺たち」
「急になんだよ、ボケたのかハゲ」
「は、ハゲてねーし!まだハゲてねーし!!やめろよ!もうそーゆうのドキッとする年頃なんだよ俺はよ!」
「うるせー落ち着きねーな何歳だよテメー」
「衛がハゲとか言うからだろうが……!だからー、振り返ってみると付き合いなげーなと思って。小中高大、父さんの会社継いで、そんでもう何年だっけ。付き合いも長いし、年もとったなぁ」
「余計なこと考えてミスんなよソレ。そこそこ重要な書類だぞ」
「んなヘマしねえし。なー衛、おまえってこれからいつまで俺の側にいてくれんの?」
「は?」
「だからぁ、何年かしたら俺もこの職退くじゃん。んで名誉職とかする気ねーから、隠居すんじゃん。そんときも、側にいてくれんの?」
「……いるんじゃねーの」
「マジで?俺けっこーよいよいの感じになってっかもよ?」
「面倒は見ねえよ。てめーの世話はてめーでしろよ」
「マジかよ!えーどうしよっかなあ。ホームヘルパーさんしかねえかなぁ。俺の娘とかってなぜか衛に似てキツイから、俺の面倒なんてぜってーみてくんねーし…」
「……つーか、どんだけ先の心配してんだよてめえは。現実逃避してんじゃねえよ」
「いたっ!てめ、蹴ったないま!」
「ガタガタ騒いでっと次は刺す」
「刺す!?なにで!?……あ、その万年筆でね……って、それって俺がいつだったかあげたやつじゃね?まさか自分のあげたものが死因に繋がってくるとは…」
「……………はぁ。わかったよ、休憩な」
「おっさすが衛、わかってるぅ。ケーキもらったから食おうぜー!なあ秘書君、これを切ってきてくれるかい?もちろん君の分もあるからね!」
「ふふ、はい、承知いたしました」
「なあ衛、これからも側にいてくれよ?」
「だからなんなんだよおまえ、さっきから」
「んー、なんかふと思ったんだよな。これまでもこれからも、俺の隣には、衛がいてほしいなって」
「……」
「俺が死ぬときにさ、俺の視界に最後に映す人、誰がいいかなって思ってさ。死んだ嫁さんでも、子供たちでも、孫たちでも無いなって。お前がいいなって思ったんだよ」
「…そーかよ」
「そんで、俺が死んだあとお前は、俺の孫たちに囲まれて暮らすの。おまえ結婚しなかったもんな。俺の孫だから、たぶん絶対おまえに懐くだろ。子供達がそうだったもん。なぜ俺よりお前に懐くのかはいまだに納得いってねえけど……。はは、なんか変な話してごめん。やっぱ年取るとよくねーな、いらないことばっか考えて。あ、俺、ちょいお花摘みに行ってくるな」
「キメーな普通にトイレって言えよ」
「……望むところだ。が……最後のだけは聞けねえな」
俺は、何があっても生涯ずっとおまえの側にいるって、元々決めてんだよ。
おまえが死ぬときは、そのときは――
おしまい




