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すごく短い話  作者: たま
空とライオン(美形不良×元気チビっ子)
14/21

元気になってよかったけどな



喫茶Clannad 月曜午後7時



からんころーん


「……店長、俺ちょっと気分悪いから奥行ってるね」

「……」


ぱたん


「………瀧本くん、何かしたの?えらく嫌われちゃってるねぇ」

「……」

「店長さん、こんにちはー」

「ああ、君はこないだも来てくれた……恵庭くんだったかな。いらっしゃいませ」

「今日はこの落ち込んだライオンちゃんの保護者で来ましたー」

「はは、そうなんだ。なんだか一層元気なくしてるみたいだけど大丈夫かな?」

「……………」


「お待たせしました、ハニーラテとアイスコーヒーです。で、瀧本くんはミケに何したの?」

「…………」

「いやー俺らも『三池』って名字聞いて気付けば良かったんすけどねぇ。実は、三池くんの兄貴、俺ら《Leone》の敵対チーム《Cielo》で幹部やってるんですよ。

……つーのがわかったのが、昨日ちょーっと《Cielo》の奴らボコボコにしたんですけど、その中にその兄貴がいたんですよねー」

「……ふーん。ミケのお兄さんはいくつの子なの?」

「18だったかな?ね、獅郎……ダメだこりゃ、どんだけ情けない顔してんのお前」

「……………」

「…それでね店長さん、最悪なことに、ケンカしてるとこに偶然、三池くんが通りかかっちゃって。しかも、そんとき丁度、獅郎が三池兄を蹴り飛ばしたところで」

「わあ」

「………」

「すごかったですよ、三池くん。『ざけんなクソ金髪テメーぶっ殺すぞ!!』って、あんなに小さい体のどこから?ってくらいデカい声で怒鳴って。全体重かけたクソ重いワンパン獅郎に叩き込んで」

「あ、それで滝本くんの左のほっぺ湿布貼ってるんだ」

「地面に転がる獅郎に、『つぎ春風に手ェ出したらマジで殺す』って言って、憎しみしかこもってない目で睨んで。あ、春風っつーのは三池兄の名前です。で、自分よりデカい兄貴を負ぶって去って行っちゃって……。

それが、昨日の話。で、今日、です」


「…はぁ、なるほどねぇ」

「謝りに来たんですけど、やっぱ今さら取りつく島もないですよねぇ……」

「……」

「……う~ん、それはちょっと違うかなぁ…おそらくだけどね」

「え?」

「ちょっと僕に任せてみてくれる?」



10分後


からんころーん



「……ゲッ、瀧本!恵庭も! て、店長さん、どーいうことだよ!?」


「え?《Cielo》の三池…?」

「……」

「獅郎、そろそろなんか喋りなよ」

「……」


「来てくれてありがとうね、春風くん。おやおや、随分痛そうだね~」

「………そこに座ってる奴にやられたんすよ。…それはいーでしょ、さっき電話で言ってた『青空のことで頼みたいことがある』ってなんすか?」

「ああ、うん。春風くんさ、昨日ミケ…青空くんに、『ウザい』とか『邪魔するな』とか言わなかった?」

「………言ったけど」

「やっぱり。あのね、青空くんがそれで凹んじゃったからさ、慰めてあげてくれない?」


「え?」

「……」


「でも店長さんっ、あいつ俺のケンカに勝手に入って来て、勝手に手ェ出して…っ」

「うーん、まあ納得いかない部分もあると思うけど。そこは二人で話し合いなよ。ともかくね、青空くんはいま、ウチのお客さんに八つ当たりして、仕事をサボっている状況です。その原因には春風くんも関わっています」

「……ぐっ」

「奥の部屋にいるから。よろしくね?」

「………はぁ。マジめんどくせぇ…」


「…店長さん?いまの話……」

「あはは、そーいうこと。ミケは瀧本くんに怒ってるわけじゃないよ。まあ、春風くんを蹴ったことは怒ってただろうけど、昨日殴り返してるからね。

いま聞いてわかったと思うけど、ミケは春風くん大好きなんだよ。そんな春風くんにうぜーとか言われたショックを、君たちを見て思い出したんだろうね。だから今は、本当に具合が悪くて引きこもってるだけ」

「………本当か」

「あ、獅郎しゃべった」

「うん、大丈夫。いまに元気な姿を見せてくれるから、ご飯でも食べて待ってようか?何か作るよ」

「あ、じゃあ俺ナポリタンお願いしまーす」

「…カレーひとつ」

「はいよ~」



5分後



「てんちょー!お待たせしました!この三池、ちゃんと働きます!」

「おや、不良店員。元気になったの?」

「はい!春風が『サボってねーで働けよ』って言うので!いや~俺の春風はやっぱり天使だと思……あれ、まだいたのかよクソ金髪不良。さっさと帰れよ」

「オイ『俺の』とか『天使』とか変なこと言ってんじゃねーぞクソ空!!!」

「コラ春!!汚ぇ言葉遣いするんじゃねえ!」


「……」

「言い返すタイミングを失ったあわれなライオンちゃん、カレー一口ちょーだい」

「うるせえ。やらねえ」

「三池くんが獅郎に怒ってなかったの、ホッとする反面、『俺関係ないのかよ』って悲しくも思ってるでしょ」

「うるせえわざわざ言うんじゃねーよ」




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