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26.魔石の再安全検証と結果について

本日は諸事情により、3話分の更新です!

このお話はその3話目にあたるので、この話の前に2話分が更新されています。

まずはそちらからご覧ください。

なお、諸事情については本日最初の更新の話に書いてありますので、ご確認ください。(別に大した話ではない)



「あのね、ジュジュさんにお願いしたいのは、これなんだけど」


 そう言いながらジュジュに見せたのは、魔石粉パーツ二個と魔石十個の魔法道具と、ワーカード王国の粘土を使った魔石粉パーツ一個と魔石三個の魔法道具だ。


「こっちは、ナールさんがもってきてくれた王国の粘土で作ったパーツ。粘土以外は同じ材料を使ってる。そしてこっちはね。この前、魔石粉のパーツ一個で魔術が五回までが限度だって言っていたじゃない? だから、売り物にするつもりはないけれど、本当にこのパーツ一個で五回までの魔術が使用可能かどうかの検証をお願いしたいの」

「なるほどね。このパーツが二個付いているから、理論上では魔石十個までは大丈夫な可能性が高いわね。わかったわ! やってみましょう!」

「ありがとう! あとは材料差でどうなるのかってところで。もしもこの王国の粘土でも同じ効果なら……」


 大きな声では言わないが、ジュジュは察してくれたらしい。


「なるほどね。作り方さえわかってしまえば、王都内の魔法道具店でも同じものが作れちゃうってことね」

「そう! まぁでも製法を現時点では公開するつもりはないし、この前も言ったように購入制限もかけるから、そう簡単に同じような商品を作れるとも思えないし」


 そもそもその前に、結珠が作ろうとしている低価格魔法道具の需要がどれほどあるのかもわからないのだ。

 ジュジュの話を聞く限りでは、絶対にあるとのことだが、完全に未知数である。


「それにしても、王国の粘土で作ったっていうパーツ、何だか見た目が微妙ね……」

「……完全に土! っていう粘土で作ったからねぇ……。私の今の手持ち材料だと色付けも出来なくて、本当に土と魔石粉しか入ってないから」


 王国の粘土を使用して作ったパーツは、単純に魔石粉を混ぜて素焼きしただけなので、完全に黄土色のパーツで、ところどころ光っているのが魔石粉なだけだ。正直、割れずに成形出来ただけ良かったと思っているくらいである。

 こちらもUVレジンで全体をコーティングはしてある。

 素焼きをしてコーティングしたとはいえ、結珠が作った樹脂粘土製のパーツよりもいささか脆い気がしたので、穴を開けて丸カンを通すのではなく、ワイヤーで巻いて他のパーツと固定した。

 ドリルで穴を開けたら、その瞬間割れそうだと判断してのことだ。


「これもあくまでお試し用だから、仕方がないよね」

「そうね。じゃあ、預かるわ。結果については……仲間もいるし、一週間後でも良いかしら?」

「もちろん! いつでも大丈夫」

「ごめんなさいね。ちょっと仕事が立て込んじゃってて」


 少し前まで検証で毎日店に来てくれていたくらいだ。

 王立魔術師という立場である以上、恐らく毎日店へ訪れていた方がおかしかったのだろう。

 ジュジュは、大人数で店にいるのは迷惑になるからと、魔法道具を受け取った他の魔術師と一緒にすぐ帰っていった。

 店には結珠とナールだけとなった。


「あのネェちゃんの仲間ってことは、あいつらも王立魔術師なのか?」

「そうだと思います。ジュジュさん、同僚だって紹介してくれたから」

「そうかい。じゃあ、安心だな」

「ジュジュさんが変な人連れてくるとは思えないですし、心配しなくても大丈夫ですよ」


 名前は一応聞いたが、正直もうあまり思い出せない。

 一週間後にまた聞く羽目になるかもしれない。申し訳ないが、日本風ではない名前はなかなか覚えられない。


「そっちの心配じゃねぇんだけどな」

「どういうことですか?」


 ナールの心配の意図がわからず、首を傾げる。


「魔術師の中には、魔法道具の研究をしているヤツもいるのさ」

「え? 作れるのって、魔女とかだけじゃないんですか?」

「そりゃ作るのは魔女だけどな。古くから伝わる国宝級の魔法道具だってあるからな。研究をしているヤツもいる。嬢ちゃんが作るのは単純明快なものが多いが、国宝級の魔法道具は作りも複雑で、どうやって作ったのかとか、どこをどういじったら、どういう効果が得られるとか、毎年魔術論文を書いているヤツもいるぞ」

「へぇ……。そういうものなんですね」


 まだまだ結珠が知らないことは多い。

 祖母の日記も最近開いていないので、この店がどういう立場なのか、理解していない部分も多いはずだ。

 これはジュジュが再びやってくるまでの間に、もう一度日記を見た方が良いかもしれないと決意する。


「まぁ、いいか。そうだ! 頼まれてた魔石、持ってきたぜ!」

「ありがとうございます! お金の準備してきますね」

「別に急がなくていいぜ。先に検品してくれや」

「はーい!」


 ジュジュの仲間がいたら、ナールは魔石を出せなかっただろう。材料についても話さなくてはいけなくなったはずだ。

 恐らくジュジュはそれも見越して早々に帰ってくれたはずだ。


(……ジュジュさんには頭が上がらないや。ちゃんとお礼、考えないとなぁ……)


 そうぼんやりと考えながら、結珠はナールが持ってきてくれた魔石の検品をした。




 それから一週間後。

 妙に明るい四人の仲間を連れ立って、ジュジュが店へとやってきた。


「店主! すごいな、これ! 三回しか魔術が使えないのは残念だが、質はいい! 初心者魔術師にはうってつけだ!」

「ああ。いざってときのために俺たちも予備で持っておくべきだろうな」

「確かに! これひとつ持っているだけで安心感が違うかも」


 口々に感想を言われて、結珠は腰が引けた。興奮した四人が同時に迫ってきたので、さすがに驚く。


「暴発の危険性とか、何か不都合とか感じたりしませんでしたか?」


 引き気味ながらもそう尋ねると、四人は首を横に振った。


「いや? 特に感じなかった。魔術の威力も申し分ないし、本当に残念な部分は三回しか魔術が使えないことだな」

「俺たちは普通の魔法道具を使い慣れてるからな。初心者魔術師の初仕事とかで使うには十分だろう。引き際もわかりやすいし、仕事の失敗率も下がるんじゃないか? むしろ三回でいかに効率よく仕事をこなすかの計画も立てやすくなるだろう」

「そうだな。恐怖からむやみに魔術を連発して窮地に陥るのを防げそうだ。三回だけってのが合言葉になりそうだな」


 さすがベテラン魔術師たちの意見だ。

 ちなみにナールが心配していたような、材料についての言及はなく、問われたのは、本当に検証協力のお礼で魔法道具を貰ってもいいのかと念押しされたくらいだ。

 空っぽになった魔力を込め直すのと、もしもデザインが気に入らないのであれば、デザインを変えて作り直すと提案すれば、四人の魔術師たちは「こういうのだといい」だとか「むしろこのままのデザインでいい」とか、やいのやいの言って帰っていった。

 そのままでいいと言った人とデザインを変えてほしいと言った人は半分だったので、ふたつだけ希望のデザインに作り替えることになった。

 ジュジュは、結珠にまだ用があるからと、今回はひとりだけ店に残った。


「そういえば、ユズ。魔力の込め方、わかったの?」


 痛いところを突かれて、結珠は詰まった。


「実は、まだなんだよねぇ……。全然わからなくて。意図的にやろうとすると、相変わらず何も起きなくて。作って、置いておくでしょ? そういうのは、ジュジュさんは綺麗に魔力入っているって言うし……。どう思う?」

「どう思うもこう思うも……無意識にやっているってこと?」

「多分そういうことなんだと思うけど、自分でも全然わからないんだよね」


 まだまだ前途多難である。


「とりあえず、今日預かったお礼の魔力入れは、どうしようかなって考えているんだけど」


 魔力の込め方について、まだ自分の中でやり方を確立できてないので、現状店としては、魔力入れの依頼は受けていない。

 でも、新しい魔法道具を作って検証をお願いしてジュジュたちに渡したものは全部魔力が入っていると言われるから、本当にわけがわからない。


「いつもの通りにしておくしかないんじゃないかしら? もし良かったら何日か後に私が来て、お礼品に魔力が再注入されているか確認しましょうか?」

「いいの? 助かるー! ホントありがとう!」

「いえいえ。さて、とりあえず私が別にユズから預かった分の話をしましょうか?」

「そうだね。どうだった?」


 ジュジュがひとりだけ残ったのは、それが本命だ。

 魔石粉パーツ二個と魔石十個の魔法道具と、ワーカード王国の粘土を使った魔石粉パーツ一個と魔石三個の魔法道具の検証結果について。

 ポーチから預かった魔法道具をジュジュが取り出す。


「これ……どうしたの!?」


 ジュジュが取り出した魔法道具はひとつが壊れていた。



というわけで、いきなりの1日で3話更新にお付き合いくださり、ありがとうございました。

遅筆な私には、なかなかハードでした。(笑)

ぜひともプレゼント代わりに、評価を入れて頂けるとすごく喜びますw

来週からは通常更新に戻ります。

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