24.魔石の販売価格
というわけで、先週意味深な言葉を残していきましたが、大した話ではありません。
Happy BirthDay to MEEEEEEEEEEEE ~~~!!!!!
っつー、話です。(笑)
えー、本日3/10は筆者の誕生日です。おめでとう、自分!
たまたま更新日と誕生日が被ったということで、今日は先週の宣言通り、3話分更新しようと思います!
まずは1話目です!
翌日、結珠は少し寝不足だった。
前の晩に、ジュジュとナールと色々なアイディアを出して話が盛り上がってしまったのだ。
二人が帰ったのは、こちらの時計で夜十一時を回っていた。
そこから片付けをして風呂に入ってとやっていたら、寝たのは午前一時を過ぎていた。
あくびを我慢しながら店番をする。こういう日に限って、客足が途絶えていて、店が暇だ。
何もしないでいると居眠りしそうになるので、濃いめのインスタントコーヒーをいれて、作品の作製作業に入る。
UVレジンでコーティングした魔石粉入りの粘土パーツを手芸用の電動ミニドリルで穴を開けて、丸カンを付けていく。こうしておけば、あとで組み合わせるときに楽だ。
粘土パーツの作業を終えて、今度は小さな魔石にTピンを付けて余った針金部分を丸くねじっていく。
ナールに魔石をビーズ状にしてもらったので作業が楽だ。今までの魔石はワイヤーラッピングをしなくてはいけなかったので、そのデザインを考えるのも大変だったし、今日みたいに寝不足のときは、単純作業は何も考えずに出来るので助かる。
結局この日は店は混雑することもなく、予定以上の作業を終えられた。
そういえば、話が盛り上がりすぎて、ジュジュとナールが次にいつ来るか聞くのを忘れた。
まあでも、あの勢いの感じだと、今日検証をして、また夜に店へと来そうな気配である。
今日は夕飯は何も用意していない。昨日の盛り上がり方だと今日も検証結果を踏まえて、話が盛り上がりそうな予感はある。
もうそろそろ店の閉店時間だ。
何か買いに行こうかなとも思ったが、その間に二人が来て、店に入れないからと帰ってしまったらと思うと出かけるのも躊躇ってしまう。
どうしようかと迷っていたら、店の扉が開いた。
振り返ると、予想通り、ジュジュとナールがいた。
「あ。二人ともいらっしゃい! よかった! 昨日、何の約束もしていなかったから、いつ来るかなって思ってたの」
「私たちもすごく興味があったから、なるべく早く検証して、ユズに伝えたかったから、早速検証してきたわ!」
ジュジュもナールも昨日よりは落ち着いている。
魔術が使えることがわかっているからこそ、昨日ほどの驚きはなかったのだろう。
むしろどういう風に魔術が使えるかということに重点を置いている分、昨日の検証よりもシビアだったはずだ。
「で、どうでした?」
「待って待って! 気になるとは思うけれど、食事をしながら話をしない?」
そう言って、ジュジュは籠らしきものを見せてきた。
ナールも同じような籠を持っていて、籠からは何やら瓶もはみ出ている。
「夕飯、買ってきたの。昨日ごちそうしてくれたお礼にね」
「え? 本当? 嬉しい! じゃあ、お皿とかグラスとか用意するね!」
まさかの異世界料理だ!
ジュジュたちが普段どんな食生活をしているのかも気になる。
結珠はいそいそと準備をした。
ジュジュたちは色々なものを買ってきてくれていた。
肉の串焼きやクレープかラップサンドのような食べ物、ドイツパンのような少し固めのパンに、ミートボールのような肉の塊や見たことがない形の焼き野菜もある。
大き目の皿と、カッティングボードにパン用の包丁と昨日と一緒のカトラリーケースも持って戻った。
瓶はもちろんワインだったらしい。ナールに昨日のお茶用のカップでいいと言われて、店のミニキッチンに置いてあったマグカップを渡す。
まだほんのりと温かい料理を囲み、三人で食事を始めた。
「あ、おいしい! 見たことがない野菜だけど、これ何?」
見た目は完全にピーマンの丸焼きだが、食べてみると味は非常にかぼちゃに似ていた。とても甘い。
「それはシーカムって野菜よ。焼くと甘くておいしいの。ユズの世界にはないの?」
「えーっと、この見た目と同じような野菜はあるけど、味が違うかな? 味で似てるのは別にあるから、何かちょっと混乱してる」
「そうなのね。似てる野菜、今度食べてみたいわ」
「いいよ。じゃあまた機会があったら料理するね」
ピーマンなら肉詰めとかがいいかなと考えながら、三人でやいのやいの言いながら食べる。
一通り食べ終えて、ナールが酒飲み状態にシフトして、ようやく検証についての話になった。
「ユズも気になっていると思うけれど、魔法道具の検証結果ね」
ジュジュが結珠から預かった魔法道具を返却しながら説明を始めた。
「結論から言うと、こっちの三つは魔術の威力に差はなし。そして魔石を付けた数だけ魔術が使えたわ」
そう言いながらジュジュが言った三つは、魔石粉パーツ一個と魔石五個、魔石粉パーツ二個と魔石三個、魔石粉パーツ三個と魔石三個だった。
要は魔石粉パーツの数を増やしたところで、特に変化はなかったらしい。
「そして、こっち。これは魔術を五回使ったところで六回目が不発に終わったわ。不発になってから魔石の方は魔力を感じたけれど、こちらのパーツからは今まで感じていた微量の魔力が一切感じられなくなったから空っぽなんだと思う」
残り一個の魔石粉パーツ一個と魔石十個については、五回の魔術で終了したらしい。
「あくまで私の推測だけれど、こっちのパーツの限界値が魔術五回ってところなんじゃないかしら?」
「なるほど。でもその理屈で言えば、魔石粉パーツを増やしたらその分魔術を使えるってことになるかな?」
「理論上はそれで可能かもしれないけれど、結局魔石二個で金貨一枚なんでしょう? やっぱり魔石十個を付けるのはあまり現実的ではないと思うわ」
「俺も魔術師のネエちゃんの意見に賛成だな。あくまで価格面を抑えたいんなら、魔石三個程度が妥当だ」
もし、実際に売り出すとして、そもそも売値をいくらに設定するつもりなのかとナールに問われて、結珠も唸る。
「うーん。とりあえず赤字にならない程度……。魔石三個の魔法道具で金貨二枚程度かな? って思うんですけど」
「本当にぎりぎりの線だな。材料費の……しかも魔石だけで金貨一枚と銀貨五枚だ。他の部分は? 大体いくらだ?」
「えーっと……魔石粉パーツが材料の粘土が一袋……大体、半銀貨? 一枚程度ですね。それでパーツを作ったとして、多分五十個以上は作れると思う」
「本当か、おい。あんなにすごいくせにそんなに安い材料なのかよ」
あまりの価格にナールも驚く。
結珠にしてみれば、そんなものだろうという感覚だが、普通サイズの魔石一個で大体金貨三枚、結珠の世界で三十万円となると、確かに千円の材料は安すぎるだろう。
「うーん。まぁ有名な材料で種類も豊富に出てますからね。だから比較的安いです」
話をしながら、頭の中で各パーツの価格を計算していく。
「そうですね……。魔石百個で加工費含めて金貨五十五枚。魔石三個で一つの魔法道具。そこから必要な他のパーツの金額が……三十個の魔法道具を作ったとして総額で……大体銀貨一枚でもおつりがくるかな?」
「は? そんなに安いのか?」
「はい。ネックレスに使っているこのチェーンも一度に大量購入しているから、魔法道具ひとつにつき大体銅貨一枚から二枚くらいの価格だし」
「…………」
さらに思っていた以上に安かったのだろう。ついにナールは黙った。
「だから、金貨二枚で販売したとして、三十個売ったら金貨六十枚? 利益としては金貨五枚にも満たないけど、他で補填すれば何とかなるかなーって。そもそも利益を求めてこういう魔法道具を考えたわけじゃないので」
「ユズが良いなら、私が言えたことじゃないけれど、そんな利益で大丈夫なの?」
「うーん。すごく正直に言ってしまうと、私の世界でも、大体一ヶ月の給料って金貨二枚から三枚なんだよね。だから、この魔法道具に関して言えば、利益が金貨五枚弱でも全然問題ないというか……何というか……」
もちろん店の維持費などを考えたら、それだけだったらやっていけないのは事実だ。
けれど、あくまで商品の一部であり、他は高額商品。全体のバランスからすれば、問題はない。
結果的に、ジュジュやナールの心配について、結珠にしてみたら些細な事になってしまう。
「いやもう、オマエの好きにやったらいいんじゃないか? 色々言ってみたが、結局俺の領分じゃないしなぁ……。俺はオマエが加工依頼するんであれば、受けるだけだ」
あ、ナールは考えるのを放棄したな。と結珠は悟る。
無理もないだろう。恐らく二人とも、結珠は自分たちの常識とは異なる世界で生きていると実感し始めている。
「もう! 昨日まであんなにノリノリで相談に乗ってくれてたのに!」
「……そんなこと言われても、オマエもう決めてるんだろう? 魔石三個付けた、この魔法道具を金貨二枚で売るって!」
「……まぁ、そうですけど」
何とかなるとわかってしまった以上、やってみたいと思ったのは事実だ。
「だったら俺から言えることはやっぱり何もねぇよ! ただ、もう少しちゃんと安全検証はした方がいいとは思うがな!」
「私もそう思うわ。まだ二回しか試していないもの。もう少し耐久性とか色々試した方が良いと思う」
ジュジュにもそう言われて、結珠は頷いた。
「じゃあ、ジュジュさんももうちょっと協力してくれる?」
「もちろん構わないわよ。もし結珠が良いのならば、私の仲間たちにも声をかけてみる? 同僚なら、多分悪いこともしないし」
「わっ! 助かります! ぜひぜひ!」
こうして、本格的に結珠の新しい魔法道具が実際の販売に向けて動き出していった。




