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22.魔石と魔女と魔術師の関係性



 三人で食事を終え、改めてお茶を淹れたあと、結珠は作業を開始した。


「おいしかったわ! 結珠は何でも出来るのね」

「そういうわけじゃないけど……。まぁ単純に料理が好きなんだよね」


 煮込み料理は結珠の性格的に合っているだけだ。

 コトコト煮込んでいる間に、別の作業に集中出来る。

 圧縮鍋を買おうかとも考えたが、考えた当時は実家暮らしだったから、自分の都合でキッチン用品を増やすわけにはいかなかったし、そもそも長時間作業する間に煮込み料理を……といった形だったので、圧縮鍋で時短しても意味はないと思ってやめたのだ。


「煮込んでいる間に、作品作りをするって感じだからね」

「なるほどね。本当にご馳走様。今度何か御礼をさせてね」

「大丈夫! こうやって検証にも付き合ってもらってるし、その一環みたいなものだから」

「まぁ、それはそれ、これはこれだな。次来るときには何か焼き菓子でも買ってきてやるよ」

「え? いいんですか?」

「ん。その代わり、また何か食わせてくれ」

「私も! あ。あんまりお店で飲み食いしない方が良いかしら?」

「お客さんがいないんならいいんじゃない? 必要があれば、商品も片付けるし」


 ジュジュとナールはお茶を飲みながら、結珠は作業の準備をしながらの会話だ。


「さて、とりあえずデザインは無視して、各パーツを付けますか」


 小さな魔石と魔石粉のパーツ、作業用工具をカウンターの上に置いて、ジュジュの隣に座る。


「どうしよう。とりあえずネックレスとして、単純にこのパーツと魔石五個付ける感じでいいかな?」

「そうね。色々組み合わせてみたら? こちらのパーツもいくつもあるし」

「だな。オマエだってどういう理屈になってるのかわからないんじゃ、色々な組み合わせで作って検証するのがいいだろう」

「そうだね。何度も来てもらうのも悪いし」


 三人で話し合って、結局さらに四つの試作品を作った。


 ・魔石粉パーツ一個と魔石五個

 ・魔石粉パーツ一個と魔石十個

 ・魔石粉パーツ二個と魔石三個

 ・魔石粉パーツ三個と魔石五個


 といった感じである。とりあえず魔石粉パーツと小さな魔石の組み合わせで魔術が発動しているのはわかっている。

 三人で話し合っている間に、恐らくはこの魔石粉パーツがカギになっているのではないかと推論を立てた。

 であれば、魔石粉パーツも数を増やしたら何か起きるかも……というジュジュの提案に、こういう組み合わせとなった。


「まぁ、でも魔石十個も付けたら、材料費の値段としてはそれだけで金貨五枚だから、普通の魔法道具を買った方がいいな」

「ナールさん! それは言わないでよ! 単に検証のためだから。実際に売るんだったらこんなに付けないよ」


 身も蓋もないナールの言い分に、結珠もわかっていると抗議する。


「魔石の数だけ魔術が使えるって理論の魔法道具だとしても、とりあえず魔石は五個くらいが限界かな……。それでも金貨二枚半分の金額だし」

「二枚半って……。金貨二枚と銀貨五枚だろ?」


 ナールに訂正されて、結珠は首を傾げる。


「あ、そうなんですね。というか、私そっちの通貨がどうなってるのか知らないかも」

「はぁ!? あー、そうだな。この店の商品、最低価格が金貨からだな」

「え? ユズ、通貨がわからないってどういうこと? そういえば、最初に私がお店に来たときも変な価格言っていたわね?」


 しまった! ジュジュたちの世界と結珠のいる日本がどういうわけか店を通して繋がっているということは言っていなかった! と気付いたときには遅い。


「あー、えーっとえーっと……」


 結局誤魔化しきれずに、結珠は二人に説明するはめになった。






「……この店、異世界にあるの?」


 意外に順応性が高い。

 結珠の拙い説明に、ジュジュはあっという間に理解をした。


「そうなるのかなー? おばあちゃんもあんまり詳しい店の仕組みはわかってないって……残されてた日記にはそう書かれてたんだけど」

「なるほどなー。そう言われるとその魔石粉パーツに使われている白い粘土みたいな材料があるのも説明が付くな」

「……何で二人ともそんなすぐに納得できるの?」


 もっと驚かれたり、別の反応をされると思っていた。

 あまりにもあっさりと納得されて、結珠の方が戸惑ってしまう。


「どこまで本当の話かわからないけれど、たまに迷い人なんて呼ばれる異世界人が現れるなんて話も、私の国にはあるのよ」


 おお、それこそ結珠が知る異世界転移というやつではなかろうか!

 一人で感心していると、ナールも呆れたような顔をみせた。


「ばあさんも浮世離れしてたし、オマエのわけのわからない言動見てれば納得も出来ちまうわ」

「でも意外ね。ユズの世界には魔術がないなんて。でもその割にはユズもすぐに納得していたように見えたけど」

「それは、創作話でそういうのがいっぱいあるから。でも私の世界の創作話で魔法とか魔術は大体が本人がそういう力を持ってて、自分自身の力を使うって感じが多いんだよね。ジュジュさんたちみたいに、他人に魔力をもらってそれを使うってのはあんまりないんで、やっぱり空想は空想で、現実はそういうものなんだとは思ってたけど」

「……昔はユズが言うように、魔力を持った人間はたくさんいて、自分自身が持っている魔力を使っていたらしいわ。でも、あるときから魔力を持った人間が減少傾向になって、膨大な魔力を持った人たちから魔石を通じて魔力を分けてもらうようになったのがきっかけみたい」


 それがジュジュたちの世界での魔女や魔術師たちの分かれ目になったらしい。

 魔力だけを求められる魔女や魔法使いたちは、いつしか自分たちが魔術を使うことを忘れ、分け与えられた魔力を魔石を介して魔術を使う魔術師たちは、自身から魔力が失われていった。


「そうなんだ。この店もおばあちゃんのおじいさんって人が作ったものらしいんだけど、どういう経緯で店が出来たのか、おばあちゃんもよくは知らないらしいの」

「というか、どうやって異世界にあるこの店と私たちの国が繋がったのかしらね?」

「……わかんない。多分、店の防犯機能とかとも関係はあると思うけど。単純に害あるものを排除するってだけじゃなくて、多分だけど私の世界の様子をジュジュたちの世界の人たちに見せないっていう配慮もあるのかなって」

「なるほど。そんなに違うの?」

「……多分? もちろん戦争とかないわけじゃないけど、かなり違うと思う」


 乗り物や食文化、何もかもが違うはずだ。

 そもそもナールは粘土は土そのものだと教えてくれたので、そういう手芸用品の類はまずないだろう。

 それに先程のアクセサリーの話も然りだ。ジュジュたちの世界ではフェイクジュエリーを身に付ける習慣がないようだ。


「悪意のある人は、その違いを利用して何かやってやろうって思ったりするんだと思う。だからこそ、あくまで二つの世界が交わるのはこの店の中だけ。そういう作りなんじゃないかなーって」


 結珠の説明に、二人は納得がいったらしい。二人とも真剣な顔で頷いた。


「話してくれてありがとう。誰にも言わないわ」

「ああ。俺も言わねぇ。そもそもお得意様になってもらわねぇと俺も食いっぱぐれるしな」

「いや、ナールさんは魔石行商人なんだから、他にも取り引きしてくれるところはあるでしょう?」

「そうでもねぇぞ。この店と取り引きするまでは、結構色んな店とも揉めたしな!」

「え? そうなんですか?」

「ああ、上質の魔石だったのに、買いたたかれそうになったりな! どこの世界にもそういうやつはたくさんいる! その点、この店はばあさんの頃から安心だ。ぜひともよろしくしたい!」

「こちらこそです! 多分わからないこと、たくさん出てくると思います。どうか色々教えてください!」


 結珠が頭を下げると、二人は笑って了承をしてくれた。



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魔石粉は粘土に混ぜて使ってるんだとおもってた
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