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おばあちゃんと孫と魔女の店 ~ 祖母から相続したお店がとんでもなかった件について ~  作者: 秋本悠
第一部 祖母から相続したお店がとんでもなかった件について
12/55

12.弁護士との契約 ~ 祖母から相続したお店がとんでもなかった件について ~



 店を再オープンさせてから半月。

 結珠は土井の弁護士事務所を訪ねていた。

 契約書が出来上がったという知らせを受けたからだ。



「ご状況はどうですか?」


 契約書を差し出されながら土井に問われ、結珠は苦笑した。


「何だか夢みたいな話なんですけど、店の商品の大半が売れてしまって、今はまた閉めてます」


 新たに商品を作らないと店を開けられないと結珠が告げれば、土井も苦笑した。

 たった半月の間に、一枚十万円と等価の金貨が結珠の店には大量にある。正直数えるのも怖かった。

 今はまだあの黒い箱に入れて、こちらの通貨に変換はしていない。

 金貨を盗まれるのも怖いが、日本円で持っているのはさらに怖い。


 この半月で、祖母の日記もさらに読み込んだ。

 色々と防犯がすごかった店だが、これはあくまであちらの世界で通じるものだということ。

 実際に店と家があるこの日本では通用しないので、あんな古い家に大金があると知れたら、こちらでも空き巣の恰好の餌食である。

 それを理解した瞬間、手持ちの金貨が急に怖くなった。

 だからといって、常時店を開けて、こちらの世界の人間が入れないようにすればよいというわけでもない。

 今はとにかく金庫に入れて金貨を見ないふりをしている。

 そんな中、土井からの連絡が入り契約書の手配が整ったと言われ、いそいそと来たというわけである。


「いかがでしょうか。この内容であれば、お互いに不利益はないかと思います」


 結珠は渡された契約書の内容を読み込んだ。

 守秘義務等も問題なさそうで、結珠は三度読んで頷いた。


「大丈夫です。こちらでお願いいたします」

「承知いたしました。今日はお願いしていた実印はお持ちですか?」

「あ、はい。持ってきています」


 土井から朱肉を渡され、結珠は三枚の契約書に自分の名前を書き込み、その横に実印で判を押した。

 そのまま少し待つように言われ、土井の様子を伺っていると、土井も金庫から判を取り出し、サインをして判を押した。


「こちらで契約は完了です。一枚は結珠さん、こちらは私、もう一枚は税理士分となります」


 そう説明されて、結珠に一枚の契約書が手渡された。


「大事に保管をお願いいたします。場合によっては貸金庫を借りられることをおすすめします」

「そこまでしないとダメですかね?」


 自宅で保管しようと思っていた結珠は、土井の言葉にひるんだ。


「何かセキュリティ対策をしていますか? 正直、古い家と店です。そこにセキュリティサービスを利用するとなると、店に価値のあるものがあると宣伝するようなものです。璃奈さんも貸金庫を利用されていましたので、その方が良いかと思います」


 あとは銀行口座についてもアドバイスを受けた。

 璃奈は年齢的に仕方がなかったが、結珠であれば、銀行口座も通帳管理ではなくネットバンキングに切り替えた方が良いなど。

 すでに結珠の銀行口座は通帳はなくネット管理だと告げれば、土井からさらにアドバイスされた。


「日々使用するもの以外で高価なものがあれば、出来る限り別の場所での保管をおすすめします。すでに店の品がかなり売れたとなると売り上げもかなりでしょう。振り込みへ行く際はご注意ください。店の売り上げについては、毎月税理士事務所へネット経由で報告出来るように手配してありますので、もしもわからない点がありましたら、私にご連絡ください」

「何から何までありがとうございます。助かります」

「いえ、その分ちゃんと報酬は頂きますので、問題ありません。どうぞこれからも末永くよろしくお願いいたします」

「こちらこそお願いいたします」


 和やかに契約を終えたが、土井はまだ話があるらしい。出されたお茶をすすめられて、結珠が一口飲むと、土井は状況について問うてきた。


「ずばりお聞きしますが、売り上げはどうですか?」

「あー、えーっと……怖いくらいです」


 具体的な金額を告げるとさすがに土井も絶句した。

 正直、ハンドメイド作品の売り上げ金額ではない。


「ただ、今のところメインの材料とか、祖母から受け継いだものを使っているんです。これが無くなったら自分で仕入れをしないといけないですし、メインパーツの仕入れ先については、祖母の日記を見ても『相手が店に来るまで待て』としか書いてなくて、その人がいつ来るかもわからないしで、まだまだわからないことだらけです」

「なるほど。そうなると今はまだ一度もメイン材料の仕入れを行ってないということですね。でしたらそういう現状であると、こちらから税理士事務所には連絡を入れておきます」

「ありがとうございます。よろしくお願いします」


 結珠が頭を下げると、土井も笑った。


「璃奈さんのご恩に報いるためにも、誠意をもって仕事をします。どうぞ信頼ください」

「はい!」



 どうなることかと思ったが、祖母の誠実な対応がこうして結珠を助けてくれている。

 遺産以上のものを受け取っていると結珠は感じた。




 まだまだ始まったばかりの、祖母から受け継いだ結珠の店。

 もちろんこれからも困ったことはたくさん起きるだろう。

 でも好きで始めたことだ。

 大好きだった祖母の店を守るために、結珠はこれからも頑張っていくのだ。



これにて第一部完です。

来週から第二部開始です!

とりあえず不定期更新にならないように頑張ります。

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― 新着の感想 ―
最近読み始めましたが……貸金庫の信用度がまだあった頃ですねぇ
物語が現代社会ベースだと異世界貿易の換金問題は高い壁だよなあ。 某S氏と文鳥でもそのあたりは裏社会にコネクションのあるロリババアに丸投げだったし。
やはり換金問題や税金問題など無理があるな。 資産がそんないきなりハンドメイド作品の販売で増えていったら間違いなくおかしい。ばればれで普通に調査される。
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