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龍哉と美名の出会い…。そして…

~ 龍哉 視点 ~


 『りゅーくん!中学生なのに、またタバコ吸ってる!背伸びなくなるぞ!』


 『うっせーぞぉ!好きで吸ってんだからいーべ!』


 紫煙をくゆらせる俺に、プンプンと頬を膨らませて怒る美名。俺はそんな美名の言葉に照れ隠しの悪態をつきながらも、心のどこかでその優しさに救われていた。荒れていた俺を真っ直ぐに見て、本気で叱ってくれる…。そんな奴は、世界で彼女だけだった。


 それから、数年が経ったある日のことだ。


 『最近、どした?体調でもわりぃーんか?』


 顔色が優れない彼女を気遣うと、美名は意を決したように唇を震わせた。


 『りゅー?言いにくいんだけど…。私…、妊娠しちゃったみたいなの…。堕ろそうか悩んでいるんだけど…。私の親に言いづらいし…』


 その言葉を聞いた瞬間、俺の腹は決まった。


 『美名!産んでくれよ!俺、仕事頑張って食わしていくから!!子供も一生かけて守ってやるからよ!』


 まだ16歳のガキだったけど、好きな人の腹に新しい命が宿ったと聞いて、震えるほど嬉しかった。美名も、子供も、俺が絶対に幸せにしてやるんだ…。だが、現実はそう甘くはなかった。


 『お父さん!お母さん!なんで!?彼もしっかりやっていくって言ってるでしょ!?』


 『龍哉君はまだ未成年だろ…。そんなんでやっていけるのか!?』


 『せめて、2年後…!貴方が18歳になって、しっかり給料を稼げるようになったら…』


 美名の両親は、美名に対して怒りをぶつけている。俺が不甲斐ないばかりに。俺がまだ未成年だからか? んなの歳なんか関係ねぇよ。俺はそこら辺のチャラついた奴らとは違う!背負うモンをこうして持っているんだ!  だから俺は、建築関係の内装の仕事も始めた。夜も寝ないで、休憩も惜しんで毎日毎日必死に働いた。でも、信用ってやつはすぐには手に入らねぇ。


 『分かりました。2年後、イッパシになって美名を支えるまで俺は努力してやってやります!見ててくださいっ!』


 啖呵を切ったその日から、俺は地獄のような2年間を走り抜けた。休みなんて一日も取らず、必死に仕事を覚えた。親方に怒鳴られ、殴られ、悔しさで枕を濡らす夜もあった。でも、美名や美名の両親に言っちまったんだ。男に二言はねぇ。やる気だけは誰にも負けなかった。


 2年が経ち、俺は一人で現場を任せてもらえる職長になっていた。俺より一年も先に入った先輩なんざ、今じゃ俺の下で手元テコをやってるくらいだ。


 『十川!!脚立にスライダー流して足場作っとけや。それ終わったら236(サブロク)で6枚出しとけ。後、46(シロク)で1枚作っとけ。これドア上な』


 『分かった。236が6…46が1…、にしても龍哉はすげぇな…』


 『いいから早くすれや。今日中にここたたく(終わらせる)ぞ?終わらなかったら残業だからな』


 守るモンの為に、歯を食いしばって頑張った…。そして、美名の両親との約束の日。俺はようやく認められたんだ。


 『龍哉君の本気伝わったよ…。娘を大事にしてやってくれ?』


 『貴方達の子供見ていると、私達まで幸せになるわ…。そういえば子供…、長男の名前はまだ聞いてないのよね?』


 実は、長男の名前だけは美名から聞いてなかった。色々と案を出したし、二人で夜遅くまで語り合った。でも美名は、「ちゃんと正式に2年後の日、結婚式を挙げたら、どっちの名前にしたか教えてあげる」と約束していたんだ。あれは、美名なりの可愛い意地悪だったのかもしれねぇ…。


 それから結婚式の少し前。美名は籍を入れて間島の姓を名乗るようになり、さらに「もう一人、子供がお腹にできた」という最高のニュースを聞かされた…。


 幸せの絶頂だった。それからすぐだったんだ…。俺が異世界に飛ばされたのは…。


 その後は、どうなったか分からねぇ…。自分の子供の名前すら聞かされず、生まれたばかりの顔を見ることもなく…。  いつかまた戻れる日が来ると信じて。自分に老化停止の魔法をかけてまで、若い姿のまま、いつか美名や子供達に会えると信じて、信じて、信じて、信じて、信じて戦い抜いてきたのに…。


 「そんで、この仕打ちかよ…」


 現代に戻ってみれば、俺の最愛の女、美名は……俺の息子である洋一を苛めていたクズガキどもに殺されていた。


 「まじ許せねぇ…。徹底的にいたぶってやんぞ…」


 くそが…! ぁあああっ!? ざけやがれっつーの! っんだらぁっ!!  体の中で、抑えきれない魔力が暴れ回る。


 「《肉体強化フィジカル・ブースト》…」


 俺は、カズの不動産事務所からの帰り道、無意識に異世界で幾度となく使っていたスキルを発動させた。  全身の筋肉繊維が魔力で編み上げられ、鋼鉄以上に硬化する。パンチひとつでも、戦車をスクラップにするほどの破壊力を生む状態だ。  俺は感情のままに、路地裏のコンクリート壁を殴り付けた。


 「くそがぁあああああっ!!!!」


 ドゴォォォォォンッ!!


 爆発音にも似た轟音と共に、かなり頑丈なはずのコンクリート壁が一瞬にして粉々に吹き飛び、粉塵となって舞った。


 「…はぁっ…はぁっ…はぁっ…はぁっ…」


 怒りでリミッターを外して一気にスキルを放った為、猛烈な倦怠感が襲ってくる…。だが、そんなものはどうでもいい。


 「でも…、洋一と刈谷? 俺の子供達は生きている…」


 洋一。そして恐らく、あの刈谷という少女が、俺が飛ばされる直前に腹にいた二人目の子供だ。  二人は生きていてくれた。


 「こんなろくでもない親父でわりぃ…。俺が親父だって…打ち明けられないけど…ぜってー守ってやるからよ…」


 今まで、子供達に何もしてあげられなかった俺…。  16年も行方不明だった男が、見た目は同級生の姿で現れて「俺が父さんだ」なんて言っても、かえって苦しめるだけだ。何より、信じてもらえるはずがねぇ。気が狂ったと思われるのがオチだ。


 だから、俺は決めた。  友人のふりをして、影から二人を支えてやる…。特に洋一にゃー、復讐の手助けも含めて、色々と協力してやるつもりだ…。


 まずは、俺の家族を壊したあのクソガキどもを、地獄の底へ叩き落としてぶっ潰してやんよ…。

 

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