サボテン
私は完全にまいっていた。
というのも休日を毎回無駄に過ごしてしまう自分に嫌気がさしていたのである。朝はコーヒーメーカーで入れた安いコーヒーを一杯飲むだけで、そこから日が暮れるまで一切ものを口にしない。窓に接している机は完全な物置と化していて、たいていは炬燵の中で自堕落に過ごしながら休日使いきるのである。
ふと窓を見ると太陽はほとんど沈みかけていて、私は自分がまた貴重な休日を炬燵で過ごしてしまったことに気が付いた。しかし、それならば今すぐ出かけようという思考にもならない。北陸の冬は信じがたいほど寒いのだ。
私は小説を開いたまま炬燵の上に臥せ、ゆっくりと自分の部屋を見渡す。ちょうど視界に机の上に放置してある小さなサボテンが目に入り、炬燵を抜け出して手に取った。
一人暮らしの大学生活を紛らわすためにホームセンターで突発的に購入したものだが、恐らくもう半年ほど水をやっていない。無機質な顔つきだったサボテンは久しぶりに見るとより一層その内から放つ冷たさを増していて、少し怖かった。
私はいてもたってもいられなくなって、サボテンを持ったままキッチンへと向かい、水道水を土に染み込ませる。乾いていた土はその表面に瑞々しい輝きを取り戻し、サボテンは心なしか植物としての温かみを取り戻したようにも見えた。
少しずつ下から水が垂れているサボテンを暫く見つめていると、大きくお腹のなる音が聞こえた。腹が減ったのか、と気が付くと急に美味しいものが食べたいような気がしてならなくなった。
「何か食べに行こうか」
お腹がなると今度は口から掠れた独り言も飛び出した。咳払いをし、コートを羽織ると確かに楽しい出来事への準備をしているような気がした。
「牛丼を食べるぞ」
口に出すほど体の内から熱を感じた。幸福が体の中にふわりと生まれて、熱を発して弾けるような感覚が心地よかった。すぐにでも出かければよかったんだ、と思った。行動の伴わない想像力に意味はない。炬燵の上に臥せられた小説の一文を思い出しながら、私は靴ひもを固く結んだ。