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ゲーミングカラー白豚王子との婚約

完結まで執筆済み、中編です。よろしくお願いいたします。

 アルジーべ公爵家には美しい三姉妹がいる。

 長い赤毛と意志の強い黒瞳が麗しい長女レヴェッカ、金髪青瞳が鮮やかな三女ベラドナ。

 そして真ん中、二番目の公爵令嬢の名は銀髪灰瞳のグレイシア。

 社交界では頭文字と家名をかけて、RGBの三姉妹と呼ばれている。


 グレイシアは美人といえば美人だが、尖ったところのないいわゆる平凡な美人。

 華やかな姉と妹の間に挟まれるとレジ横に置かれた食パンのように素朴な娘だった。

 食パンは誰の個性も邪魔しない都合の良い存在なので、実は一度婚約がきまったことがある。しかし特出した魅力もないと思われて、年頃の男子は持て余して結局婚約破棄されてしまった。


 つまりすでに経歴に一つ傷がついた、焦げ目がついた食パンのような娘だった。


 そんなアルジーべ公爵家にいきなり、王国の第二王子との婚約話が舞い込んできた。

 家長であるアルジーべ卿、つまり三姉妹の父は魔術師なのだが、彼の長年の忠義と功績を称えて娘のいずれかを第二王子と娶せようという話になったのだ。

 その話を国王から聞いた時、アルジーべ卿は頭を抱えて寝込んだ。


「なんということだ。うちの愛娘が……第二王子の犠牲になるなんて」


 第二王子はちょっとした問題がある王子だったからだ。

 彼は生まれつき、肌がゲーミングカラーに輝いているのだ。


 ゲーミングとは古代結界『ゲート・ミーティング』が鈍った呼び名であり、有り体に言うと「なんかやばいものが出てきそうなくらいギラギラに七色に輝き続けている」という意味だ。

 あとはちょっぴり運動不足でぽっちゃりしていたものの(ギラギラに発光する人間がうろついていては迷惑だ)、ゲーミングカラーに輝く肌に比べたら正直些事だ。


◇◇◇


「……というわけなんだ。お前たちの誰か、第二王子殿下と結婚しないか。三食昼寝付きだぞ。すごいぞ」


 その日の夜、アルジーべ卿は娘たちを居間に集めて話を切り出した。

 ちなみに母親はすでに病で逝去し、壁一面を飾るでかでかとした肖像画となって家族を見守っている。どことなく顔も心配そうだ。


 家長たる父の言葉に、長女レヴェッカは顔を顰めて強気に言った。


「私は鮮烈な赤が似合う女です。ぽっちゃり白豚な王子様は私の引き立て役として魅力的だけど、ゲーミングカラーに輝いてるのはちょっと」


 三女ベラドナは大きな瞳を潤ませたかと思うと、突然わっと泣き始めた。


「お父様ひどいですぅ。ベラドナの青い瞳は姉妹の中で一番光に弱いんですよぉ」


 そんなわけで父は、申し訳ない気持ちで地味な次女グレイシアを見やった。


「あの…… グレイシア……」


 銀髪で白い絹のワンピースを纏ったグレイシアは、派手な色合いの姉妹に挟まれてテーブルへと目を落としていた。何を考えているか分かりにくい無彩色な娘は、静かに姉と妹を交互に見やると、父を見てこくりと頷いた。


「かしこまりました。私が引き受けます。一度婚約破棄された身でも嫁ぎ先があるのなら願ってもないことです」

「おお、グレイシア……ありがとう。せめて幸せになってくれ……」


 父は心底ホッとした顔をした。

 グレイシアは以前、とあるトラブルで婚約破棄された娘だった。父はグレイシアにどうか幸せな嫁ぎ先を探してやりたかったが、婚約破棄されて悪い噂が広まった娘にはなかなか良い縁談がこなかった。

 その点、今回は王家との婚姻だ。

 ゲーミングカラー白豚王子といえど、経歴に傷がついた娘の嫁ぎ先としては破格だった。ゲーミングカラー白豚王子だけれど。


 喜ぶ父、ほっとする妹、「宮廷でいい男見つけたら紹介なさいよ」という姉。

 三者三様の反応を見ながら、グレイシアは、みんな喜んでいるからよかった、と頷いた。

感想欄は完結後に開かせていただきます!何かありましたらTwitterのDMなどにどうぞ……!

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― 新着の感想 ―
[一言] 社交界では頭文字と家名をかけて、RGBの三姉妹と呼ばれている。 ここでサクッと胸を鷲掴まれました。 ちょっ、Gは緑よ!と心密かにつっこみました。 続きがたのしみです。
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