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短編とかその他

笑顔になれない少年と化け物になった少女

作者: リィズ・ブランディシュカ
掲載日:2022/08/02



「例の実験施設から保護した少年、まだ笑顔を見せてくれないな」


 俺達は、困った顔で互いを見回した。


 俺達は勇者だ。


 魔王を倒すために集まった人間達。


 けれど、魔王だけを倒せばいいというわけではなくて、道中で魔物に困っている人を助けたりもしている。


 魔王は魔物を操って各地で人を襲っているみたいだから、放っておく事はできない。


 だから、俺達はいつも魔物を倒していたんだけど。


 つい先日、魔物の拠点にたどり着いた。


 俺達は放っておくことができないと、そこの魔物達を掃討していったんだけど、


 そこにはなんとさらわれた子供達がいたのだ。


 その施設では、人工的に魔物を増やすために、人間のパーツを利用していたらしい。


 さらわれた子供達は生きたまま、凄惨な目に会わされていたようだ。


 そんな環境から助け出した子達の心に、傷がないわけがなかった。


 俺達は、魔物を倒して魔王のいる城を探すかたわらで、孤児院に保護した子供達の様子を気にかけていた。


「あっ、勇者さまだー」


「勇者様たちまたきたのー?」


 ほとんどの子供達は大人達のケアによって、心の平穏を取り戻してくれた。


 けれど、とある少年だけがまだ、笑顔を見せてくれていない。


 無理もないだろう。


 彼は、自分の代わりに、親しい友達をなくしたらしいから。







 俺は生き残ってしまった。


 魔物達が村を襲ってきた時も、両親にかばわれて生き残ってしまったし。


 魔物にさらわれて生きたまま切り刻まれようとしたときも、友達を身代わりにして生き残ってしまった。


 本当なら、もっと早く死ぬはずだったのに。


 生き残るべき人達は他にたくさんいた。


 なのにどうして、俺が生き残ってしまったのだろう。


 両親は「いきて」と言って、最後を迎えた。


 友達は「少しでもいいから君に長くいきてほしいの」と言って、切り刻まれた。


 その時のことを思い出すだけで、頭がおかしくなりそうになる。


 大人達は「笑顔をみせて」なんて言うけど、笑えるわけがなかった。







 そんな俺は、魔物達に対する復讐の為、剣を覚える事にした。


 幸せになる事はあきらめた。

 俺にはそんな資格なんてないから。


 けれどそれは、何もやらないわけではない。


 やるべき事なら目の前にきちんとある。


 復讐だ。


 両親や友達をひどいめにあわせた魔物達に復讐をしなければならない。


 だから、俺は毎日剣……は大人達が持たせてくれなかったから、木の棒をふって修行するのだ。






 しかし、「逃げろ! 魔物がやってきたぞ!」その時は予想よりはやく訪れた。


 俺は厨房から盗んだナイフをもって、魔物達の元へ走った。


 これで、憎たらしい魔物達をやっつけてやる。


 そう思ったのに、いざ目にしてみると怖くて足が震えて、立っていられなかった。


 何人もの人間を犠牲にしていった、恐ろしい魔物。


 それに本当に勝てるのか、とそう思ってしまったのだ。


 尻もちをついた俺に、向かってくる狂暴な魔物。


 植物のつるがかたまったような魔物が、俺にむちの攻撃を見舞おうとした。

 しかし、そこに魔物が割り込んだ。


「えっ」


 俺は間抜けな声を発さずにはいられなかった。


 だって、魔物が人間を守ったからだ。


「どうして」


 ありえないことだった。


 きいたこともない。


 だから俺は、理解できずに呆然としていた。


 その魔物は、人型の巨人のような魔物は、振り向かない。


 そのまま、植物の魔物につっこみながら、「に……げて」と言った。


 俺はもしかしてと思った。


 あいつだ。


 本当にあいつなのか?


 認めたくない、気づきたくないという思いがせめぎあった。


 人工魔物のパーツにされた人間がどうなるか知らない。


 それは大人達が俺達に分からないように情報を隠してきたからだ。


 でも、もし人間であった頃の意思が残っているのだとしたら。


 俺は、そいつの名前を呼ぼうとした。


 しかし、植物の魔物をやっつけたその巨人の魔物は、もう何も喋らなかった。


 俺の方を向いたその瞳には理性の色など見えない。


 気のせいだった?


 混乱する俺の前に勇者達があらわれて、その巨人の魔物を真っ二つにしていく。


 俺は、どうしていいのか分からずその場から動けなかった。


 でも、その巨人の魔物の瞳から光が消え去る時、口が動いたよな気がした。


「わ……ら、て」


 笑って。


 そう聞こえたような気がした。


 あいつだ。


 やっぱりあいつなんだ。


 かけよった俺があいつの名前を呼びかけるけれど、もう何も喋ってはくれなかった。


「あああああああああ!」


 俺は、声を上げて涙を流した。


 あの地獄の様な施設にいたとき、友人との話の中で俺は一度笑った事があった。


『それ、いいね。その笑顔すてき、もう一回笑って』


 笑え、なんて言われて笑える奴なんていない。


 おれはそれきり、あいつ笑顔を見せた事がなかった。


 あいつは俺に復讐なんてきっと望んでいないのだろう。


 ただ、平穏に幸せに生きて欲しいと、そう願ってくれていたに違いない。


 俺は、間に合わないと知りながらも無理やり笑顔を作った。


「わらう、くらいなんどだってやってやるよ。だから、しぬなよ、ばかやろぉ」







 俺達がかけつける前にどんなやりとりがあったのか分からない。


 けれど、例の少年はあれきりまるで別人になったかのように、よく笑うようになった。


 人工魔物の事は彼等に伏せておいたけれと、彼等が大人になった時に、いつか話す時がくるのだろう。


 頭部や心臓を魔物のパーツにした場合は、意識が残る事があると。


 けれど、助ける事はできないのだ。


 そうなった以上、葬り去ってやるしかない。


 俺達は大きくなった子供達の憎悪を受け止める確保を抱いて、また魔王を探す旅を再開した。




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