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魔法少女との再会

「聖なる光に導きを!ホーリーライト!私はプリズムライト」

 彼女は水色の髪をなびかせながら屋上で何度も決めポーズを取りながら写真を撮ったり、動画を取ったりしていた。

「これでOKです!この学校の屋上は誰もいませんし、このオブジェも魔法少女プリズムライト 第5話に出てきたオブジェと似てるから今日撮影出来てよかったです。学校ばれしないといいのですが」

 オブジェの前で三脚とスマホを構えて撮影をしていた美少女がいた。

 俺はというと屋上の入口でそれをまじまじとみていた。

「なんで魔法少女が学校にいるんだ」

 その姿には俺は見覚えがあった。それはつい昨日。俺が公園前を歩いているとさっそうと登場し、先ほどのように決め台詞と唱えて、俺に見られて恥ずかしがり、全力で疾走したところ、トラックにはねられそうになったところを助けた女の子にそっくりだった。

 彼女のみためは小柄140cmくらいに水色の髪の毛でサイドテールの髪形をしていた。

 見た目は小学生そのものだった。

「小学生がなんでこんなところに……」

 俺は彼女に気づかれないように見ていた。ストーカーみたいな感じはしたが。

「この衣装かわいいんだけど、おもちゃも一緒だから、ばれないようにするのに必死でした」

 なにやら動画撮影が終わったようで、後片付けをしているようだった。

 災わい彼女は入口を向くことがなかったので、まだばれてはいなかった。

「撮影終了です!さておうちに帰りましょう!」

 るんるんと鼻歌を歌いながら片付けていた。

 ちなみに俺が見た光っていたものはおもちゃと夕焼けが反射したものらしい。

「終わったようだ、ここにいるもの気まずいし、とりあえず離れよう」と思った時だった。

 偶然にもドアを半開きで見ていたものだから、強い風が吹き、ドアががしゃんと開いてしまった。

「うわっ!しまった」

「え?なんですか?」

 びっくりしたように彼女は俺の方を見ていた。

「こ、こんにちは」

「こんにちは……」

 沈黙が長く続いていた。

「あ、あの……」

「な、なに?」

「あの、見てましたか?その私がしていたこと」

 どういうべきなのだろうか、昨日とは違い勢いよく逃げないから判断しずらいところだけど、もし見らられてなければ彼女なりの言い訳ができるのだろうけど。

「ごめん、そのプリズムライトのセリフくらいからみてました」

「うわあああああああああああああ、ごご、ごめんないさい!」

 彼女は赤面し、土下座して謝ってきた。

「いや、俺こそ勝手に覗いてごめん、そのなんというか、別にわるくはないというかなんというか」

「いえいえいえいえいえ、私がしているのは悪いことなのかもです。しかも昨日も見られてしまってますし」

「え?」

「ふえ?」

「俺のこと覚えているの?」

「逆に忘れますでしょうか?」

「ですよね」

 とりあえずなぜか冷静になった彼女に対してふと疑問に思ったことがあった。

「さて、どうして小学生が学園にいるのかな?お姉ちゃんかお兄さんがいるのかな?」

「はい?あなたは何をいってるのですか?」

「え?」

「私小学生じゃないです!時々間違われますが、れっきとした高校1年生なのですよ!失礼ですね!ほら!」

 彼女はかばんから写真入りの生徒手帳を見せてきた。

「本当だ、ごめんてっきり」

「それに昨日、警察の質問で、年齢も言ってるはずなんですけど」

「離れてたから聞こえなくて」

「それもそうですね。それであなたはなんで屋上にきたんです?」

「なにか声がするなと思って除いていたら魔法少女が屋上にいた、それだけ」

「それだけですか?」

「え?」

「いえ、あの制服が2年生なので」

 ここの転融学園は生徒の制服はネクタイで色分けがされており、女子の場合はリボンだ。

 1年生だと赤、2年だと青、3年生だと緑となっている。

「1年生の教室の屋上にいるということは、なにか用事があったんではないでしょうか?これ私の推理ですけど、当たってますか?」

「当たってるね。でも手間が省けてよかったよ」

「どういうことですか?」

「これも何かの縁なんだろうね」

 さきほど見せてもらった生徒手帳で俺はある名前と恰好、そして1年生であることが一致して彼女にここに来た目的を語ることにした。

「実は、これのことなんだけど」

 部活動申請用紙、天宗瑠璃 1年生 「魔法少女部」希望。そう書かれている用紙を彼女に見せた。

「こ、これは私が出した申請書、なんであなたが持っているんですか?」

「それは、」と俺が間をあけたら

「魔法少女部に入るんですね!」をキラキラした目でみてきた。

 緑鳥先輩といい、彼女といいなぜそういう発想になるんだろうか。

 いや、そういう発想しかならないか。辰巳先輩が例外なのかもしれない。

「いや、入らないよ。実は俺も部活動申請して却下された1人なんだ」

「1人?といいますとどういうことですか?瑠璃には意味が……」

「生徒会の人から、合同で部活をしてはどうかって提案があって、俺の「英雄部」、3年の緑鳥さんの「BL部」、他2名と天宗さんの「魔法少女部」合同の部活動をするんだ」

「BL……?」

「ん?なに?」

「私、男の人と男の人が、その裸になるものが苦手で、その、なんというか。ごめんなさい。合同はちょっと……」

 断られるという選択肢も考えてなかったわけではなかった。

 俺や緑鳥さんは合同でもいいから部活をしたい。そういう志ではあるが。

 彼女はまだ1年生、部員をこれから集めることもできるし、がんばればできないこともない。

 合同部の難しいところは、合同で部活する上で、誰かがその部活に対して苦手意識や嫌悪感。または興味のないものが自分のテリトリーにあることによるストレス。

「ごめん、そうだよね。苦手なものと一緒に部活は厳しいよね」

「目を伏せれば大丈夫なんですが、合同ですか……」

 天宗さんは少し悩んでいた。

「部費って分けるんでしょうか」

「部費?まだ聞いてないからわからないけど、部費がいるの?」

「そりゃあもういりますよ!コスプレ代にグッズ代!ライブ代だってお金かかるんですよ」

「まさかとは思うけど、それが目的だったり?」

「他になにがあるんですか?」

 緑鳥先輩同様、部費目当てでの申請だった。

「でも瑠璃は失敗しました。まさか部員が必要だったとは」

「まあ天宗さんは1年生だし、友達でも誘えば部員できるんじゃないの?」

「自慢じゃないですが、友達を作ろうなんて思いませんです!」

 ドヤ顔しながら俺にそう言った。

「それに誰かと分かち合いたいから魔法少女しているんじゃないんです」

「ほお、それはまたなにか理由が?」

「瑠璃が大好きだからです!なので、自己満を誰かと共有するなんて無理だと思いません?」

「おっしゃる通りで」

 俺にも覚えがある。ヒーローになりきっているときは自分の世界に入り込む。そこには誰でもない俺一人だけの心地い空間なのである。

「でも合同部ですか、部費ももらえそうだし。BL部がいなければ瑠璃はOKですよ!先輩もいるならOKです!」

「おおっと、BL部を外しますか」

「瑠璃には必要ないからですね」

「それになんで俺?」

「昨日から先輩のことが気になっていたんです」

「え?気になる?」

「昨日帰りながら考えていたんです。先輩のことを」

 身長140cmと小柄である彼女は俺に上目ずかいでっじっと見ていた。

 じりじりと俺のところに近づいてきた彼女に対して少し緊張が走る。

 魔法少女の格好の彼女は俺ともう少しで密着するくらいの距離まできて、人差し指を俺の顔に向けた。

「この顔」

「へ?」

「めっちゃ。プリズムライトに出てくるよく被害にあう男の子にそっくりなんです!」

 魔法少女プリズムライト、週末の朝、ヒーロー番組の前に放送されている。小さい子から大人の人までもも人気の番組で、俺もヒーロー番組の前には欠かさず見ているのでわかっている。

「よく言われません!」

「いわれねーよ!」

「うわっ!びっくりした、大きな声を出さないで下さいよ」

「ごめん、でもそういう理由?」

「妄想が膨らんできそうなので、モデルとしては最適なんです」

 モデル、最近よく聞く言葉ではある。

 緑鳥先輩からも俺と真我をモデルにしたBL同人誌を書いているようで。

「まさか、同人誌とかは書いてないよね」

「瑠璃、絵は壊滅的にだめなので、SNSとかで妄想ストーリーを描くくらいです」

 それだけならいいかと安堵した。

「とりあえず、合同部には賛成してくれるんだね」

「はい、BL部がなければですけど」

「ちょっとそれは厳しいかもしれない」

「どうしてです?もうBL部さんに話がついてるとかですか?」

「お察しの通りです」

「あちゃちゃ、ならこの話はなかったことにしてくださいです」

 ぺこりとお辞儀をした彼女。

「でもBL見なければいいんじゃないかな?」

「だめです!私は男の人の裸恐怖症なんです」

「裸恐怖症?」

「私は、小さいとき、って今、今でも小さいとか考えてないですよね」

 図星だったが、とりあえず首を横にふった。

「まあいいです。小さいときに、瑠璃が夜道をお母さんと歩いているときでした」

「うんうん」

「その日は満月で、お母さんと月がきれいだねって眺めていたら、足音が聞こえてきたんです」

「え?」

「そして振り向くと、全裸になった男に人が私たちに向けて見せていたのです」

「露出狂ってこと?」

「はい、幸い被害はそれだけだったので、すぐにおまわりさんが来てくれたんですけど。瑠璃、いえ私はそれ以来男に人が苦手になって、少しは克服できたんですけど、BLみたいに裸で抱き合ってるのとかみると、蕁麻疹ができたりして、苦手なんです」

「そっか、ごめんね。辛いこと聞いて」

「大丈夫です。もう慣れてますから」

「BL部、そんなにだめかな?」

「だめです」

「裸のところだけ、逃げるのは?」

「う~ん、瑠璃にそこまで入ってほしい理由ありますか?」

 人数合わせということもある。彼女にこれ以上無理言ってもお互い辛いかもしれない。

「人数が足りてないというのが本音だけど、天宗さんみたいに困ってる人をほっとけないし」

「困ってはないですよ、部費貰える以外は」

 そういわれるともう無理なのかなと思ってたら

「でも先輩がどうしてもっていうなら、考えなくもないです」

 後ろ向いた彼女は俺にそう告げた。

「いいの?」

「はい、先輩が瑠璃の恐怖症克服させてくれなるならですけどね」

 満面の笑みで俺の方を見たから、ドキッとしてしまった。

 夕焼けの染まった彼女の笑顔は、絵になるくらい可愛かった。

「ありがとう、じゃあとりあえず連絡先教えてくれるかな?いろいろと情報交換したいし」

「いいですよ」

 そういえば緑鳥先輩とは交換してなかったな。

 俺と彼女はスマホの連絡先を教え合った。

「男の人の連絡先ははじめてです」

「え?ほかにいないの?」

「お父さんだけですね。お父さんのおかげで男性にもなれましたので」

「そうなんだ」

「はい、お父さんには泣かせる思いもさせましたし」

 いったいどんな克服方法だったんだろう、お父さんの苦労が泣けてくるようだ。

「瑠璃はもう帰ります。遅くなるといけないので」

「え?その格好で?」

「ちゃんと着替えるです!」

 そういうと彼女は三脚など急いで片付けていった。

「俺もなにか手伝うよ」と歩いて行こうとしたとき、彼女がお構いなくと発言したことも気が付かず、何かに足を引っ張られて盛大にこけてしまった。

「いってて、コンセントか?」

「大丈夫ですか?」と彼女が歩み寄ってきてくれた。

「ごめんなさい、瑠璃の充電器が邪魔したみたいで」

「だいじょうぶ、だいじょうぶっっ!」

 彼女がしゃがんだ時に俺は上にあるあるものが見えてしまった。

 彼女が履いていた。パンツがそこにあった。

 しかも、プリズムライト。小さい女の子が履けるサイズのものだった。

「そこまでこだわるのか」

「え?どこをですか?」

 俺の発言に対し、パンツが見られていることに気が付く。

「どどどどどどど、どこ見てるんですか!!見ないでください!」

「ごめんなさい、もう俺帰るから」

 俺は体を起こし、ドアの方まで駆けだそうとした。

「ちょっと待ってください先輩……」と服の袖をぎゅっと握りしめられた。

「え?」と振り向くと彼女が赤面していることがわかった。

「ごめん、見るつもりじゃなかったんだ」

「変ですか?」

「変?」

「高校生にもなって、こんなパンツ履いてるのは変ですかね?」

 泣きそうな声で俺に問いかけてきた。

「変じゃないと思うけど、好きなものに純粋でいいと思う」

「じゃあ、英雄部でしたね」

「うん」

「先輩もパンツはヒーローさんなのですね」

 わくわくしながら俺にぐいぐい聞いてきた。

「いや、そこまでは違うよ」

「嘘です!きっとヒーローさん御パンツなのです!」

「ちょっと脱がさないで!」

 彼女は俺のズボンをぐいぐい脱がしてきた。

「裸恐怖症じゃなかったの?」

「克服の為です。これは確認しないと、瑠璃がパンツ見られた仕返しができないのです!」

「それが目的じゃないか!」

「瑠璃は怒ってます!女の子のパンツを見てながら、パンツを見せ返さないなんて卑怯です!」

「天宗さんが見たいだけじゃないのか!」

「先輩の恥ずかしいところをみて、お互いさまにさせます」

 さっきからズボンをさげたり上げたりする行為を繰り返していた。

「いいかげん諦めてください」

「初対面の男にパンツ見せろというやつがどこにいる」

「ここにいるんだから観念するです!それともなんですか?パンツを強引に覗こうとした罪で逮捕されたいですか?」

「強引に覗こうとしているのはそっちだあああああ」と俺は力いっぱいに引っ張ったもんだから、彼女が履いているのがヒールだったのもあり、彼女はよろけてしまった。

「あぶない!」

 彼女は俺とは反対方向に倒れようとした。

 一瞬の出来事なので、彼女は頭を打ってしまう危険性があった。

 俺は彼女が倒れる際に頭を打たないように頭に手を伸ばした結果。



 俺と彼女の唇が重なってしまった。

 俺の人生初めてのキスが魔法少女のコスプレした後輩だとは思わなかった。

「うわっ。ごご、ごめんなさい、大丈夫か?」

「ふええ~?」と意識がもうろうとしているようで

「あの~。大丈夫ですか~?」と体を起き上がらせ、手を顔の前に振ってみた。

 彼女はいったい何が起きたのかわからない様子で、自分に何が起こったのかを確認する作業を行い。

「そ、そんなことって……」

「え?」

「はじめてだったのに……」

 彼女は立上り、荷物を急いでもっていき

「いやあああああああああああああああああああああああああ」と泣きながら屋上を出て行ってしまった。

「悪いことしてしまった」

 俺は自分の唇を触り。

「キスしたのか俺……」

 思い出したら赤面してきた。

「なんて場合じゃない!追って謝らないと」

 どこにいるのかわからないから、さっき交換した連絡先を使ってみた。

「通じない……」

 俺は屋上から下を覗くと

「いやああああああああああああああああああああああああああああああ」と叫びながら魔法少女まま走り去っていく天宗さんの姿があった。

「これは積んだな、こんなつもりじゃなかったのに」と頭を抱えてしまった。

「どうすればいいんだ」と屋上をでることにした。



「やっと退散しおったか」

 屋上に別の位置に人影があった。

「それにしても、にっひっひ~、いい写真が撮れた撮れた」

 屋上にいた存在。

 瑠璃が魔法少女になって屋上に来る前に先客がいた。

「ここからいい写真がとれないかリサーチしておったら、あんなシーンに出会えるとは、今日はいい収穫だった」

 紫髪でおさげの女の子、首から下にはコンパクトなデジタルカメラを装備していた。

「にっひひ、これでまた詩音先輩に自慢できるおみやげが増えた増えた」

 喜びながら、彼女もまた屋上からでていった。

 彼女の名は羽藤理央、2年O組のクラスで生徒会の広報担当をしている。

 また部活動統括部門の副会長でもある。

 彼女の撮った写真がのちに合同部にとってどうなるのかは、まだ知る由もない。




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