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クラスメイトへの悪ふざけと緑鳥ひなとの接触

 俺と真我がトイレから出た後、人の気配を感じた

「真我、だれかそこにいなかったか?」

「やめてくれよ、俺昨日ネットで心霊スポットの動画みてから一人でトイレにいけないんだ」

「だから連れションだったのか?」

「いや、メインはこっちだ」とスマホ画面に駅前で盗撮されている美少女の画像をみせてくる親友。

「だよな、たぶん気のせいだ。すまん気にしないでくれ」

「責任取って今日は一日トイレに連れてってくれよ」

「子供か!!」

 だが、俺が感じた気配は間違ってはいなかったようだった。それを知るのは後の話しだ。


 教室に入り、自分の席についた。もちろん真我も。

 何気なく朝礼が始まり、そして午前の授業がはじまった。合間にトイレに付き合うこともあったが。

 俺は少しそわそわしていた。トイレではなく、昼休みがってことで。

「緑鳥ひなさん、辰巳先輩同様3年生だとやっぱり緊張するな。アポなしにいきなり突撃するのって、やっぱり勇気いるな~、しかし英雄部のためだ。昼休みに接触だ」

 そんなことを授業中に考えながら昼休みがやってくる。

「おい光、昼休みのトイレ行かないか」

「すまん、用事があるんだトイレは、そうだな~」とクラスを見回してあるクラスメイトを見つけ、悪知恵が働いてしまった。

 俺はすこしにやけを抑えながら

「真我、あそこにいる甘牙と行ってくれ」

 甘牙、甘牙七海はクラスの学級委員長だ。

「甘牙?っておい!いや、あいつは女子じゃないか!」

「困ってる生徒を助けるのも学級委員の仕事だと思うが」

真我はうーんと首を捻り、顔を右左を捻りながら、考え。そして

「なるほど、確かにそういわれてみればそうか、わかった!光も忙しいようだから頼んでみるよ」

「おう!行ってこい!」

クラスの学級委員長、甘牙七海、同じクラスになって2年目だ、見た目は茶髪でポニーテールが特徴で、顔は童顔。まつ毛が長い。胸はクラスでも一番の大きさを誇っている。スタイルもいいから皆からモデルだと思われたこともあった。

 甘牙は小学校からの付き合いだからこれくらいの冗談なら通じると思っている。

「甘牙さん、ちょっといい?」

「ん?なんね?白石くん」

 クラスの女子とお弁当中の甘牙はミートボールを食べている真っ最中だった。

 九州出身のくせが抜けていない甘牙。

「頼みがあるんだけどさ」

 真剣なまなざしで真我が甘牙を見るもんだから、周りの女子は「告白か?」とか「モデル依頼かな?」とそわそわしていた。

「頼みってなんね?」

「いや、その、光がさ」

「え?月下くん?」と教室のドアにいた俺を見てきた。

「甘牙に頼んだらいいんじゃないかって言われてさ」

「うん、だからなんね??」

「ここではちょっと言いにくいんだけど」

「私お弁当食べてるけんが、はやく手短にお願い」

「ごめん、光から断らてたんだけどさ」

「もうはっきりせんね!顔はイケメンなのにそうグジグジ言われても困るつたい!」

「わかったよ!俺のトイレの介抱をお願いします!!」

 真我がそう叫んだあと、クラス中がしーんと静まりかえった。

 そしてドア前で笑いこらえている俺。

「あああああ、女子の前でなんばいうとねこの変態!!」

「あひいいいいいいいいいいいい」

 赤面した甘牙にアッパーをかけられる真我。

「すまん、めっちゃうけるぜ真我」とぐっとポーズで逃げようとする俺。

 だがそう簡単にはいかなかった。

「つ~~~き~~~~し~~~~た~~~~~」

 こちらを睨み迫ってくる甘牙、逃げる俺。

 廊下中を走り回っていた。

「なんちゅうことを白石にいわれるとねええ!!」

「すまんすまん、悪かったって」

「それがヒーロー好きなやつがすることね!こげんこと悪役のすることと違うとね!!」

 走りながら叫んでくる甘牙。

 俺はとうとう追い詰められてしまった。

「なんで?ねえなんで?わたしばからかって楽しかね?言葉?いまだに標準語にならんことば、からかってるんね?小学校のころから変わらんねあんたは」

「そういうことじゃないんだけど、お前学級委員だから、そのなんだ。真我が今日一日一人でトイレに行けないっていうから、七海なら頼めやすいと思って」

「私は女!頼むなら男に頼んで!」

「すまんって、ちょっとした冗談のつもりだったんただ」

「ちょっとした冗談を友達にさせんでよ、こっちまで恥ずかしい思いばせなんたい、昔から胸がでかいからからかって、楽しいところ連れてくとか行って目隠しさせて校長室に連れてったり、俺はアレルギーとか嘘言って、タダの好き嫌いを私に押し付けたり、班行動で間違った道教えたり、もう月下なんて知らん!!」

 拗ねて教室に戻っていった。

「すまん七海、あと真我のやつ、無事ならいいが、すまんこっちの用事済ませたら戻るから」

 そんな親友に最悪なことをした後に行く用事。

 一枚の書類を俺は手にしていた。

「緑鳥ひなさん、3年の教室だな」


 ここ転融学園の校舎は1年生、2年生、3年生、部室棟、教員棟、特別教室と建物一つ一つが分かれているつくりとなっている。なので、3年生との接点があまりない。棟を移動するには渡り廊下を行くか、一旦建物を出てから向かう2パターンあるが、基本的には渡り廊下を移動するというのが大半だ。

 俺も渡り廊下を利用し、3年の教室を目指していた。

「七海には悪いことしたな。あとで飲み物でも買って行ってやろう」

 歩いているうちに3年の教室にたどり着いた。

「3年B組か、ここだな。さてどうしようかな」

 3年に知り合いはいないし、顔も知らないからどう声をかけていいのやら。

 キョロキョロしていると

「あら?昨日の英雄さん?」

 俺に声をかけてきたのは

「辰巳先輩じゃないですか」

「あら、私のことをもうそんな簡単に呼ぶのね」

 生徒会副会長、部活動統括部門の辰巳詩音先輩だった。

「すいません、なんかそっちで呼んだほうがいいのかなと思って」

「いいわよ辰巳先輩で、それで3年の教室に何の御用?」

「いやその、3年の緑鳥さんに部活動のことをと思って」

「早速動き出しているのね。他にももう声はかけたの?」

「いや一人目です」

「いきなり3年生?」

「いや、なんというか。1枚目にあったというのもありますけど、最初からハードル上げたほうがいいかと思いまして」

 そういうと辰巳先輩は笑っていた。

「ごめんなさい、でも彼女はあまりそんなかしこまる先輩じゃないから。ほらあそこ」

 と辰巳先輩はBクラスの端っこにいる女子を指さしていた。

 一人で、机に座って本を読んでいた。

「あの人が緑鳥さんですか」

「そう、同じクラスなんだけど、私もあまり話したことがないからああいう人だとは知らなくて、申請しに来た時にはびっくり。だって、男同士の恋愛を教室で堂々と話すから、あとから思い出したら可笑しくて」と辰巳先輩はまた笑っていた。

「何がそんなに面白いんですか?」

「いや、いつもはああいう感じで本を読んでるのに、私のところでべらべらと男同士の恋愛のすばらしさを語るから、ギャップ萌え?まるで別人みたい。今でも思い出すと面白い」

 この人、単なる面白いもの好きなだけなんじゃないか。

 申請したときもそうだけど、見た目はクールなのに、いざ話すと話しやすいのかもしれない。

「わかりました。辰巳先輩。とりあえず声かけてみます」

「待って、私から話に行く、いきなり下級生の男子が話しかけられても困るよ?」

 というと辰巳先輩は緑鳥さんのところへ駆け寄っていった。

 最初は無反応だったのだが、2分くらいして辰巳先輩のところを向いた。

 どうやら自分に話しかけられているとは思わなかったようだ。俺が行かなくてよかったと安堵する。でも今からは自分があの人に話しかけなくてはいけない。いつまでも辰巳先輩を頼るわけには行かない。

 英雄部の為、合同部活動をするためあの人に話さないといけない。

「お待たせ、えっと英雄部さん?」

「月下です」

「月下くん、お待ちかねの緑鳥さん。あとはがんばって」と肩にぽんと触れられた。

振り返るとがんばってポーズをしていた。厳しい人なんだかお茶目な人なんだかわからない人だ。


「私を呼び出したのはあなたかしら??」と暗いトーンで俺の方に声をかけてきた。

 緑鳥ひな先輩、黒髪ストレートなロングで胸の高さまで伸びていて、美人系のお嬢様気質がある。

 しかも巨乳ときたもんだ。胸ははちきれんばかりある。

「はい、2年D組の月下です。お話があってきました」

「お話??あー、えっと、とりあえずごめんなさい」

「なんで謝るんですか!」

「告白?」

「違うます!」

「ごめんなさい、男の人から声をかけられるのって、そういうことかなと思って」

「すいません、部活動についてのお話にきました」

「ついにBL部申請が決まったのかしら!!」

「それも違います!とにかくここではなんなんで、別のとこで話しませんか?」

「確かに、ここではBLは語れないものね」

「BLの話しをしにきたんじゃありません!」

 突っ込みをいれながら、空き教室、ちょうど俺が昨日、先生から怒られたところに移動した。

 俺は、緑鳥先輩に事のいきさつを話した。

「つまりは、合同で部活をしようってことかしら?」

「そういうことです」

「私のことに気が付いて、モデル希望かと思ったじゃない」

「それどういうことですか?」

「朝方、あなたとご友人がトイレに一緒に入っていくから、なんのカップリングかなと思って覗かせてもらったのよ」

「あの気配はあんただったんかい」

「あら、先輩にため口はないんじゃない??」

「いまの突っ込みはなしにしてください、ありえないことを聞かされたんで」

「そうかしら?私は下級生だろうがカップリングを見つければ、急いで現場に駆けつけるわ」

「なんですかその探求心は」

「もちろんBLのネタにするためよ。全校生徒の中であなたと友人のカップリングが一番萌えだわ」

「ん?ということは俺のこと知ってたんですか?」

「ええ、毎回ネタとして使わせてくれてありがとうございます」

 緑鳥先輩が携帯を取り出し、俺に画面を見せてくれた。そこには

「なんだと・・・」

 俺と真我に似たキャラが抱き合っているBL本の表紙だった。

「まさかとは思いますけど」

「同人誌として販売中よ」

「肖像権で訴えますよ」

「あら?ちゃんとフィクションですってあとがきに載せてるからネタとしては使わせてもらっているけど、本人かどうかなんて身内しかわからないじゃない。合法よ合法」

 ギリギリアウトだろ。まさかそっちの世界では俺たちはネタにされているとは世も知れなかった。

「というわけで、BL部がいよいよはじまるのね」

「というわけではないです。第一俺はBL部には入りません」

「モデルなのに?」

「それは勝手に使われているだけです」

「またまた~、モデルと知って、BL部に入ろうと思ったんじゃないの?」

「モデルになってるなんて事実、今知ったばっかりですけど」

「そうだったわね」と少し寂しそうな表情をした。

 辰巳先輩が言うように、普段はおとなしそうに見えるけど、BLの話になると飛ばす人だ。

「じゃあ、合同で部活をつくるのね、あなたはなんて部活をつくるの??」

「英雄部ですけど」

「何それ、映研?」

 辰巳先輩と同じことを聞かれてしまった。

「違います。英雄について知り、学び語り合う部活です」

「それ学校にいるかしら?」

 BL部申請した先輩が何をおっしゃいますか。まあでも一人では語り合えないのも事実であるからして、俺は付け加えた。

「痛いところをつきますけど、それだけじゃなくて、ヒーローみたくなりたいからこそ、作りたいとも思ったんですが、やっぱり却下されて」

「ちゃんとルールを読まないから」

「先輩がそれ言いますか」とギクッとなる緑鳥先輩。

「だって、部活動申請なんて何回かしようとしたけど、勇気がなくて、それで勢いでいったら却下されて、詩音さんに言われてから初めて知ったのよ、そういう規則があるってこと」

「まあ、俺も似たようなもんです。でも学校には漫画研究部があるじゃないですか。BL部じゃなくてそっちに入ってはダメなんですか?」

「いやよ、漫研なんて」

「どうしてですか?」

「だって、あそこはオタクの巣窟よ、BLを語り合える同志どころか、話すのは美少女もののアニメの話しばかり、呆れて1週間で退部したわよあんなとこ。それでいろいろBLを語ろうと友達になってくれる子や、ネットとかでも繋がろうともしたけど、薄っぺらい交流でしかなかった。楽しくなかったわけじゃないんだけど。やっぱり生身の人間と話したいという気持ちがあったわ。BL部を立ち上げようとしたのもそれもあるけど。ネットで創作活動しようとしてたら、同人誌の製作ってやっぱりお金かかるのよね。だから、部費を使ってそれで活動しながらBL語り合える子を見つけようと思ったの」

 べらべらと話すものだから突っ込みタイミングを俺は完全に失っていた。

「つまりは同人誌をつくるための活動資金欲しさにBL部を立ち上げようとしてたと」

「まあ、省略するとそうかしらね」

 少し呆れてしまっていた。

「でも却下されて諦めていたのだけど、あなたの、その合同部?を聞いて少し希望が見えてきたわ」

「本当ですか?」

「ええ、BL部にも部費をくれるなら協力するわ!」

「結局金目的じゃないですか!」

 と話が一区切り終えたところで昼休みのチャイムが鳴った。

「じゃあ、放課後にその、合同部だったかしら?作戦会議をしましょう」

「作戦会議ですか?」

「他にも回るんでしょ?手伝えることがあるのなら協力するわ。同じBL部として」

「英雄部です」

 緑鳥先輩はくすくすと笑いながら

「じゃあ放課後ね、えっと月下くんだっけ」

「はい、では放課後に」

 と俺たちは空き教室を後にした。


 教室に帰ってきたとき、残念なイケメンはクラスの男子にトイレに連れてってもらって、クラスの女子からにらまれる立場に追いやられていた。

「ひどいよ光、僕をおいて逃げるなんて、あの後散々な目にあったんだから」

「ごめんって、俺も七海にめちゃくちゃ言われたよ」

「それだけならいいさ、僕なんて足で踏まれたんだ。ある意味ご褒美だけど、でもさすがに顔を叩くなんてひどいじゃないか」とほっぺをさすっていた。

 白石真我はこれが初めてではなかった。

 彼は知っての通り、盗撮魔であり女子から何回も睨まれる立場にいる。

 そして今回も例のごとく、何枚か反省の意を込めて写真を削除させられていたらしい。

「でも僕はめげないさ、隙を狙ってちゃんと写真も撮っていたからね」

 本当にめげない男である。

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