申請却下
俺の通っている学校は部活動が盛んな学校だ。スポーツはもちろん、文科系部活動でも優秀な成績を収めていたりする。また学校側も自由な校風であり、多種多様な部活動の申請を許可している。
例えば、スポーツだとカバディ部があったりと、文科系は特に多く科学部は分野ごとに分かれていたりする。それもそのはずで、全校生徒が1000人を超える地域でも最大級の高校であるからだ。
それを統括しているのが、生徒会の部活動統括部門である。年に数回新しい部活動の申請があり、申請するには生徒会と先生の許可を有することとなっている。部活動を作るには条件があり。
1、学校生活において、勉学に支障きたさない部活であること
2、個人を尊重し、将来の糧となる部活であること
3、顧問を必ず1人つけること
4、5人以上の部活動であること(個人、同好会は認められません)
5、部費を個人的に不正利用がある場合廃部と処す
以上が我が転融学園において、部活動の条件である。
過去にこの条件を守れない部活もあるから、作られたそうだ。
そんなことも知らずに新しく部活動申請をしてしまったのは俺だった。
「部として認められない・・・?」
「はい、新規で部活動を申請される場合は5人以上で顧問と、こちらの誓約書が必要になります。この学校においてはそれが条件です。」
1年間帰宅部であった俺、月下光は新しく英雄部を立ち上げようとしていたところ。上級生である生徒会の部活動統括部門の白髪でショートカット、銀色のカチューシャで座っててもスタイルがいいのがうかがえる目が青い(ハーフ?)のが特徴の女の子、机には副会長と書かれている横に辰巳詩音と名前が書かれている看板の前でそう告げられた。
「5人以上ですか」
「はい、今月でもう5件目です。いいかげん、校則というものを読んでもらいたいくらいです」
「すいません・・・」
「それになんですか?この英雄部とは、映研ですか?」
「いえ、ヒーローについて語り、ヒーローのかっこよさを学ぶ部活です」
「学校にはいりませんね」
すぐに却下されてしまった。
「お願いします。英雄みたいになんでもできる男になりたくて、学校の何でも屋になりたいんです。」
「それならピッタリなとことがあります」
「なんですか、それは」
「生徒会の雑用係です、人手不足でしたので」
「いえ、お断りします」と断り、どうしようもないので、ここは失礼することにした。
失礼しますと帰ろうとしたときに声をかけられた。
「方法はありますよ、英雄さん」
「方法?」
「言いましたよね、5件目だって、つまり英雄になりたいのなら、他の4つの部活動をあなたがまとめて救ってあげてはいかがでしょうか?」
「つまりどういうことですか?」
「察しの悪いひとですね、つまりは部活動を合同でする合同部を作るんです」
「合同部?」
教室を出た後、俺は辰巳先輩から受け取った書類に目を通していた。
それは俺が申請した部活動よりも以前に提出したが、却下された4件の部活動申請の書類だった。先輩はどうやら面白そうだからコピーを取っていたそうだ。面白そうなら申請許可してあげればいいものの、規則は規則らしいので仕方がない。個人情報までもすんなり渡すもんだから、少し驚きはしたけれども、少し抜けているとこともあるのかもしれない。
「個人情報っていっても、クラス名と名前とどういう部活を申請したいのかくらいしか書いてないけどな」
放課後、まだ春先で寒いから空き教室であったかいコーヒーを飲みながら書類を一つずつみていた。
「まずは3年の緑鳥ひな 部活動は…、なんというかこれで通ると思ったんだろうか」
3年生で、残り学校生活も少ないだろうに、しかも校則もろくに知らないようだ。
「俺も部活動申請に関しては全然調べも知ろうともしなかったけど」
その緑鳥さんが申請した部活というのも
「BL部とはね」
BLとは、男性と男性による恋愛を描いた物語を指している。
さすがにBL部は我が学校にはないのはお察しだけど、漫画研究部はあるはず
「漫研ではできない理由があるんだろうか」
これは探ってみることにした。
「まあ本人に事情を聴くのは明日にするにして、他の申請も見てみよう」
そんなこんなで空き教室で一人書類に突っ込んでいたもんだから、誰かが先生に言いに行ったのだろう
『空き教室から不気味な声がする』と
この後、先生が来たときに、少し説教されて学校を後にした。
BL、俺も聞いたことがない言葉ではないけど、ボーイズラブの略で間違いない。
健全なる学校で行う部活動にふさわしいのだろうか疑問に思う。イメージ的にという意味でもあるけれど、これを合同部に統合したらどうなるのだろうかと考えながら歩いていると。
「なん・・・だと・・・」
日曜朝に登場しそうなコスプレ少女が公園に向かって歩いていた。
おそらく背丈は小学生くらいだと思われる。英雄好きとしてはそっち系のアニメも一応たしなむ程度には周知している。
「聖なる光に導きを!ホーリーライト!私はプリズムライト」
「おお・・・」
その少女は140cmくらいで、小柄で薄い青っぽい髪の色でサイドテールの髪形をしていた。その下は魔法少女そのものだった。
「こんな公衆の面前ですげえ」と感心していると、こちらに気づいたのか顔を赤くして
「ふわわあ・・・、失礼しました!!」と逃げて行ってしまった。
なんなんだろうと思った矢先、道路に飛び出していた少女は、右も左も確認せず飛び出したもんだから、左からくるトラックに気づいていなかった。
「危ない!!」
俺は一目散に走りその少女を抱きかかえるようにして向かい側の道路まで押し合った。
トラックはブレーキを踏みながら俺たちを通り過ぎた後、車を降りて
「大丈夫だったかい?けがはない?当たってないかい?」
30代くらいのおじさんが作業着姿で出てきた。
「大丈夫です、ちょっと転んだだけで、君も怪我とかない?」
「はい、大丈夫です。見たところ、衣装も体も平気です」
「ならよかった。でも一応万が一ということもあるから警察を呼ぶね」
「ふええ、お巡りさん呼んじゃうんですか?瑠璃が飛び出したからですか?」
少女は涙目になりながらおじさんに訴えていた。
「いやでも、もし怪我とか見つかったらおじさん逮捕されちゃうから」
俺も交通ルールについては詳しくはないけれど、事故処理というものはどこが起きたら一応警察に届けて、後日もし、怪我が見つかれば保険請求ができるんだっけ?
「とりあえず、わかりました。ほら君も」
「わかりましたです、でもこんな格好ですので」
「「あ~」」
思わずおじさんとハミングしてしまったけど、思い出してほしい。少女が飛び出した理由を。
公園に向かっていき、決め台詞を唱えた少女はかっこよく決まったところを俺に目撃され、恥ずかしがって、道路まで逃げてとびだした矢先におじさんのトラックにひかれそうになったんだ。
つまり、少女はまだ魔法少女の格好のまんまだったのだ。
とりあえず警察呼ぶねとおじさんが携帯から警察を呼び出していた。
待っていた俺たちはそれを待っていた。
「着替えとかないの?家はこの近くかな?」
「知らない人に個人情報は教えられないです。着替えはないです」
今どきのしっかりした子だと感心していたらほどなくして警察の到着。
俺たちは事故の状況と、お互いの連絡先の交換をした。
「何かあったら連絡してね、くれぐれも道路は飛び出したらだめだよ」
おじさんはトラックに乗って去っていき、警察もいなくなっていた。
あたりはすっかり暗くなっており、とりあえず
「もう暗いし、送っていくよ?」
「いえ、見ず知らずの人に送ってもらうわけには行かないですし、家はこの近くなので、心配には及びませんので」
「いや、君の親御さんにも一応、事故のこと伝えたほうがいいと思って」
「親にはさっき連絡したので、ご心配にはおよびませんので、さようなら」
そうしてその少女は去っていった。俺はある書類のことを思い出していた。
「そういえば、部活動の申請のなかに」
魔法少女部、申請者1年天宗瑠璃と書かれていた。
「まさかな、どうみても小学生だし、そういえば名前聞いてなかったな。事案になりそうだしやめとこ」
俺も再度怪我がないか確認し、家に帰ることにしたのだった。
翌日の早朝、登校中4枚の書類を見ながら、今日の目標を立てていた。
「とりあえず、3年の緑鳥さんに、接触してみますか」
放課後だと帰宅している確率が高いので、とりあえず学年とクラスがわかっているので、昼休みに一声かけてみるつもりだ。
教室に入ると俺の席には見知った友人、白石真我が独占していた。
「そこ、俺の席なんだけど」
「知っているさ、今俺はお前が寒くない様に席を温めていただけだ」
「気色悪いな、本当のところはどうなんだ」
「悪いな、ここでは人目があるからな、場所を変えよう」
そういうと俺たちは教室をでて、近くのトイレにいた。
「実はこれなんだが」
「これは、」
真我がスマホで見せてきたものは
「また増えたのか、お前のコレクション」
スマホに映っていたものは無数の女の子たちの写真だった。
「いいだろう?いや~また可愛い女の子たちが増えてくるよ」
見た目はイケメンなのだけれども、真我は女の子を写真に撮って集めるのが趣味な変態なのである。
こいつとは1年からの中なのだが、1年の時にその趣味を知ってしまい腐れ縁となっている。
「こんなものどうやったら撮れるんだ」
「おお?知りたいか?ならば教えてあげようじゃないかわが友よ」
「いらん、ローアングルな撮り方なんて知りたくもない」
「んだよ、お前もお仲間になるかと期待していたのに」
彼の趣味は少し変わっていて可愛い女の子を(特にローアングル)で盗撮しているのである。
今までばれたり通報されるものだから、数名の女子は残念なイケメンと呼ばれていたりする。
「てか、こんなに撮るの上手いなら写真部入ったらどうなんだ?真っ当な写真が撮れると思うぞ」
「おいおい、光さんよ、僕は可愛い女の子をこの中に収めたいだけで写真を撮るのが好きな写真部の人と一緒にしてもらっては困る。ならいっそ盗撮部とか作ってもいいんだけど」
「それは副会長さんに怒られる案件になりそうだ」
昨日の辰巳先輩からの様子だし、真我みたいな盗撮魔の部活なんて許可したら学校のイメージが損なわれてしまう。
「それはそうと光よ、お前が昨日申請した、英雄部?だっけ?どうなったの?」
「ああ、あれな。見事に却下されたよ。人数が足りないからだとさ」
「そうかー、僕が頭数でも入ってあげたいが、コレクション収集が忙しくてな」
俺は呆れつつも、そうだよなとしか言えなかった。
「まあ本当に困ったら幽霊部員でもなるさ。でもあまり残念そうに見えないな」
「ああ、実は俺以外にも1人で申請してきたのが4人いて、つまり合同で部活してはどうだってもちかけられたんだ」
「合同部活動か、面白そうだね。なら盗撮部も夢じゃないのだな」
「いや、本気だったのかよ」
「冗談だよ、でもそれならよかったな。せいぜい頑張りなよ」
「おう」
俺たちは朝礼が始まるまでに教室に戻ろうとしてトイレを出たときだった。
誰かからの視線を感じだ。でも周りには誰もいなかった。
おそらくは気のせいだと考えていた。
「若い男子が一緒にトイレ…、これはいいネタがまたできたわね」