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カルテNO.4 前田(魔法使い)8/10

 8

「あなたは高校二年生に進級しました。何が見えますか?」


 催眠状態の前田に、医師が質問する。


「校舎の裏に呼び出されて……」


 前田は、つらそうに顔をゆがめる。


「油性ペンで…… 顔に落書きされています……」


 催眠状態での治療は今回で三度目になるが、前田に対するいじめが、高校に入ってからエスカレートしている様子がうかがえた。


 つらい記憶を呼び起こす作業は、前田に強い精神的負担をかけている。医師は慎重に前田の様子を観察しながら、質問を続けた。


「他には、何か見えますか?」


 医師の問いに、前田の手が小刻みに震えた。額には汗が浮かぶ。


「私の…… 制服が……」


 精神的に、限界が近づいている。医師が催眠状態を解除しようとしたとき、前田が「破れて…… います」と言った。


「制服が破れている……?」


 解離性健忘の発症との関連性を匂わせる言葉に、医師はもう少し質問を続けることにした。


「制服は、どうして破れてしまったのですか?」


「体育の授業中に…… 破られていました……」


   ※※※


 その後の聞き取りにより、結局その日はジャージを着たまま授業を受けたこと、その後数日間学校を休んだことなどが明らかになった。


 また、高校三年に進級すると、進路や成績などでクラスの再編成が行われ、前田に対するいじめも自然になくなっていったようであった。


 医師は、前田の催眠を解除した。


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