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カルテNO.4 前田(魔法使い)1/10

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「この人たち、私が魔法使いだとか言って、後を付け回すんです。なんとかしてください!」


 シンオウメンタルクリニックの診察室で、女性が眉間にしわを寄せて訴えた。


 診察室には、医師と女性の他に、若い男と白い顎ひげを蓄えた老人が立っていた。


「えーっと、前田さん? 順を追ってお話しいただけますか?」


 医師は困惑して聞いた。


「すいません……」


 前田と呼ばれた女性は、申し訳なさそうに下を向く。


 代わりに、若い男が「僕たち、パーティーを組んで樹界深奥に潜っていた仲間なんです。なのに、前田さんが急に僕たちのことを知らないって言い出して……」と話した。


「そうなんですよ。いつものように、一緒にダンジョンに潜ろうと誘いましたら、おびえた顔で『あなたたちは誰ですか』と聞かれました」


 若い男の話を、老人が引き継いだ。


「仕方がないので、その日はあきらめて引き上げたんですが、後日誘ってもやはり私たちのことは知らないと言う。そうこうしているうちに、私らストーカー扱いをされてしまいまして、警察沙汰にもなったのです」


 老人は、寂しそうに首を振りながら言った。


 前田は、「だって、あなたたちがあまりしつこいから……」と、男たちを振り返って非難の声を上げた。


「まぁまぁ、それで、どうしてうちのクリニックへ……?」


 医師の質問に、前田が「私はストーカーの被害者なのに、警察は信じてくれなくて、心療内科で相談したらどうかって……」と言って泣きそうな顔になった。


 男たちは困った顔で、「いや、警察も、我々の言い分を信用したわけではないんですよ。ただ、彼女と我々の主張が平行線だったので、これ以上警察でできることはないと判断されてしまったようでして……」と言った。


 医師は「なるほど……」と言って、腕を組んだ。


 医師の見たところ、前田も、男たちも嘘はついていないようである。


 あるいは、男たちが結託して前田を陥れようとしているのかもしれないが、そんなことをして一体どんなメリットがあるというのだろうか。


 すでに彼らは警察にも出向いているわけで、男たちが犯罪に絡んでいる可能性は低そうである。


 ということは……


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