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番外編 クリストフ 2

クリストフがセシリアと出逢ってから色々あって、クリストフは無事学園を卒業して、騎士団に入団した。


騎士と言っても、新人はほんとに下っぱで、ほとんど雑用をしている。


セシリアは王宮魔術師団に入団した。


同じく城で働いているのに、全く会えないことにクリストフはイライラが溜まっていった。


エカテリーナに聞いたところ、セシリアは魔術師団の中でも特殊な、魔道具製作研究班に所属していて、ほとんど城の中を出歩かないらしい。


それを聞いたクリストフは愕然としたが、逆にセシリアが他の者の目に留まらないことに安堵した。


なんとかセシリアに会えないだろうかとエカテリーナに相談すると、ルードヴィヒの妻になったエカテリーナはしばらく固まり、何故か真っ赤になって倒れた。


怒ったルードヴィヒに追い返されそうになったが、気がついたエカテリーナに大変いい笑顔でセシリアと会えるようにセッティングすることを約束してもらえた。






数日経ったある日。

エカテリーナから連絡が入り、セシリアと街に買い物に行くことになった。

どうやらセシリアは休日もずっと研究をしていたらしく、久々に買い物をする気になったらしい。

それのエスコートと護衛を頼まれた。


クリストフは色々とセシリアを連れて行く店を吟味して、楽しい気持ちのまま当日を迎えた。


セシリアが普段生活している魔術師団の寮まで迎えに行く。


寮の出入り口に、セシリアが立っていた。


ふわふわの金髪はゆるく三つ編みにしてラベンダー色のリボンで束ね、リボンと同じラベンダー色のシンプルなワンピースを着ている。


クリストフに気づき、セシリアは軽く手を振った。


(理想のデート!)


クリストフはだらしなく緩みそうになる顔をなんとか引き締めて、セシリアに近づいた。


「久しぶり。ごめん、待たせて」

「お久しぶりです、クリストフ様。今来たところなので、それ程待ってませんよ」


クリストフの挨拶に、セシリアは笑顔で返す。


(わー!定番のセリフ!)


ひとり感動しているクリストフを置いて、セシリアは歩き出す。


「わたし、今日欲しい物が結構あるんですよ」

「あ、そうなんだ?どこから行く?」

「そうですねー、まずは小物から」

「じゃあ、雑貨屋に行こうか」


話しながら並んで歩くことさえ、クリストフは嬉しかった。


街まで歩き、ゆっくりと雑貨屋を探す。


「あ、あそこに入りましょう」


セシリアが指差す店は、そこそこ大きい落ち着いた雰囲気の雑貨屋だ。


二人が店の中に入ると、そこかしこに色々な商品が並べられぶら下げられ、少し目がチカチカする。


セシリアはさっさと目当ての物を見つけ、手に取って吟味する。

セシリアが見ているのは、なんの変哲もない肩掛けの布製バッグだ。


クリストフが口を挟む前に、セシリアは淡い緑色のバッグに決めたらしく、それを持って店の者がいる方へ歩いて行く。


そしてそのバッグを買うと、セシリアはクリストフの近くに戻って来た。


「さ、次に行きましょう」

「あ、うん。……………ん?」


セシリアは店を出ると、少し道の端で立ち止まり、バッグを手に何かをした。


「何したの?」

「最近、研究が成功したんですけど、バッグの内容量を増やしたんです」

「んん?」


首を傾げるクリストフに、セシリアは解らなかったかと更に説明してくれる。


「えーと、容れ物の中の空間を拡げる魔術でして、見た目より沢山入るようになります」

「へー。凄いね!」

「ええ!量産出来るようになったら、いろんな人達が助かると思います。例えば、商人は商品を運ぶのに、重い物を沢山運べるようになります」

「そうだね。よくそんな事思い付いたね?」


クリストフが感心して言うと、何故かセシリアは一瞬狼狽えた。


「ええ。その、わたし、読みたい本を沢山買った時に一度に運べたらなぁって思ったんですよ。そこから、バッグの中にもっと入らないかしらって考えて、それで」


クリストフはセシリアらしいと微笑んだ。


「セシリア嬢の使う魔術は、面白いね」

「欲望を叶える為のもの、と考えてます」

「セシリア嬢の欲望は、ずいぶんとささやかだね」


笑ったクリストフに、セシリアは微妙な表情になった。


「…………そうね。一番の望みは、叶ったから」

「え?」


クリストフがセシリアを見ると、セシリアはにっこり笑った。


「わたしは、エカテリーナをどうしても助けたかったんです。これは、ルードヴィヒ様にも話したんですけど、エカテリーナはわたしが昔助けたかった人に似てるんです。エカテリーナに初めて会った時、驚いたんですよね。あまりにも似ていたから。エカテリーナと仲良くなって、エカテリーナはあの子とは違うってわかったけど、あのクソ王子の所業を知って、今度はエカテリーナを守らなくちゃって」


セシリアは苦笑してクリストフを見上げた。


「それと、エカテリーナには幸せになってほしいから、ルードヴィヒ様とのことを応援したんです。クリストフ様には、悪いことしたなって思うんですけど」

「…………ん?」

「あれ?」


セシリアの言葉にクリストフは首を傾げ、それを見てセシリアも首を傾げた。


「あー、えっと、待って。セシリア嬢は、もしかして僕がエリーを恋愛的な意味で好きだと思ってる?」

「はえ?違うんですか?だって、学生時代散々エリーに会いに来てたし。わたし、てっきり」

「えええ?!違うからっ!」


セシリアに誤解されていたと知り、クリストフは慌てた。


「僕が好きなのはセシリア嬢だし!」

「……………え?」

「あっ」

「………………」

「………………」


勢いで告白してしまい、クリストフは焦って口を閉ざす。

セシリアを見ると、セシリアは固まっていた。


そして、ボン!と音が出そうな程急に真っ赤になり、セシリアはしゃがみ込んでしまった。


「大丈夫?!」


クリストフも慌ててセシリアの横にしゃがむ。


両手で顔を覆っていたセシリアは、手の隙間から潤んだ目でクリストフを睨んできた。

しかし、クリストフはそんなセシリアが可愛くて、顔がやに下がってしまう。


「勢いで言っちゃったけど、本当にセシリア嬢が好きなんだ。あの、もっとちゃんと準備してから言うつもりだったんだけど」

「……………………た」

「え?」

「ビックリした。けど、嬉しかった」

「えええ?!」


クリストフはセシリアの小さく細い体を抱き上げた。


「ちょっと?!」

「嬉しい!ありがとう!大好き!」

「うっ!…………その、わたしも、ありがとうございます。こんな女らしくないのを好きになってくれて」

「えー?セシリア嬢は可愛いよ」


満面の笑顔でクリストフが言うと、セシリアは困ったように笑った。


「わたし、ワンコに弱いのよね」

「ん?」

「えっと、クリストフ様」

「クリフって呼んで」

「あー、それだとエリー達と同じだから、わたしはクリスって呼ぶわ」

「うん。僕は、そうだな、シリーって呼ぶよ」

「AIか」

「え?」

「ううん。えっと、クリス。クリスは、わたしと結婚したいと思ってる?」


首を傾げるセシリアに、クリストフは笑顔で頷く。


「もちろん!…………え?シリーは、僕との結婚は嫌?」

「そうじゃない。わたし、結婚しても働きたいの」

「あ、うん。いいんじゃない?」


頷くクリストフに、セシリアは目を丸くする。


「別に、僕は奥さんが働いてても気にしないけど。家の事は分担するとか、家政婦を雇うとか、色々方法はあるし」


腕の中でセシリアがじっとクリストフを見つめてくるので、クリストフは笑ってぎゅっとセシリアを抱き締める腕に力を入れる。


「僕はね、シリーを幸せにしたい。シリーにずっと笑っていてほしい。だから、シリーが働くことが幸せって言うなら、反対はしないよ」

「………ありがとう」


クリストフはそっとセシリアを降ろして、セシリアの手を取る。


「僕と結婚してください」

「はい」


頬を赤く染めて笑うセシリアは世界一可愛い、とクリストフは後々まで思った。


読んで頂きありがとうございました。


クリストフ篇は一応終わりですが、番外編はもう少し続きます。


機械オンチというか、ネットに慣れないというか、小説のページから作者検索が出来なかったみたいで、申し訳ありませんでした。

ちゃんとマニュアル読んで直しました。

やっぱり取り扱い説明書はよく読まないと駄目ですね。


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