ちょっと短い話を。
本編は完結しているので、毎日投稿します。
宜しくお願いします。
消えゆくものとわかっていても、どうしようもなく、愛しい気持ちも、叫び出したくなるような、狂おしい想いも、切ない記憶も、全て刻みつけて、残したかった。
自分自身でさえ、消えゆくものと、理解していた。
だから、だろうか。
ぼんやりと目に映るものが、夢まぼろしだと思い、再び目を閉じた。
「…………た?」
「いや、……………だ。まだ、……………」
「………なんだ。……………で?」
遠くで、誰かが話している。
(うるさい。まだ、寝ていたいの)
「だって、もう五日も目を覚まさないって、おかしい」
「…………昨日、一度目を開けた」
「え?!なんでそれで起きないの?」
「わからない。熱は下がったが、まだ、どこか悪いのかも」
「ええ?!医者はなんて?」
「異常なし、と」
「ヤブ医者め!」
どうやら、男性が二人、会話をしているようだ。
しかも、すぐ近くで。
頭が覚醒したので、目を開けようかどうしようか、迷う。
身体は、何故か重く、指を動かすのがやっとだ。
「あれ?今、手が動いた?!」
「っ!?エリー!」
(え?なんか、わたしが呼ばれてる?)
ぎゅっと手を握られて、仕方なく目をうっすら開けた。
目の前に、イケメンがいた。
もう一度目を閉じる。
「エリー!?」
「目を、開けてくれ」
(そんなに必死に呼ばれても………。あれ?さっきのイケメン、見たことあるんですけど?誰だっけ?)
右手を強く握られ、痛みで眉が寄る。
「苦しいのかい?エリー」
「…………痛い」
目を開けて、右手を見た。
自分の右手を握っている腕を辿ると、すぐ右側にいる青年に着いた。
黒に近い深紅色の髪、蒼い瞳、整った顔。
真剣な表情で、見つめられている。
(やっぱり、どこかで見たような?)
「良かった!エリー!」
声の主は、深紅色の髪の青年の横にいる、もう一人の青年だ。
青紫色の髪、藤色の瞳、やはり整った顔。
(あれ?この人も見たことある?)
自分が寝ていることに気づき、身体を起こそうとするが、力が入らない。
「…………あの、ここ、どこですか?」
「え?!」
「あなた達は、誰?」
「っ!?」
青年二人は、目を見開いて固まった。
読んで頂きありがとうございます。