紅牙のオグロ
「出てこおおおおおおおおおおい」
突然家の外から大声がきこえた。
オグロは瞬時に相手がやり手だと確信し相方と呼んでいる戦斧を背負った。
ユンレイは詠唱術に入った。
アイーラとこうたはどうすることもできずに突っ立っていたが二人ともすぐに正気を取り戻した。
食べかけの夜ご飯がお皿からこぼれる。
オグロはユンレイに
「、、攻撃はしてこない。外で和解をする。」
と言ったが生きて帰れる確証はない。
ユンレイは必死に止めるがオグロはユンレイに
「、、蹴りをつけなければいけない時が来た」
と伝えるとユンレイは
「アイーラとこうたは任せて!」
と背中を押した。ユンレイは絶対オグロに行ってほしくないのになぜ?
とアイーラは不思議になった。
オグロが家から出るとユンレイは
「奴らに気づかれないように旅の準備をしなさい!!」
とアイーラとこうたをせかした。
「やっと出てきたか」
最初に口を開いたのはカルス卿だった。
「なぜ鬼の国一番の戦闘力がありながら魚人や人間と平和ボケした生活してるんだ!!」
「紅牙のオグロはどこ行っちまったんだ!!」
と後ろから声が聞こえる。
「、、アカマル。カンベエ。他も。久しいな。」
後ろの鬼たちは険しい形相になる。
答えになっていない回答に腹が立っているのだろう。
かつて、国を引っ張っていた鬼の中の鬼が今では人間と魚人を守っている。
情けないにもほどがある。
「今からでも後ろにいる人間と魚人を食い殺せるならばこちらに戻れる」
カルス卿がオグロに手を差し伸べる。
「その質問は必要ない。」
オグロは背負っていた戦斧を構え息を吐き『鬼』になる。
皮膚が鎧のように頑丈になり。
角が大きく出てくる。
膝関節と肘関節からは赤い骨が出てきて関節を覆った。
普通の鬼にはできない『鬼』はカルス卿の後ろにいる暗殺部隊の鬼を圧倒した。
「この人数の国お抱えの特殊部隊だ。勝てないはずがない。なぜかばう?家族なんてものではないだろう」
カルス卿が信じられない出来事に疑問を投げかける。
「家族ではない。愛してもない。助けたから生かす。それだけだ。」
アイーラとこうたは信じられないことを聞いた。
「ふざけるな!!!!オグロ!!!!」
アイーラは飛び出した。
何も考えずに。こうたの制止をを振り払いオグロの目に止まるところまで出た。
「あいつらだ。殺せ。」
カルス卿がすぐさま後ろの鬼に伝えると鬼たちはアイーラに襲い掛かる。
アイーラはオグロに夢中でよけられない。
オグロがアイーラを助けようと動くが無理がある。
こうたは腰を抜かしている。
「私を誰だと思っているのぉ」
ユンレイはアイーラを見たこともない透明な物体で守った。
いつからそこにいたのだろう。
「鬼ごときにやられてはだめよぉアイーラ」
その目は怯えていた。ユンレイに戦闘能力はない。
アイーラとこうたは自分たちの戦いにオグロとユンレイを巻き込んでいるのを理解した。
「こうた!アイーラを連れて逃げなさい!道は私が教える!」
ユンレイはこうたが聞いたこともないような声で叫んだ。
初めてユンレイを見たときのようなおっとりした雰囲気はどこにも見えない。
「いやだ!!!私は戦える!!!私は逃げない!!!」
アイーラは自分の武器を抜き構える。
足の震えがとまらない。
この瞬間にもオグロとユンレイは戦っている。
一人、また一人、と倒れてはいるものの、傷をつけられている
「アイーラ!逃げろ!!」
最後の記憶はオグロが自分に向かって手を伸ばした姿だった。