出会い
オグロ 赤鬼、無口、武術に長けてる。
ユンレイ 容姿端麗な魚人、知識に長けている。
「おいユンレイ、知ってる顔か?」
「馬鹿ねぇ、池から出れない私になんで聞くのよ。アホなの?」
「でも可愛いじゃない、、」
目を覚ましてすぐの記憶は悲惨なものだった。
声が枯れるまでこうたと叫び、手元にあるものをすべて投げ、必死に自分の身を守ろうとした。
人食いの鬼が自分を食べようとしている。
その爪も牙も眼差しもすべてが敵だった。
アイーラは『ここで死にたくない』と心から思った。
私とこうたは商人の荷車から飛び降りて茂みに入った。
歩いて歩いて、倒れるまで歩いた結果
目の前にいたのはお『鬼』だった。
こうたと私は暴れたが、鬼は私たちに
「人間なんておいしくもねぇのに誰が食べるか」
「出ていきたいならさっさと出ていきな」
と言い放って部屋から出えていった。
私とこうたは人間以外の種族を生まれて初めて見た。
孤児院には本がほとんどなかった。
みんな本なんて読まなかった。
こうたを除いては。
「鬼は人間が大好物なのに、食べないってどうゆうことなんだろう」
アイーラは信じられなかった。
鬼を目の前にして疑問などもてない。
なぜ逃げないのか。
こうたの知識欲に心底驚いた。
「あーらぁ、少しは見込みのある人間がいあたものねぇ」
どこからか女性のねっとりとした声が聞こえた。
「窓から顔を出してごらんなさぁい」
そそくさと動いたのはこうただった。
私は動けずにこうたを見ていた。
「あら、男の子のほうが来たのね、意外。教えがいがありそうでなによりだわぁ」
「私の名前はユンレイっていうのぉ。よろしくねぇ」
ユンレイは魚人で外の池から顔を出してしゃべりかけていた。
彼女曰くあの鬼はオグロというらしく。
私たちを助けたのはそいつらしい。
悪いやつなのかいいやつなのかわからない。
こうたは興味津々に魚人の話を聞いている。
私の緊張は一気にほどけた。
あれから3年
ドスッドスッと思い音が庭に響く
「おい、蹴りが甘いぞ。もっと腰を入れろ」
「うるさい!わかってる!」
本が一面を覆う部屋には少年がせかしなく動いている。
「ユンレイさん、これは何語ですか?歴史の本なのはわかったんですが、、」
「あら、こうたやるようになったわねぇ。これは鳥人族の歴史を記した本よ。」
しかし、こんな関係になるとは思いもしなかった。
オグロは私に武術を。
ユンレイは作ってもらった動く水槽でこうたに知識と教養を教えている。
生活にはだいぶ慣れた。
オグロとユンレイは私たちについて詮索はしないし、私たちは二人のことを詮索しない。
鬼と魚人が二人で山奥でひっそりと暮らしているんだ、何かしら訳はあるだろう。
オグロは本当に人間を食べない。魚や牛肉がほとんどだ。
ユンレイは体型維持のために干した海藻を食べている。
二人は人間が野菜しか食べないものだと思っていて、肉を食べたいと伝えたときは驚いていた。
私はオグロに徹底的に武術を教えてもらった。
私は知りたい。人間がなぜ養殖されてまで鬼に食べられなきゃいけないのかを。
孤児院の仲間は大切だった。大好きだった。
今でも人間は食べられていると思うといてもたってもいられない。
「おい!オグロ!お前が履いている靴は武術用なんだろ?私にもくれ!」
とたんにユンレイが叫ぶ
「ちょっとぉ!アイーラ!!なんて言葉使いなのなおしなさぁい」
最近はすぐ注意してきて耳にタコだ。
オグロはため息をつきその場を去った。
「もう、アイーラ?あなたまた水浴びさぼったわね。匂うわよぉ」
まず水浴びなど冷たくてやってられない。すっきりしたいときに仕方なく入るぐらいでいい。
「うるせっ。筋トレしてたんだよ。一日でも早くオグロを倒したいからな」
と、お決まりの嘘をつく。
「ふふふ。いい目標じゃなぁい。でもあなたは女なんだからねぇ。女の術も身に着けなさぁい」
あんな重く、動きずらい服を着てややこしい動きをするのはごめんだ。
「ヤダね、私よりも女らしいこうたに教えときな」
「もう、、」
ユンレイは毎度あきれた顔をするが一向に諦める気は見えない。
「ユンレイさあああああん!!」
「あら、見つかっちゃった。最近しつこいのよねぇ」
いや、しつこいのは人の事言えんだろうと思うがユンレイを敵に回したら大切な夕食に影響が出るのでそっと飲み込んだ。
私もこうたも身長が伸びて体格や声に変化が出てきた。
こうたは私の身長をそろそろ超す。
私は出るところが出てきて自分がほんとに女だったことに驚いた。
髪はユンレイが切るなとうるさいのでうっとおしいが伸ばしている。
こうたは眼鏡をいつからか掛けるようになった。
その効果か、転ぶことが少なくなった。
ユンレイは私に『女』を教えようと頑張っているが合わないにもほどがある。
ユンレイ曰く「宝の持ち腐れ」らしいが何とでも言え。放っておくのが一番だ。
家の裏にある井戸に水を汲みに行く。
昔、ここにも他種族がいると思って井戸に一人でしゃべりかけてユンレイに爆笑されたのを覚えている。
あとこうたをいじめてて本を落としてオグロにまさかの「俺の本だ」って怒られたときは死を覚悟した。
最初はオグロの無口さに警戒心を持っていたが、私のためにこん棒を作ってくれた時は何かを察した。
あれが何なのかはわからないがそれから話すようになった。
私の体格にあった訓練や術の教え方はオグロの強さがにじみ出ていた。
そんなオグロになりたいと思うが同時に倒したいとも思う。
この気持ちをこうたに伝えたら『反抗期』と言われた。反抗しているかは謎だが。
水汲みが終わる頃、ちょうど家から
「アイーラ!早く水を持ってきてぇ!」
と呼ぶ声が聞こえる。これが孤児院の中で憧れていた『家族』なのかもしれない。
今の
この生活がとても心地よい。体の芯が温まる。
これが家族なのか。あの憧れた家族、、、
「あれ、アイーラどうしたの?なんでにやにやして顔赤いの?」
「うっるせええええええええええええ!!!!!!」
クッソ!こんな時に限ってなんで察しがいいんだよ!!
あとで教えてやるからもっと小声でゆってくれればよかったのにいい!!!!
「こらぁ、言葉使い~」
「、、、、、今日の飯はなんだ?」
ユンレイとオグロは相変わらずの雰囲気で少し安心した。それが二人だ。
「おい!オグロ!明日は足技で対決だ!」
とアイーラは足を高く上げオグロを挑発する。
「、、お前、今日の修行で足痛めただろ。明日は体力作りだ」
さすがオグロだ、隠しても気づかれる。
するとこうたがアイーラの肩をつかみゆさゆさと揺らす。
「ええ!アイーラけがしたの!?早く言ってよ!」
「大したことないって!!」
これだから言いたくなかったのだ。
だけど
この生活はわるくない。