逃亡
小さい村でこうたを見つけるのは簡単だ、こうたはあきれるほどどんくさい。
戦争ごっこでは一番最初に捕虜になるし、よく転んでよく泣く。
一回アイーラが転んだ時にこうたが心配しすぎて泣いたときはさすがに引いた。
だから手形と膝の跡が残っていればそれはこうたのだ。アイーラはよくこの探し方でこうたの居場所を把握する。
ドアをたたき無理やり家のへと入る。
こうたの両親は驚いていたが邪魔をするような真似はしなかった。
こうたの部屋を開けると目をこすりながらしながらのんきに「どうしたのー?」と聞いてくるこうたがいた
「こうた!!わたしだよ!ねえ!!」
アイーラは寝ぼけるこうたを引っ張りまわし、こうたがちゃんと返事ができるまでこうたの頬をもみくちゃにした。
「えっ、アイーラ?なんで僕の家にいるの!もしかしてアイーラも家族に!?やったなぁ僕寂しかったんだ!」
「私のお父さんとお母さんが鬼を呼ぶの!こうた!!私のお父さんとお母さんは違ったんだ!」
アイーラはこうたの話を最後まで聞かないまま話し始めた。
あふれだした感情を抑えることなくアイーラは泣きはじめ、こうたは慌てていたが少しするとアイーラに胸をかしていた。背中を撫でてくれるこうたがアイーラは好きだった。
普段は頼りないくせに、と孤児院で遊んだ記憶がよみがえる。
いつの間にか気持ちが落ち着き呼吸も整ってきた。
だんだんとこうたの部屋の外でこうたの両親が慌ただしくしているのに気がついた。
「大丈夫!僕のお母さんとおさんは僕たちの味方だよ。」
とこうたは言っているが、どうしても気になってこうたの部屋にある窓から少しだけ顔をのぞかせた。
こうたの部屋は二階で見晴らしがよく暗くても何か外が騒がしいくらいはわかる。
外ではこうたのお母さんがお父さんに
「くれぐれも気をつけて!業者さんに日にちを速めてもらうとはいえ、夜道は危ないからね」
と言っているのを聞き、のんきに寝てるこうたをソーっと見た。
「なあに?」と聞くこうたに何を言っていいかもわからずにとりあえず
「今からここを出る。こうた!早く着替えて!」
突然のことにこうたは顔をかしげて
「何言っているの?」
と聞くがそんなことを無視して下に降りれるまでの長い何かを探す。
こうたは相変わらず状況が呑み込めてなく、アイーラにしきりに話しかけるがアイーラは長い何かを探すので手がいっぱいで質問に答えていない。
「やああああだあああああ」
突然泣き出したこうたにアイーラは怒りを隠せず。
「私は死にたくないから逃げる!こうたも行くの!早く準備して!」
と叫ぶとこうたは肩を震わせながらゆっくりと準備し始めた。
「さっきから物音が聞こえるけど大丈夫なの??」
こうたのお母さんが階段を上ってくる。今逃げたらすぐ見つかって捕まってしまう。
ドアを開ければ自分たちが逃げる準備をしているのは一目瞭然だ。
「こうた君?お友達ももう寝なさい?」
そういいながらドアを開けて入ってくるこうたのお母さんにアイーラはこうたの部屋にある分厚い本を片手に間合いに入った。
というより、ベットの上から首を狙って思いっきり振り下ろした。自分でも成功するとは思っていなかったし反撃覚悟の攻撃だった。意外にも攻撃はうまくいきこうたのお母さんは気を失った。
何とかこうたのお母さんをベッドの下に押し込めた。これだと出るのに時間がかかる。
こうたの着替えがようやく終わり急いで玄関から出る。
人がいなさそうな家と家の間をくぐりぬけながら近くの森の中に入ろうとした。
最後に通った家の入口に大きな袋がたくさん積んである馬車を見つけた。涙目ですんすん言いながらこうたが
「そういえばこの家の商人さんが明日荷物を出荷するって...」
アイーラはこれしかないと思った。