平常
誰も喋りません。ここで作品を別タイトルへ移します。
続きはそちらから。
8月31日。夏の終わりを迎える日
8月30日をほぼ寝過ごした俺は明日から始まる学校の事をぼんやりと考えながら紅茶を飲んでいた。
紅茶を飲むと心が落ち着く。なにか焦る訳でもないのに、明日学校じゃん!どうしよー。という謎の焦りを抑えて頭を冷静にしてくれる。
しかし学校というのは本当に嫌なものだ。
勉強という苦行を約一時間×6、7回もしなければならないし、他人とコミニュケーションをとらねばならない。ほぼぼっち同然の俺には辛い要素だらけである。
他人と喋るのが苦手という訳ではない。
人の考えてるであろう事を先読みし、相手に合わせ、ただ相手にとってプラスに感じる意見を言ってニコニコしてれば大抵の場はとても簡単に切り抜けられる。
学校という単純で幼稚で楽しけりゃいいみたいな社会ではたったこれだけでなんの問題も無く暮らせる。
俺に他人と会話する時に足りてないスキルといえば90%本心からはずれている言葉を口走るということぐらいだ。
例えばクラスの人気者が高得点を取ったと自慢していると必ずこう言うヤツがいる。
やっぱ○○は才能あるな、と。それに俺はこう答えている。本当そうだよな、と。
勿論、本心では全く違うことを考えている。
何が才能だ。お前は点数を聞いただけでそいつの才能を見抜けるのか。それはそれは、素晴らしい目をお持ちですね、と。
たぶん彼らの使う、才能があるという言葉の意味はきっと、あなたはすごいですね。という意味だと思う。
人の苦労の結晶を才能と思い込むことで自分もできると思いたいのではないだろうか。
まぁとりあえずそれくらいのことを思いながら会話するというのは辛いものなのだ。
それに誰かと関わるということはその誰かの周りの人にも関わるということでありそれは総じて厄介事の種である。だから学校というのは辛い。
そんなことを考えながら部屋全体をぼーっと見渡す。夏休み最後ということだからなのか我が家に何かしらの変化が欲しかった。
が、勿論なんの変化も無い平凡な我が家があるだけだった。両親は仕事であり姉はもう学校が始まっている。我が家には俺と妹だけである。その妹は俺の目の前、リビングルームで何かのゲームをしている。歌が聞こえてくる事とシャンシャン鳴る効果音と指がやたらと忙しく動くという点から音ゲーと推測される。
現在12時丁度。お昼の時間である。母が作り置きした昼飯をいただかなければ。




