殺人軍隊
唐突だが、人はなんのために集団を作るだろうか?
その疑問を頭の中で思った瞬間いくつかの意見を思い付く。今まで何度も考えてきた事だからだ。
安心するため、共通の敵を倒すため、情報を共有するため等、まあ大抵の場合は一人ではできないことを手伝ってもらったり、集団で楽しみを共有するためだといった理由だと思う。
学生の場合主に後者が当てはまる。友達というやつだ。
だが、俺の中での答えはこれだ。自分を守るため。
これは人間にだけ言える物ではない。生物全般に言える事だ。
敵から己に身を守るため、自分の精神を安定させるため、武士とかだと家を守るためだとかだ。他者を攻撃するのも自身の命や平穏を、子孫を守るため、所謂、防衛をしているのだ。つまりすべての生物のとる行動は何かを守るための行動だという事だ。
が、唯一守ることを目的としない行動をとる生物がいる。何を隠そう我々人間である。人というのはある程度地位を持つと本当に何もすることが無い時、完全に無害で利益も無い人間に牙を剥く事がある。何も理由がないただの理不尽。そこには生物としての姿も無ければ人の気高い心すらも無い名状しがたいなにかがある。
何故こんなことを考えているのかというと、妹の余鈴の宿題である人権作文のネタを聞かれたからだ。
内容はいじめついてのものだった。
「お兄ちゃんなにぼーっとしてるの?」
色々と考えている所を妹に現実世界に戻された。
「つってもな。いじめなんて人に負の感情がある限りなくならんだろ。誰かをいじめた事のある奴は死刑っていう法律作っても多分無くならんぞ。」
「でも他のやつよりは書くの簡単じゃん。」
妹の通う小学校はいくつかの選択肢からえらんで書くタイプの人権作文であり、他のやつと言えば障害者についてとか犯罪についてとかだ。
「実体険のある人も居るし。」
「おい。」
手に持ってたシャーペンで妹の頭を軽く叩く。お、いい音。
痛っ!とか言って頭をおさえながらこちらを上目使いに見てくる。
これがよその子だったり二次元だったりすると可愛かったのかもしれないが妹という近し存在だからなのかまったくそんな気はしない。俺の妹は周りと比べるとずば抜けて顔はいいはずなのだが普段の生活態度などがたびたび女らしくないせいか、とても可愛いとは思えない。ほんとなんで二次元の妹キャラってあんなに
可愛く見えるんだろうね。
「じゃあもういじめは良くないですって連呼しときゃいいだろ。具体的な対策なんてあんまり期待されてないだろうし。」
はるか昔から恐らくあったであろういじめという文化に今さら俺たち程度が革命を起こせる訳もない。
なにか思い付きそうもなかったので俺は妹のいるテーブルを跡にした。
いじめは決して無くならない。人という生物から感情そのものを取り除いたりでもしない限りこの世から、決して。さっき頭の中で人の心を気高いといったな。あれは嘘だ。
人間ほど薄汚れた生物はこの世には存在しない。
だってもし人が気高く高潔な魂を持つなら俺はあんな心の底から意味の無い悪意を向けられる事は無かったはずだ。
俺はその悪意を向けた奴等を憎んでいる。彼らが居なかったら俺は心の中でこんなこと考えることは無かったからだ。だが、それよりも自分を憎んでいる。こうやって他人のせいにして平穏を諦めている自分を恨んでいる。
お
俺はまた色々考えて疲れるのは嫌だったのでソファに寝転んで昼寝をすることにした。明後日には二学期が始まる。また苦行の毎日が始まるのだ。
いつもは二十分は寝付けないのだが、今日はなぜかすぐに夢の世界に入ることが出来た。




