永原英治は静かに暮らしたい
夏の朝、清々しいほどに晴れた空を一瞬直視し、目を焼かれたことによる不快感と心地よい睡眠がとれた事で感じる爽快感とが合わさって何とも言えない気分になりながら俺は読書をしていた。
学生であるからなのか常にうるさい環境にいるのでこういった静かな空間で何かに熱中するというのはとても気分がいい。
人というのは常に安心や平穏を求める生き物だ。人に限った話ではないが誰だってどこから何が来るかわからないような状況には身を置きたくないもんである。故にこういう場所だとすごく落ち着く。俺のように兄弟がいる人間はなおさらこういう場所を好む。あぁなんて幸せ。
だが、悲しいかな我が人生。こんな平穏数分ももたんのである。
平穏な時間約4分。階段を一段飛ばしでかけ上がる音が聞こえてくる。もうこの音が一日の始まりを感じさせてくれるようになった。誰だって気分よく夢を見ている時にいきなり目覚まし時計に叩き起こされると気分が悪くなると思う。俺にとっての目覚ましではないがうるさい時計はこれだ。
勢い良くドアが開けられる。もしドアに声帯があったらぐっはぁとか言ってそう。
可哀想なドア君をぶん殴った犯人が姿を現す。べつに特別な存在でもないがこいつの姿を見るとなぜか脱力感が沸く。いつも通り、
面倒な我が妹の降臨だ。そして彼女はいつも俺に言ってくる台詞を今日も俺に言うのだ。
「兄ちゃん飯だから早く降りてこい。」
なにか変わった台詞でもない。一般家庭の母が息子に言う台詞トップクラスの台詞だ。お前はいつ俺の母になったんだ。
「はいはいわかりましたよ。すぐ降りますよ。」
イラついたりキレたりするとよく敬語になる。
そろそろいい展開になる所だったラノベを脱力感と共に閉じる。
「あぁ、めんどくさ....。」
部屋を出ると共にそう吐き捨てた。




