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「鈴木さん」をダウンロード
「あーあ、ほんまに毎日おもんないなー。」
そう呟きながら、としのりはふと中学時代の合宿を思い出していた。
彼は中学のとき水泳部だった。合宿のとき、夜中に友達が
「鈴木さんやろーや!」「えー、あれ怖くない?」「いや、大丈夫やから!」
そう言って、友達が電話をかけはじめた。
プルルルル……
「もしもし?」「こんばんは」「いまなにしてんの?」「えー?暇してるww」…………
その光景は、としのりにとってとても刺激的だった。どこのだれかもわからないしらない人と電話で話すなんて……
彼の母親が許すはずもないし、一緒の家の中で生活している状況ではそのようなことはできない。
しかも、当時彼の母親は彼にキッズケータイを持たせていた。もう中学三年生なのに。
そのときの刺激、興奮、そして背徳感がよみがえってきた。
刺激を求めていた彼にとって、そうするのは必然だっただろう。
としのりはプレイストアで「鈴木さん」をダウンロードした。
この先の未来に何が起こるかも知らずに……