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としのりの「一人暮らし」
「あーあ、毎日ひまやなー。」
9月の終わり頃、大阪に住むとしのりは自分の部屋のベッドに寝転びながら、ふと呟いた。
実は先日、親に部屋を移動させられたのだ。前の部屋は家族四人で住んでいる二階建ての2階が彼の部屋だった。しかし、母親が
「いい年なんだから、一人暮らししなさい。」
急に部屋を替えなさいと言って、農機具や米などが置いてある納屋の二階を家族総出で掃除した。
しかし、その部屋は電気は通っているが、水道もガスもない。そのため、食事やトイレは家にかえってする必要がある。
そして、もともと彼の部屋にあった机やベッドなどの家具を持ち込んだのだった。
つまり彼は、家族から離れて寝ることになったのだ。
こうして、としのりの一人暮らしとは名ばかりの奇妙な生活が始まった。
なぜ急に母親がそのようなことを言い出したのかよくわからない。
母親は彼の部屋だった場所を自分の部屋にかえた。