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研磨の邪法

 石臼を回すのに似た音、砥石と刀が磨れる音だ、低く重い音が断続的に続く。だがその音は一般的に思われているよりもずっと小さい。

 散々悩み抜いた末、男は(むね)金剛(こんごう)から当てていた。

 研磨に時間がかかるのは考えるからだ。観察して悩み抜く、その上でプランを決めて実行に移す。途中で迷わないようにしなければならない。迷いは仕事を失敗に導いた。

 一度始めてしまえばどの砥石から当てようと、最後に望む姿は変わらない。それであれば、なるべく負担の掛らぬ様、荒い砥石で一気に進めてしまった方が仕事が早い。きちんとした技術を持つ男だから出来る仕業であった。

 一般に、研師(とぎし)は如何に砥石に刀を食いつかせるかに苦心する。強く当てては砥石の表面が崩れ、鉄の弱いところを、より多く(えぐ)ってしまう。かといって、軽過ぎれば今度はひっかき傷だけしかつかず、いつまでたっても仕事が進まない。

 俗に初心者を三減らしと呼んだ。砥石を減らし、刀を減らし、腹を減らす。無駄な力が入っている証拠であった。

 ある程度刀に砥石を食いつかせられる様になると、今度は砥石に当てている部分が白く被らない様に研ぐ事を意識するようになる。白くなると言う事は、砥汁が刀と砥石の間に入り込み、研磨面を正反射から乱反射に変えている状況を示していた。入り込んだ砥汁は、微細な砥石目の角を丸くする。こうなると、やはり鉄の弱さがもろに出る。地砥の段階に至る頃には、荒い()()ついた地鉄(じがね)が研ぎ出され、細かい地鉄が目立たなくなってしまう。それでは如何に健全な刀であろうと廃れた刀にしか見えない。

 その上で男は今、これまでとは逆に、可能な限り砥石に食わせない事を意識していた。

 ムラの中でも研ぎ落せる、取って姿が良くなる個所のみを狙って押していく。その為には良く利く砥石でも利かせてはいけない。余計な部分だけに当て、最小限の研磨力で、最大限の矯正を男は狙って当てていた。結果としては、砥石がほとんど減らない、砥石の面を直す手間が極端に減るのだ。

 都合二時間ほどで棟は終えた。

 姿を確認する際に、元から先まで一定の光が走る。

 この瞬間が男は好きだった。

 弛んでいた刀の姿が凛と締まる、一つ頷くと、茶を一杯淹れた。

 俗に古刀は棟鎬を丸く研ぐと言う。それは違うと男は思っていた。反りが強ければ、自然と棟鎬はふっくら丸みを帯びて見える。

 丸く研ぐとは角を減らすと言う事でもあった、角を減らせば当然刀は細くなって行く。それでよくなる筈がない。良い研ぎと良い手入れがあれば、刀の寿命は千年を超える。男の持論であった。

 次は鎬地(しのぎじ)である。(なかご)からの角度を狂わさず、かつ先に行って緩やかに角度を和らげなければならない。

 鎺元(はばきもと)から半分程までは順調に進んだ。しかし、中程を過ぎた時に男は刀の捻じれが変わってきている事に気が付いた。

 鉄が動いているのだ。

(……成程、古刀を荒い砥石に当てるなとは、こういう事態もある事を示しているのか)

 これは、新刀期以降の若い刀では起こらない。製鉄技術の発展により、均質な鉄が大量にもたらされるようになったためであった。結果的にそれまでの製法であった「あらゆる鉄を刀にする」方法は失われてきた。逆説的になるが、製鉄技術が未熟ゆえに、それを加工する技術が神技の域に達してのだろう。

 古刀とは、性質が違う鉄を無理やりに刀の姿に纏めた物だ。それは図らずも、男が以前から提唱していた説が実証された形となった。

 男の背筋を冷や汗が伝った。それは、それぞれの部分がそれぞれ勝手な狂い方を見せると言う事に他ならない。

 後戻りはとうに出来ない。当てた瞬間から既に取り返しはつかなくなっている。一度手を休めて裸電球に刀を翳した。銃を覗く様に、鎺元から、あるいは切っ先から通して刀を観察する。

 そこには当て始める前よりも、確実に狂いを生じた姿があった。

 血の気が引くのを男は感じていた。

(どうする、このまま進めるか、それとも……)

 激しい葛藤が生じていた。どうする。どうするのが最善か。行くべきか止めるべきか。信じるか信じないか。

 半端な結論ではあるが、今は砥石に当てるべき時ではない。

 男は桶に刀を立て掛けると「散歩してくる」と弟子に言い残し、思考を纏めるべくふらりと近所に足を彷徨わせた。



  ※※※



(何故狂いが大きくなったかの説明は付く)

 刀とは、鉄の半固体(結晶化していない固体のこと)を鍛錬によって加熱圧縮・オーステナイト化し、焼き入れによって硬化・マルテンサイトの混在化させたものである。

 それは組成による質量差、鍛錬による密度差、過熱急冷による変形などを経て、刀の内部にははちきれんばかりの力が常に掛っているということであった。

 それが鎬地を研ぎ澄ましたことで偏ってしまったのだろう。

 男は鍛冶師から以前に聞いた話を思い出していた。

 刀の鎬地に、()(刀身彫刻の一種、一般には血溝などとも呼ばれる)を掻く時は、両面を少しずつやらなければ刀が捻じれてしまうという。

 刀身に溝を掘る訳だから、それは応力の変化を当然伴った。

(であれば、だ。それは研ぎに関しても同じ事が言えるだろう)

 古研ぎの、ただ研ぎ継ぎ、部分研ぎを繰り返してきた刀だ。しかも六百年に亘る使用を経ている。如何に腰の伸びた(使うと反りが深くなる事がある)刀が時間を置けば元の鞘に収まるとはいえ、毎年使い続ければその負担は計り知れない。状態を見るに、用いて来たのが上手のみと到底思えないのも、それに拍車をかけた。

(己を信じる、いや、この場合は刀を信じるべきか)

 名刀である。

 それは間違いないのだ、そして名刀は掟の通りに研げる。掟とは構造力学であり、美学であった。ただの精神論ではない、理論に裏付けされた工作の基礎である。


「――よし」


 腹は決まった。

 男は踵を返すと仕事場に戻るべく足を速めた。



  ※※※



 思い付けば後は試すだけだ。

 細工場に戻ると、早速男は反対側の鎬地を砥石に当てた。掟に従い、角度を揃え、鎬の高さを合わせて行く。するとどうだろう、先程まで、あれほど先に進める事が困難であると思わせていた狂いが、まるで機嫌を直したかのように穏やかになっていくではないか。

 自然口角がにやりと吊りあげられる。

(成程、この歳になってなお、学ばせられる事が大いにある)

 顔では平然と、内心では盛大に額の汗を流しながら男は首を鳴らした。

 すぐ隣では弟子が自分達の仕事をこなしている。此処で格好の悪い所を見せる訳にはいかなかった。

 意地を張らねば男は名乗れないのだ。



  ※※※



 その後は問題なく仕事を進める事が出来た。この方法でやれば確かに無駄な苦労を背負いこまずに済む。思い返してみれば。新刀以降でも僅かに狂いが生じる事はあった。その場合はこの方法を用いる事で解決できるだろう。


「先生」


 呼びかけに顔を上げる、困り顔の弟子が申し訳なさそうに刀を持っていた。


「どうした?」

「切っ先が上手く行かなくて」

「どれ、かしてみろ」


 構えた膝の上に棟を載せる。なるほど、硬い刃文の部分を狙っているが、砥石の当たりが大きくて狙い切れずに地も研ぎ落してしまっている。まだ当て始めたばかりであるが、これでは良くなる訳がなかった。

 一度当てれば、刃文の部分で一減るのに対し、地は二も三も落ちてしまう。


「これはな、当て方が強すぎる」

「はぃ、ううん……はい」


 弟子もそれは解っているのだろう。ただ、その力加減がどの程度かまでは読み取れないだけだ。


「見て、良く聞いてろ」

「はい」


 左手で水を打った砥石に切っ先を当てる。置いて最初に当たる部分が、肉置きで一番高い場所だ。


「いいか? 砥石で刀をくすぐる様に当てるんだ」

「どんなもんですかそれ」

「うむ、やって試してみろ」


 真顔で聞き返した弟子に、方頬だけで笑って見せた。


「今当てている所が匂い口だ」


 き、き、と、甲高い摩擦音が手元から鳴り始める。肉置きが悪い証拠だった。そして、確実に高いところに当たっている証拠でもあった。


「このくらいの音だ、覚えとけ」

「先生、その音俺苦手です」

「そうか?」


 黒板をチョークでひっかく様なとも表現される音だ。とはいっても、男は特にそれが気になると言う事は無かった。むしろ、若いころなどそれが女の喘ぎ声の様だと感じた事すらあった。

 刀に宿るのは女神(にょしん)であると言う。であれば、喜ばせる事が出来るのは研師だけであろう。

 じきに黒い金剛砥の上を、更に黒い、鉄のみが研ぎ下ろされた砥汁が流れ出す。鼻を突く様な鉄の匂いが立ち上った。しかしこの匂いも男は嫌いではなかった。むしろ、好んでいると言っても良い。それは確実に刀の良くなる匂いであった。

 

「こんなもんか。ほれ」

「うお、直ってる……って言うか終わってる」


 ものの五分で男は切っ先の肉置きを整えて見せた。弟子は直っていると言ったが、それはあくまでも見た目だけである。落とした鉄は戻る事が無い。

 ただ、まだ許容範囲であっただけであった。


「後はその肉置きのまま仕上げまで細かくしてけ。気をつけろよ、その刀だってベンツのSクラスじゃきかない値段するんだからな」


 弟子に釘を刺すと、男は再び己の仕事に没頭した。



  ※※※



 協会のコンクールも時期が過ぎ、やっと太刀が鎺と鞘の製作から戻って来た。それぞれ流石に当代の名人作である。何処に出しても恥ずかしくない出来であった。

 季節は初夏の気配を漂わせている。梅雨に入るのも時間の問題であろう。

 一悶着あったのは外装の修復に出した折の事だ。

 馴染みの柄巻(つかま)き師から電話が入った。


「――え? 柄巻きの下から金銅の長覆輪が出て来た?」

『そうなんだよ、どうするかね?』

「んんん、勝手にどうこうって訳にもいかないな。良し、ちょっと連絡してみよう。出来る限り早く回答するからそれまでストップしといて」

『解った、よろしく』


 受話器を下ろすと男は短く唸り声を上げた。


「どうしました?」

金銅装長覆輪太刀拵こんどうそうながふくりんたちこしらえを後世に糸巻太刀拵(いとまきたちこしらえ)にしてあったらしい」

「ああ、成程。下手に修復できないんですね」

「そうなんだよ。察しが良いな」

「どっちにしろ時代物でしょうしねえ、どの段階までやるかが問題ですよね」


 これは弟子の言う通りであった。

 現在伝えられている外装は、磨り上げた段階で作られた外装に、更に後世で組み紐を糸巻太刀としてあったそうだ。恐らくは江戸中期頃の仕業であろう。


「柄糸も良く保っていた物ですね」

「いや、おそらく幕末には一度巻き直していると思うが……」


 こうなると、柄巻きをただ直せばいいと言う訳でもない。恐らく、今回の仕事が終わった時点で県の有形文化財指定を受ける。内定の連絡が研師の元には既に入っていた。


「悩みどころだが、まあ、とにかく一度連絡するか」



  ※※※



『あ、じゃあ取っ払っちゃってください。よろしく』

「それで良いですか?」

『はい、お任せします。だって長覆輪拵に糸巻なんておかしいでしょ?』

「まあ……ええ、そうですね」

『もういっそ製作当時の再現で。ではよろしくお願いします』


 電話はそこで切れた。

 恐ろしく軽い。応対してくれたのは神社の神主に当たる人物らしい。恐らく、持ち込んだ青年の父親なのだろう。刀については一応以上の知識がある様子であった、少なくとも単語の解説なく話が進められる程度に。おかげでかつて経験した事のない早さで話が纏まった。


「……まあ、いいか」


 しばし見詰めていた受話器を置き、今度は柄巻き師の番号を押す。二回目の呼び出し音がほとんど鳴るか鳴らないかの段階で相手は出た。どうやら電話を睨みつけていた様子であった。


「ああ、もしもし」

『なあ、これ白銀師(しろがねし)に回して良いか?』

「開口一番にどうした」


 男の頭に疑問が湧いた。

 今回柄巻きを頼んだのは、どちらかと言えば仕事が遅い事で有名な男である。

 しかし、責任感はしっかりしているので人に投げる事は無い。

 それを知っているだけに、相手の提案に面食らうものを感じた。


糸巻(いとまき)は取っ払う事になったから、白銀に回すのは良いんだ」

『そりゃなによりだ、俺もうこの外装を置いときたくないんだよ』


 まるで幽霊でも見たかのような声であった。


「なんだい、いったいどうした?」

『菱紙(柄巻きで柄糸と鮫皮の間に入れる三角形に折りたたんだ紙)によ、どれもこれも呪だの封印だのなんだのって書いてあるんだよォ!』


 男は思わず絶句した。

 菱紙には巻かれた当時の紙が用いられる。それは、柄巻きが当時どの様な土地のどの様な場所で施されたかを特定する手がかりになると同時に、当時の世相を表す貴重な資料であった。よって柄巻き師の御楽になる事もあるのだが、今回のそれは想像を絶したらしい。


『これ……恐らくサラの紙だ。てことは、わざわざこの為だけに書いて詰めたって事にうわああああ」

「とりあえず落ち着こう、それはこっちに送り……いや、弟子取りに行かせるから」


 肌にざわりと粟粒が立った。

 異常である。確かに日本において、紙は特に発達した文化の一部であった。だが、幕末に巻き直されているとすれば、菱紙に用いるのはあくまでも使い古したそれである。書きものの用途に適さない程、真っ黒に書き込まれたそれを用いるのが一般的であった。当時、リサイクルの概念に関しては現代よりも余程発展していたと言える。

 しかもそれが神社の太刀の柄巻きに用いられているのだ。間違いない伝承されてきた事実がある中で、そんな文言が紙に書かれているとは尋常ならざる事態を想像させる。祈祷や祝詞ならまだしも呪の文字とは。言い様のしれない不気味さがそこには存在していた。

 だが。


『俺は今まで妖刀とか馬鹿にしてたけど、これは本当にそうなんじゃないのか?』

「かもな、だが(うち)には関係のない話だ」

『なんでだよ!』


 泡を食う柄巻き師の声に不敵に笑うと、一拍置いて男は答えた。


「研師の看板は室町から“御魂研磨所おんたましいけんまところ”だぜ? へばりついた罪咎悪呪業(ざいこうあくじゅごう)ごとき纏めて研ぎ落してやらあ」



  ※※※



『じゃあ、紐の類はこっちで見繕っちゃっていいの?』

「おう、それでお願いするよ」

『わかった、時代の考慮なんかはある?』

「南北朝期の再現が出来るといいんだが」

『了解、ちょっと当たって見るよ』

「すんませんね、よろしく」


 柄巻き師の所から白銀師の元に弟子を直行させた。届いた旨の連絡ついでに打ち合わせをしてしまう。部品に欠損があれば時間はかかるが、幸い糸巻拵になっていたお陰で当時の金具がそのまま残されていた。これであれば多少の清掃だけで済むとの事であった。三万で良いよ、とは白銀師の談である。浮いた予算を太刀緒の修繕に回してもらう。外装に関しては、これでひと段落と言った塩梅であった。


「さて」


 袖をまくると男は砥石に向きあった。既に工程は内曇(うちぐもり)(下地工程六・七段目、この段階より天然砥石のみ)に入っている。想像以上に良い刃文が焼き込まれていた。匂い口から刃先までよく(にえ)付いて、さながら夜闇に雪山が輝くかの様である。その中でも縦横に(あし)(匂い口から刃先に向けて入る柔らかい部分、覗くと雪深い谷の様に白く輝く)や金筋(きんすじ)(刃の中で地鉄に絡んで付く強い錵の連なり、覗くときらりと光る)がしきりに入り、よく鍛えられた鉄の妙味を見せていた。

 基本、地は黒く、刃は白くと言うが、それは仕上がった段階での話、砥石を当てている段階では、刃はその硬度故に地よりも黒くなるものであった。だが、この太刀は違う。内曇の地砥を当てた直後に、恐ろしい程に肌が冴えていく。地鉄の中に結晶化したオーステナイトが微塵に散らばり、秋の夜空が如き深みを鉄に与えていた。

(これであれば刃切れは目立たない)

 男はほっとすると同時に、胸の底に穴が開く様な残念さを感じていた。

 とんでもない名刀である、名刀である筈だった。男が見て来た中で一番と言っても良い地鉄と刃文である。だというのに、刃切れが入り帽子が飛んでいる。

 無念であった。

 一度頭を振ると、男は雑念を頭から払った。

(それにしても強い鉄だ)

 なかなか砥石が食いつかない。そのくせに、一度食いつけば鮮やかな、深みのある地刃が研ぎ出されるのだ。

 結果として、他の刀よりも仕事の進みが早い。それは名刀の特徴の一つであった。



  ※※※



 ――刃艶(はづや)地艶(じづや)刃取(はど)り、(みが)き。

 仕上げの工程が恐ろしい程に決まって行く。それは快感と言っても良かった。こうしたいと思った通りに仕事が捗るのだ。他の刀をやった際の落胆が恐ろしくなる程だ。

 弟子達が寝静まった頃、男はそっと仕事場に入った。この先は見せられない仕事である。正直に言えば、今でも施すのに気は進まない。

 特注の鏨と、極細の電気溶接機、それから幾つかの薬品。それらをそっと用意すると、男は最後の仕上げに取り掛かった。

(長い夜になりそうだ)

 男は心の中で小さく呟くと、押し型に描き出されている在りし日の切っ先の再現に取り掛かった。



  ※※※



 研師には弟子が二人いた。特に熱心な兄弟子は夜中に仕事をすると、ちゃっかり朝に盗み見ている。例外なく今日も同じであった。内心鼓動を高めながら挨拶を交わす。


「意外でした、てっきり帽子ないと思ってたんですけど、ナルメ(切っ先の仕上げ)たらはっきり出ましたね」

「どうだった?」

「凄い名刀だと思いますよ」


 それきり彼はその話題に触れなかった。

 この弟子は良く刀を見る事で、業界でも有名になっている人間であった。欠点は見逃さないし、疑問は徹底的に追及する。その観察眼をやり過ごした事にほっとすると同時に、してはいけない禁じ手を使ってしまった事に、男の胸はひどく傷んだ。

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