第一話『ザジル』
足元から地下特有の冷気が伝わる。
床石など無く、剥き出しの土が冷気を放っているのだ。周囲の壁は石造りであり、感じる冷えを更に助長させている。
牢獄だった。
なぜ、牢に入れられているのか。全く心当たりがない。ぼんやりとした記憶を探ると、少しずつ自分の出自が思い出された。
生まれは貧しい農村だった、はずだ。いまいちはっきりとしない。両親と農作業に勤しんでいた気がする。
貧しい暮らしに食料に乏しい年もあったが、今生きている事からも飢饉といったものは克服出来たのだろう。
暖かくなれば種を蒔き、寒くなる前に収穫をする。
村民がまともな教育を受けられるはずも無く、日々の暮らしに精一杯であった。どれ程の年月を重ねていたか判別も付かないが、足手纏いにならない位には、成長出来た。
その様な、何もない日々を過ごしていた筈が一転、先程の瞬間に記憶が飛び、この牢獄にいた。
(なんだ? この記憶は。私は知らないぞ)
俺の他には誰も居ないのだろうか。
壁の向こうの様子は解らないが、鉄檻から見える向かいの牢にも人の気配は無い。自分の息遣いだけが、やけに大きく聞こえる。
(確か王国軍と交戦し、この作戦を終わりにしようとした筈だが……。何が起きた?)
事態が飲み込めないまま、どれ程の時が過ぎたろうか。突然、断続的な金属音が聞こえてきた。
(これは……、金属鎧の音だな)
牢獄には殆ど灯りが無かった。音と共にぼんやりとした明かりがちらついたので、自分が真っ暗闇の中にいた事に気がついた。
壁の様子などが見えていたのは、目が慣れていたのだろう。
光源が牢屋の前で止まったことで、聞こえていた金属音は、鎧が発していた事に気が付く。
監守だろうか。兜は着けておらず、少々薄汚れた顔がこちらを向いている。
(王国騎士団か……。中々に鍛えている。隊長級か)
目を見開き観察していると、金属鎧の男は若干怪訝な表情を浮かべている。何かあったのだろうか。
「時間だ、牢から出す。抵抗しようなどと思うな。発言も禁ずる。解ったらこれを付けろ、鉄格子から手を出せ」
鎧の男は事務的に短文で命じた。
状況を飲み込めていない為、色々と聞きたい事はあったが、発言を禁止されているのに、すぐに喋っては心証が悪い。
俺は黙って隙間から腕を出す。
付けられたのは木製の手錠であるが、手首の当たる内側にぐるりと山形にした鉄鋲が打ち込まれている。力尽くで外そうと力を込めれば、肉に食い込むだろう。
(この程度の拘束、容易く引き千切れるはずだが。……駄目だ。身体が言う事をきかない)
「牢から出ろ」
何処かから取り出した鍵で、鉄格子の錠が外された。
牢から出ると、左右に長い廊下が続いていた。もちろん土である。
歩いてどれ程かかるか分からないが、遠くに木製の扉が見える。反対側は何も無い壁であることから、出入りはあの扉からしか出来ないのだろう。
長い一本道の左右に牢が幾つも配置されていた。
監守は、扉の見えた方向を指差した。
「あちらに歩け」
俺が黙って歩き出すと、後ろから監守がついてきた。
(これはどういう状況なのだ。こいつは確かに私が利用した男。しかし身体を自由に動かせない。まるで乗っ取られたかのようだ……)
そのまま黙って歩いていると、扉まで到着する。かなり長く歩いた気がするが、俺は勿論、監守も一言も話さなかった。
(扉の向こうに、何人かの気配がする)
「開けろっ!」
監守が大きな声を上げた。
手錠を嵌めたまま手を伸ばそうとすると、扉が動きだした。俺への命令では無かったようだ。
やけに重そうな音がして、扉が開く。木製だと思っていたが、反対側は分厚い鉄が貼り付けられていたらしい。
(この扉の造り……。魔物用の牢獄と同じ造りだ。私の正体が漏れているのか?)
扉の向こう側は小部屋になっていて、監守と同じ鎧を着けた者が無理矢理押し込まれたかの様に立っている。
ただ監守と違い皆顔まで隠れた兜をしていた。
表情は窺えないが、妙な圧を感じる。一様に言葉を発さず、こちらを凝視しているのが分かる。
(全員が手練れだ。王国騎士団でも上位だろう)
牢から連れ出した監守に背中を小突かれ前に出ると、何処にその余裕があったのか、密度の高い人壁が左右に分かれた。
「進め」
相変わらず感情の無い声で、短く命令がくる。
小部屋には先程くぐったものより大きな扉があり、人壁の分かれた先はそちらに向かっている。
鉄仮面越しの表情は解らないが、皆、息を潜め何か緊張をしている様に感じる。
何に怯えているのか分からないが、聞くのも憚られた。先程の発言禁止の命令が解除されたとも思えない。
(この威圧感。矢張り私の存在に気が付いているのか……?)
扉に近づくと、前に立っていた鎧兵が扉を開けた。扉の奥に続いているのは薄暗い階段だ。
ここからは石造りになっている。
また俺を先頭にして黙々と歩く。
後ろからは最初の監守しか付いて来ていない。
今更ながら監守が牢の前で言っていた事を考える。
時間だ、抵抗するな。これらの台詞から、俺が抵抗するような事が起こるのだろう。
記憶が曖昧である為、どの様な罪で牢屋入りしたのか分からないが、相当な罪であろう事は想像が出来る。
農民なんて身分からしたら、罪を犯せば普通は即断罪され、殺される。牢に入ったという事は、簡単に罰し得ない罪なのだろう。
何処か他人事になってしまうのは記憶が無く実感が湧かないからであろうか。
そもそも牢獄など、俺の村には勿論無い。
憶えていないが、ここは大きな街なのだろう。
来たる時間とは、罰の時間なのか。
そこまで考えても、恐怖は感じなかった。記憶がないことが当事者意識を麻痺させているのか、生命を諦めるような事が起こったのか。
確実なのは、一歩一歩進む俺の足取りはしっかりとしたままだった事だ。
(この男の姿であれだけ暴れたのだ。牢から出されたという事は、処刑台に向かっているに違いない)
(だが村を襲い、王国騎士団と戦い始めたところから記憶がない。これだけ恐れられているのだから、目的は達したと思いたいが……)
階段を登り切ると先程の小部屋と同じ位の大きさの部屋があった。壁が木製である事から、地上階なのかもしれない。
この部屋にも、兵士が詰められている。まるで肉壁にでもなるかの様に微動だにしない。
ただ、部屋に入った時から、地鳴りの様な響きを感じる。俺の村に住む人の何倍にもなるだろう、数え切れない程の人々が集まっている気配がする。
今度は、部屋にいた兵士が全員で俺に付いて部屋を出る。
何処に連れて行かれるかという疑問は、出たと同時に吹き飛んだ。
先程の地鳴りの正体は、予想通り群衆だった。漏れ無く全ての人々が俺に怒声、罵声を向けている。
群衆が不自然に分かれた先には、所謂処刑台が設置されていた。
間違いなく、俺はこれからあそこに連れて行かれるのだろう。
確実な死が待っているに違いない。抵抗するなとも頷ける。
向けられる敵意は、単なる村人へのものとは思えない。
失っている記憶では判断がつかないが、相当の罪なのだろう。此処までの見世物をしなければ、この群衆を納得させる事が出来ないということだ。
相変わらず言葉を発しないが、後ろに続く兵士から圧力を感じる。
俺は一歩、また一歩と処刑台に向かい歩き出した。
(この敵意ならば、主の命令には報えたのだろう。しかし身体の自由が効かないのが解せない。何が起こったのだ)
死が怖く無いのだろうかと問われれば、判らない。
身体に震えは無い為、表面的には何も感じていない様に見えるだろう。
では、心は如何なのか。諦めにも似た心境なのかもしれないが、まるで朝畑に向かう時の様な心持ち、生活慣習の一つの様な感覚だ。
処刑台に着くと、命ぜられていたかの如く、その階段を登り始める。木製の階段は一歩毎にぎしぎしとした音を響かせた。
いつの間にか、群衆の声が止んでいる。これから起こる事を待ち望みつつ、直視はしたくない、といった両立しがたい感情が場を支配している。
処刑台の上には、黒々とした邪悪な染みが付いている。どれだけの人間が此処で人生を終えたのだろう。
次が自分かと思うと感慨が湧かないでもないが、特に思い残す事もない。家族が生きている訳でも無いし、村も全滅した。
……そうだ、村は壊滅したのだ。俺を除き、皆死んだ。
何故これまで思い出せなかったのだろう。強烈な衝撃に麻痺していたのか。
ただ、思い出したところで、やはり感情に大きな変化はない。
「罪状を述べる」
初めに牢に迎えに来た兵士が声を上げた。
群衆が黙って次の言葉を待っている。
「罪人の名はザジル。トルク村の出身にして、その村人全員を殺害した。更に近隣十村を滅ぼし、王国騎士団を二名殺害している」
(ふむ。矢張り御命令頂いた事柄は、概ね達成している。だが、騎士団二名か……。少ない。ご叱正を頂くかも知れん)
兵士の言葉を聞きながら、初めて動揺した。
村が滅んだのは思い出した通りだが、それを俺がやっただと。それも近隣の村までも。
村には両親もいたし、まだ幼い妹がいた。たとえ狂ったとしても、手に掛ける筈がない。
「な……、誰の事だ! それはっ!」
久し振りの声は出すのに苦労したが、耳に聞こえる自分の声はまるで別人のようだ。
「黙っていろっ! 貴様の他に誰がいる!」
兵士の鋭い声が飛ぶ。
今までは他人事の如く聞き流していたが、もうそれは出来ない。
「違うっ。確かに俺はザジルだが、身に覚えがないっ!」
「今更に何を言う。王国軍に捕縛された時の事を忘れたとは言わせんぞ。命乞いなど、もう遅いわっ」
「違うんだ。処刑となる事は何故だか納得出来るんだ。だが、その罪が俺の村を滅ぼした事だなんて……」
(何を急に動揺しているのだ? 弱きものがどうなろうが、構う事もないだろう)
突然、記憶がすり替わる様に、村での虐殺が浮かぶ。
記憶の中の俺は、確かに長剣を持ち逃げ惑う村人達を背後から斬りつけていた。
「如何なっているんだ……」
急に黙り込んだ俺を見て、兵士は諦めたと思ったのだろう。
「ふん、見苦しい。……罪状を続ける。このザジルは愚かにも王国騎士団に反抗し、その身柄を拘束された。またその際、事情を聞こうとする騎士を、突然斬りつける蛮行は許しがたい。絞首、斬殺では温いと、王も仰せだ」
そこで兵士は一息つく。
「生きたまま、頭を万力で潰す。死ぬまでの猶予、己の罪を悔いるがよい!」
群衆から喝采が上がる。よく見ると前列は見知った顔があった。近くの村の村長だったか。
これは周辺村落を安心させ、王国の意向を上げる見世物なのだ。
処刑台に巨大な万力が用意される。
混乱していても運命は決まっている。だんだんと諦念が感情を支配してきた。
寝かせられて、万力に頭を挟まれる。
ぼうっと群衆を見遣ると、恐怖と期待が入り混じった視線を向けられていた。
「始めろ」
兵士の声と共に上から圧力が掛かってきた。まだ痛みは無いが、もう動きようがない。
熟した果実が弾ける前に上げる様な、ぎしりとした音が頭蓋骨の中に響き渡る。
そんな中で、俺がおもうのは、やはりこんらんであった。ナゼ、コノヨウナコトニ。ムラヲナゼオレガ……。
何かが拉げた音が響いた。支えを失い、万力が勢いよく閉まる。
身体が転がる様に、処刑台に横たわった。
その瞬間、私は身体の自由を取り戻した。
群衆の歓声と恐怖が身体に響いた。
直ぐに動き出す訳にはいかない。死体の振りを続けよう。ここで騒ぎを起こせば、主の指示を完遂出来ない。
乱暴に処刑台から降ろされ、足に縄が撒かれると台車に乗せられる。その間も一切身体に力は入れない。
そのまま夕暮れまで、市中を曳き回された。
群衆が満足した頃、私は簀巻きにされ街の端にある橋に持っていかれた。
台車が傾き、浮遊感が全身を包む。橋から投げ捨てられたのだろう。
暫時、水面に衝突した。そのまま、文字通り流れに身を任せる。
どれ程経ったであろうか。川岸近くの石に引っ掛ったところで、内側から簀巻きを引き千切る。
よくもこんなもので私を拘束しようとしたものだ。
近くに人の気配は無い。時間的に夜中だろうから、人がいる様な時間ではない。
川から上がると、念波で使い魔を呼び寄せる。暫くして、人の大きさもある巨大烏が舞い降りてきた。
『報告に向かう。城へ』
烏は私の身体を掴み、空へと舞い上がった。
漆黒の闇に浮かぶのは、その赤く光る瞳のみ。それも移動を始めると周囲に同化し、発見される事はない。
「以上が、顛末でございます」
城に戻ると、直ぐに主への報告許可が出た。
私としても早く相談したい案件だったので、本物の頭部である白銀の兜を取ると、主の待つ王の間に向かった。
話を聞き終わると、主は私に面を上げさせた。伺うと主は玉座に深く座ったまま、考えを纏める時の癖である自らの白髭を撫でている。
「ふむ、では捕縛から処刑までは仮初めの頭部に身体を支配されていたというのか」
「……はい、恥ずかしながら。城に戻り、直ぐに従来の頭部に戻しておりますが、村を襲った際は疑心暗鬼を上長すべく手頃な村人の頭部を使用しておりました。感覚からして、その者の意識かと思われます」
私は羞恥に悶えそうになりながら報告を続ける。主に仕える騎士として、たかが村人に意識を取られたとは言いたくはない。
デュラハン族として頭部と身体に物理的な結合はない。
今回の様に頭部を城に残し、身体のみで行動する事も珍しくはなかった。記号的な意味合いで現地調達した頭を使う事も良くある。
「その村人というのは、特殊な能力を持っていたのか」
「いえ、その様子は無かったかと。殺害の際も首を一刀にしておりますが、手応えに違和感はございませんでした」
「これまでにこの様な事は」
「ありません。……急ぎご報告申し上げたのは、それもあってでございます」
「……とは」
「実は、村人の意識……と言いますか、記憶が身体に残っております。感情の様なものは私の記憶でしか残りませんでしたが、村での生活が細部まで思い起こせるのです」
私の発言に、主の側に控える側使達が身構えるのが分かる。
「よい」
主は側使の構えを解かせる。
「正直に白状するその気概。正にお前の性質よ。懸念は理解出来る。他人の意識が混ざる事で、お前がこれまでのデミナスでは無くなっている可能性があると考えているのだろう」
「はい。主に害を及ぼしてからでは遅過ぎます。即刻、私を処分して頂ければと」
「その考え方こそ、デミナスだという証しかと思うがな」
主は苦笑しながら、私を見遣る。
その視線に万籟の幸福感と、仮に仇なす事になったらという恐怖を強く感じた。
「この城にデュラハン族はデミナスのみ。今回の事がどれ程の事態か、判断は付かん」
主は種族に拘らず配下を登用する。私以外にも多くの人非ざる者達が家臣に付いている。
だが我が種族、デュラハン族は私のみ。そもそも種族としての絶対数が少ない。
「然しながらだ。デミナスの懸念も解る。もちろん、わしはデミナスのデュラハンとしての武力だけを重視しているのではない。デミナスで有るからこそ騎士に任命しているのだ」
主の言葉に更なる幸福感を覚える。記憶が混ざることで、この忠誠心が嘘になる事には耐えられない。
「であればこそ、ご処分を……」
「違う」
遮る様に手を挙げ、主が続ける。
「違うのだ、デミナス。わしは、此度の報告からお前の忠誠心は揺るぎ無いものであった、と確信している。お前は今回の命令を、ほぼ達成していた。少々王国側の被害は少なかったが、処刑されるまでも計画通りだろう」
私が受けた命は、王国周辺の食糧生産力を削ぐ事と混乱を与える事。更に主が介入している事を隠蔽する事だ。
村人として行動し、最後までザジルとして処刑された私は、主の満足する動きだった様だ。
「記憶の事を報告しなければ、何の問題もないのだ。それを報告してきている事が、既に忠誠の表れなのだよ」
「勿体なき、お言葉にございます」
「しかしだ」
主の言葉に、私は居住まいを正す。
「情け無い話であるなのだが、今回の事が、今後どのようにデミナスへ影響及ぼすのかは判別が付かん。そこでだ、少々長期の作戦命令を出そうと思う」
「有難く拝命致します」
間髪を入れずに、答える。
「そう構え無くてよい。お前の頭部だけでの戦闘能力は皆無であったな」
「はい。私の戦闘は膂力での征圧ゆえ、頭は飾りにございます。そして主もご存知の通り……」
謙遜ではなく、この身体こそが私である。だからこそ、仮初めの頭部の記憶が混ざるのが恐怖なのだ。
「よい、では今後行動の際は頭部を城に残してゆけ。そして、これこそがこの指令の本質なのだが、わしはお前の変化は有用なものと考えている。記憶が残るというのは、情報が盗めるということだと」
「しかし、意識が……」
「死ななければ、頭部が破壊されなければ身体の自由が戻らないというのが厄介かもしれん。しかし、拷問では決して手に入れられない情報が、真偽を確かめる必要も無く手に入るのだ。これ程有益な事もあるまい」
主が自分を評価していると考えただけで、私は何物にも代えがたい幸福を覚える。
「更にだ。人間は顔だけで人物を認識している訳ではないのだ。その所作、過去の積み重ね、全ての情報を基に判断している。重要な情報源には少々離れた所から近づかなくてはいかん。その時、偽りののない記憶が役に立つだろう」
「流石に、ございます」
「了解と受け取るぞ。ではデミナス、これよりお前を王国に潜入させる。最初の潜入先は任せるが、これは試験も兼ねている。王国中枢から離れた所で己の力を試すのが良いだろう」
「は、御心のままに」
主の間から退出し、私は命令に従うべく行動を開始した。
もとより、主に害を成す可能性がある事から自らの処分を申し入れたのだ。再びお役に立てるかもしれないとあれば、喜びしか持ち得ない。
死ぬ事に対しての恐怖は無かったが、主のお役に立て無くなる事には、底知れぬ恐怖を感じていた。
それがまだ出来る事があるのであれば、全力を持ってお仕えしよう。
自室に戻り、限りなくデミナスという存在が消えるよう念入りに身体を修理する。
初めに潜入を狙うのは、王都に出入りする傭兵だ。練習も兼ね、余り後腐れの無い者が良いだろうと考える。傭兵であれば、王国の戦争計画にも触れる事が出来るかもしれない。
私の戦闘能力であれば、かなり名の通った傭兵でも殺害出来るだろうが、極力隠密裏に事を進めなければならない。中堅の傭兵が良いだろう。
準備を整え、侍女を呼ぶ。
頭部を外し、主にお預かり頂くよう申し付けた。
最悪の事態として、記憶に意識が支配され主に害を成そうとしても、頭部さえ主の下にあれば、私の処分は出来る筈だ。
毎週日曜の深夜、投稿予定です。